第5話 正義の少女と復讐者
『これまでより強力なダークナーが出現した。このダークナーが消滅後に残す宝石を確保しろ。』
公司と共に幸野に勉強を教えた帰り、突然クロンからそう指示を受ける。
「唐突すぎるだろ。なんのために必要なんだよ」
『当然、俺様の完全復活のためだ。力を貸してやってるんだから少しは働け』
ざっくりとしたことしか教えてくれないクロンだが、世話になっているのは事実なので従わないわけにもいかない。
「とりあえず俺はどうすればいいんだ?」
『今から言う場所に向かえ』
俺はクロンから件のダークナーの居場所を聞き、現地に向かった。
「あれが…」
赤いダークナー。気配からいつものダークナーとの格の違いが分かる。
「というかピンチだろあれ」
明らかに精霊姫たちの攻撃は通じていない。ダークナーの攻撃を受けられているのは風峯だけだ。
「早いとこ助けに――」
『やめておけ』
「なんでだよ。それに自分で倒したほうが楽に回収できるだろ」
俺は少し怒りながら言う。
『ここで貴様が倒してもすぐにそれ以上の敵にやられるだけだ。小娘たちにはお前と違って成長の可能性がある。とくにあの桃髪の小娘、あいつはすぐに成長できるはずだ』
「信じていいんだな?」
「当然だ」
「なら逆に、成長した幸野を相手に武器も持たず宝石を奪えるのか?」
『不意を突けばさほど苦労はしないだろう。まあ念のためこれをくれてやる』
クロンがそう言うと、どこからか一本の剣が現れる。風峯の持つ刀とは違い、西洋風の剣だ。
『
軽く振ってみると、妙に手になじんだ。
「あと、正体がバレるのも避けたいんだが」
『注文の多いやつだな、これでいいだろ。』
剣と同じように仮面が出てきた。付けてみると、まったく視界はふさがらない。
「へえ、こりゃいい―――!」
突如、強い気配が現れたのを感じた。
そして、気配の方向にいたのは幸野愛華だ。
「こんなところで、負けてられない!愛の精霊、力を貸して!」
「
見事な右ストレート。ダークナーを弾き飛ばした。
俺は幸野愛華という人間の強さに感動した。
『おい、とっととあれを回収しろ!』
そうだ、本来の目的はそっちだ。
「精霊よ、俺に力を貸せ」
足に力を込める。
「それは俺がもらう」
駆け抜けざまに幸野の握る宝石を奪い取る。
「何者だ」
風峯が素早く背後に立ち、俺に問う。
「俺はただの復讐者だよ。そこを退いてもらおうか」
「それが何なのか知らないが、奪われてはいそうですかとはいかない。返してもらおう」
「断る」
「愛の鉄拳!」
ものすごい速度で飛んでくる拳に飛び退く。
「来い、風鳴」
「来い、時の半剣」
「風の精霊よ、私に力を。士道流、【瞬輪】」
風をまとって放たれる剣技を、時の半剣で防ぐ。
そしてそのまま力を込めて剣を振り抜く。
「くっ…」
やはり時の半剣は強力だ。このまま逃げて…
「ギシャアア」
「もう一体!?」
「っ…やれるか?」
「……っ……」
精霊姫たちは再び現れた赤いダークナーに焦りを見せる。
だが、
「邪魔だ」
強く踏み込み、一瞬でダークナーと距離を詰め、そのまま時の半剣を振るう。
「ギギィ」
消滅するとまた宝石を残した。
「じゃあな」
宝石を拾い、未だに戸惑ったようすの精霊姫たちを置いて立ち去る。
「二つ手に入ったが、どうするんだ?」
『もう一つに関しては考えておこう。とりあえず一つ出してみろ』
俺は言われるままに宝石を掲げる。
すると、宝石が輝きを放つ。
「何が……」
宝石は輝きを徐々に失い、そのまま崩れ落ちていく。
『よし。これで一時的な実体化ができるようになった』
「実体化?」
虚空から一人の少年が現れる。灰色の髪と目を持ち、美少年と言える整った顔立ちをしている。
「こういうことだ」
少年はにやりと笑って俺を見上げる。
「クロン…なのか…?」
「ああ。そんなことより何か食わせろ。久しぶりに食事がしたい」
仕方がないので家に連れていく。幸い、悠はまだ帰っていないようだった。
「ああ、俺様は甘いものが苦手だ。それ以外で頼むぞ」
とにかく偉そうだ。見た目に惑わされてはいけない。
「はぁ。まあいい、待ってろ」
ご飯は余っていたのでそれを使ってオムライスを作ってやった。
「美味いな。やるじゃないか」
「いや、母さんはもっと上手かった。俺はまだまだだ」
「お前の母親の話は聞いていない。せっかく俺様が褒めてやったんだ、素直に喜べ」
相変わらず偉そうだが、褒めてくれたらしい。
「そろそろ幹部級の敵が現れるかもしれないな」
突然クロンはそう言った。
「強化されたダークナーが二体連続で倒されたからか」
「ああ、敵も焦っているだろうな。そうなればチャンスだ。黒の女王の居場所を聞き出すことができれば復讐達成に大きく近づくだろう」
幹部…。どれほどの力をもっているのだろう。
「今の俺で勝てるのか?」
「無理だな」
「は?どういうことだ。俺は成長できないんだろ?幹部に勝てなきゃシェリーアなんて…。それに、お前の力があれば余裕だって言ってただろ!」
俺は思わずクロンを怒鳴りつける。
「落ち着け。そもそもお前はまだ俺様の力を使っていないだろう。小娘たちを思い出せ。それぞれ契約した精霊の司る事象を能力として使っていたはずだ」
風峯が風を纏ったり水谷が水を生み出したりしていたあれか。
「今からお前に俺様が司る【時】の力を教えてやる」
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
少し投稿遅くなりました。
ここまで読んでくださりありがとうございます。面白いと思っていいただけたら♡や☆を押していただければ幸いです。
次回、「【時】の力と復讐者」です。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます