第2話 悪は、正義は、
次の日、クラスの男子の中では昨日発売された週刊マンガの話題で持ちきりになっていた。
ジャングルジムのてっぺんに腰かけながら芳雄が言う。
「なあ、昨日のセギーマン見たか?」
「あれ凄かったよなあ。最終的にセギーマンったらミラクルジャスティス剣で檻切っちゃうんだもん。切られた檻の柵がバーンって飛ぶところかっこよかったよなあ」
和正はジャングルジムの麓でそのシーンを再現しながら言う。
「なあ、虎太郎。お前も見ただろ?昨日のセギーマン」
てっぺんからの声に真ん中にいた虎太郎が返した。
「ねえ、あのさ。正義って何だろうね」
芳雄と和正はしばらくしてドッと笑った。
「お前何言ってんだよ!」
「セギーマンが正義で、ワールゾーの奴らが悪に決まってんだろう!」
虎太郎は少し大きな声でさらにきいた。
「なんでそんなことが言えるのさ。誰もどっちが正義でどっちが悪なんて言ってないじゃないか」
芳雄が体を曲げ虎太郎を見下ろしながら答えた。
「んなもん、変身した後セギーマンが「正義のヒーロー、セギーマン!」って言ってるし、ワールゾー映す時ナレーションで「一方その頃、悪の秘密結社ワールゾーでは」って言ってるんだから、セギーマンが正義でワールゾーが悪に決まってんだろ?」
和正もうんうんと頷いた。
「本当にそうかなあ?僕にはどっちも正義にしか見えないんだけど」
その時、中休み終了の予鈴が鳴った。
「まあ、とりあえず教室戻るぞ」
芳雄がスルスル降りながら二人に呼びかける。
校舎に戻りながらも虎太郎はどこかまだ納得していなかった。
その後の授業も虎太郎は上の空だった。
自分たちのことを嫌った神が支配する世界にはもういられない。
ワールゾーの人たちはただ安全な場所で元のような生活がしたかっただけ。
これの何が悪いのか。
確かにセギーマンの言う通り最初から相談すればよかったのかもしれない。
だが果たして我々は異世界の民族を受け入られるのだろうか。
もしかしたらワールゾーはこの世界の誰かに相談したのかもしれない。
だがもし断られてしまったら?他に住める世界がなかったのだとしたら?
虎太郎はそこにずっと引っかかっていた。
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