三十話 シルフィン隣国の王妃様と対決する(下)

 皇帝陛下と皇妃様、そして皇太子殿下ご夫妻が拍手の中入場なさった。そして帝室に皆様のために一段高くしつらえられたお席に着かれる。帝宮での夜会の場合、このお席の前に行き、貴族が次々と挨拶をするのがいつものパターンである。


 しかし、今日は何しろ主賓のファルシーネ様がいる。この方がご挨拶をしなければ始まらないだろう。


 そしてファルシーネ様は真っ赤なドレスを翻し、フレイヤー公爵家の方々を引き連れて皇帝陛下のお席の前にやってきた。正式な挨拶は先ほどの式典で済ませているからだろう。彼女は立ったままの略式の礼で皇帝陛下に頭を下げた。


「お久しぶりですね。お父様」


「ああ」


 うわー。あの闊達な皇帝陛下がもの凄い塩対応だ。これは確かに親子仲が決裂寸前まで行ったという事に嘘は無いのだろうね。しかしファルシーネ様は気にした様子も無く、皇妃様にも挨拶をする。


「お会いしたかったですわ。お母様」


「元気にしていましたか? ファルシーネ」


「ええ。お母様のお陰をもちまして」


 皇妃様の表情は柔らかく、言葉にも愛情が溢れている。流石に実の娘は可愛いのだろう。ただし、それ以上に言葉を継ぐことは無く、あまり親愛の情に溢れたとは言い難い、儀礼的な対応だと言えた。ファルシーネ様は少し眉を顰めた。


 しかしそのまま皇太子殿下に声を掛ける。


「久しぶりね。メルバリード」


「お久しぶりでございます」


 皇太子殿下のお声も硬い。身構えている感がありありだ。こちらも仲の良い姉弟だったとはとても言えない感じだ。後で聞いたけど、ファルシーネ様は六歳も下の皇太子殿下を、事あるごとに虐めていたのだそうな。


 順番から言えば、次は皇太子妃殿下だ。妃殿下とファルシーネ様のご立場は多少微妙で、皇帝陛下のお子であり、他国の王妃様であるファルシーネ様は、ほんの少し帝国の皇太子妃よりも地位が高いと言える。


 なので妃殿下はご自分から挨拶なさった。ただし、座ったままで。これは帝国とアンガルゼ王国では帝国の方が圧倒的に強大であり、平たく言えばアンガルゼ王国は帝国の従属国なのだ。次代の皇妃様である妃殿下がへりくだり過ぎてはいけない。例え相手が義理の姉でもだ。


「初めまして。ファルシーネ様。私は……」


「貴女などに挨拶されたくはありません」


 なんと、ファルシーネ様が妃殿下の挨拶を拒絶した。これには周囲の者が絶句する。いくら何でも無礼過ぎるでしょう。妃殿下は真っ青になり、皇太子殿下は怒りに顔を赤くして叫んだ。


「無礼な!」


「何が無礼ですか。そのような身分卑しき者を皇太子妃だなどと。いつから帝国はそのように落ちぶれたのですか」


 ファルシーネ様の台詞にざわめきが起こる。皇太子妃殿下のスイシス様はサッカラン侯爵の娘ということになっている。本当は伯爵家の娘なんだけど、これまでこれは上手く隠されていて、ほとんどの貴族には知られていなかったのだ。しかし何故かファルシーネ様はこれを知っているようだった。……まぁ、彼女の後ろにいるフレイヤー公爵一族の皆様の顔を見れば、誰から聞いて知ったかなんて分かるわよね。


 皇太子殿下が流石に絶句する。しかしファルシーネ様は更に言いつのった。


「何でもその者は伯爵家令嬢だったというでは有りませんか。侯爵家に養子に入るなどという姑息な事をしたくせに、養子に入ったお家に後足で砂を掛けるような真似をしたそうですね。身分卑しい者は恩も知りませんのね!」


 なるほどね。サッカラン侯爵夫人の意趣返しというわけだ。私と妃殿下にやり込められた事への復讐だろう。本来そんな事をすれば、皇帝陛下と皇太子殿下を完全に敵に回してしまい、フレイヤー公爵一族が完全に帝国政界の主流から外れてしまう所なんだけどね。しかし……。


「身分卑しい愛妾から生まれ、身分卑しい妃を娶った貴方はやはり皇帝には相応しくありませんよ。メルバリード。やはりこの私。高貴なる血のみを宿す私こそ、皇帝に相応しいのです!」


 ファルシーネ様は真っ赤なドレスを誇示するように大きく腕を振って叫んだ。


「皇帝陛下と皇妃様の血を唯一引く私こそ次の皇帝です! 今すぐその座を譲りなさい! メルバリード!」


 ファルシーネ様は堂々と仰った。つまり今回の里帰りはこの宣言をするためだったのだ。


 彼女一人がこれを叫んだのだったら、何の反応も無かっただろう。しかし彼女の背後にはフレイヤー公爵一族が控えている。これはこの皇帝立候補宣言に、フレイヤー公爵一族が賛成している事を示している。三大公爵家の一つがファルシーネ様の皇帝即位に味方するとなれば冗談では済まない。これはほとんど反乱である。


 三大公爵家の一つフレイヤー公爵家は当然だが分家、孫家を含めて膨大な一族を抱え大領地を保持している。それが隣国の王妃を擁して皇帝陛下に反抗する。これは帝国を揺るがす大問題だ。


 帝国は大きく動揺することになるだろう。事によると多くの貴族がフレイヤー公爵家に付いて二つに分裂してしまうかもしれない。大変な事である。


 ……のだが。


 うーん。私はちょっとファルシーネ様が気の毒になってきた。


 ファルシーネ様には十分な勝算があったのだと思うの。それは自分には味方が沢山いると考えたからだろう。皇女時代に自分を皇帝にすることに同意してくれた貴族と、そして今回、おそらくは自分を招いて「皇帝を目指すなら支援致します」と言ったのだろうフレイヤー公爵一族の方々。


 そして、多分、皇妃様をあてにしていたのだと思う。


 そもそもファルシーネ様が皇帝を目指そうと思ったきっかけは、多分だけど、皇妃様だ。


 皇妃様は結婚時のいきさつで、皇帝陛下との仲がよろしくなかった。それに皇太子殿下が愛妾の子である事にもわだかまりをお持ちだった。それはつい最近まで続き、スイシス様の件もあり、皇妃様が皇太子殿下を廃太子しようと企む程だったのだ。


 ファルシーネ様はそれを見ていたと思うのよね。年頃になってからは皇妃様から直接ご不満のお言葉を聞いていたのかも知れない。それで、自分だけが皇妃様の子である。自分だけが皇帝に相応しい血筋を持っている。不遇な扱いを受けている皇妃様のためにも自分が皇妃になるべきだ。と思い込んだのだろう。


 多分、輿入れ前に皇帝を目指している時には、皇妃様も支援とまでは行かないけれど応援して下さったのだと思う。でなければ、女性が父親の命令に逆らって婚期を遅らせるのは難しいと思うので。


 だから自分が帝国に帰還し、皇太子殿下が皇帝に不適正だと叫んで、皇帝を自分が目指すと言えば、皇妃様が賛成して下さると思ったんじゃないかしらね。


 ……そうね。一年前なら、もしかしたら上手くいったかもね。


 その頃には皇妃様は帝室の者では無いヴィクリートを皇帝にしようと企んでいたほどだ。実の娘であるファルシーネ様を強く支援してくれる可能性はあったかも知れないわね。


 でもね。状況は変わったのだ。


 皇妃様と皇帝陛下は和解なされ、今では非常に親密で雰囲気も良い。お二人の前にいるとラブラブオーラにやられそうになるくらいなのよ。ええ。良いことですよ。皇帝ご夫妻の仲が良いのは。


 それにお二人は皇太子殿下も妃殿下も大変可愛がり、信頼して下さっている。皇太子殿下ご夫妻もお二人を愛して尊敬している。今や帝室に隙間など無いのだ。


 その状況下でファルシーネ様が皇帝を目指すと言ったらどうなるか。どうもならない。妄言にしかならない。しかし、今回はファルシーネ様の背後にフレイヤー公爵一族が控えている。こうなると、これは単なる妄言では無い。他国の王妃を担いで彼らが反乱を企んだという事になる。


 今の帝室はこんな事で小揺るぎもしないわよね。ファルシーネ様に味方する者が圧倒的に少数派であることは分かり切っている。社交界の情勢見れば分かるわよね。フレイヤー公爵一族は妃殿下のご不興を買った事により皇太子殿下にも遠ざけられていて、社交界においては男女共に負け組なのだ。


 負け組が反乱を企んでもそれに呼応する者は多くないわよね。ならばそんな反乱は叩き潰してしまえば良いだけだ。迅速かつ圧倒的に。


 私は大広間の各所に視線を飛ばした。うん。大体、考えた通りに準備が出来たようだ。


 では。始めるとしましょうか。


 私はヴィクリートと共に進み出た。フレイヤー公爵一族の方々が身構えるが優雅な微笑みで交わすと、そのまま皇太子ご夫妻の前まで出て向き直る。ファルシーネ様の方へ。


「暴言を撤回するなら今でございますよ? ファルシーネ様」


 ファルシーネ様が意外なことを言われたというように顎を上げた。しかし彼女は美しい顔を歪めて私をあざ笑う。


「男爵の娘風情がこの私に物申せると思うのか! 下がれ無礼者!」


 迫力ある一喝だが私には全然響かない。私はおほほほ、っと笑うと左手で軽く合図をした。すると、ミレニーに頼んで呼んで貰っておいた数十人の近衛騎士団があっという間に広間に駆け込んできた。


「な、なんですの?」


 というまにファルシーネ様とフレイヤー公爵一族を取り囲む。貴人に対してだから剣は向けないが、全員鎧姿で剣も帯びている。兜まで被っているから威圧感はある。


「反乱の罪で皆様を逮捕させて頂きますわ」


「逮捕だと? 何の権限があって!」


 ドローヴェン様が叫ぶので私はお答えした。


「ここにいるヴィクリートはこの間帝国軍大将、近衛騎士団副団長になっております。その権限ですわ」


 まぁ、本当は私がヴィクリートの名前を勝手に使ったのだけど、ヴィクリートが文句を言うはず無いからね。


「反乱など企んでおりませんわ! 無実です! 陛下!」


 ワイヴェル様が訴えるが、これにも私が答える。


「皇太子殿下の地位に取って代わると宣言する者を支援するなど立派な反乱では無いですか。なんでそんな事が言えるのか疑問ですね」


 それくらい気が付いて欲しいものなんですけどね。


「私は次期公爵だぞ! この私を逮捕するということは、フレイヤー公爵家を罰するということ! その覚悟があるのか!」


 ドローヴェン様が喚いたが、大丈夫ですよ。その対策もしましたから。


「見苦しいぞ。ドローヴェン」


 そう重々しい声を発しながら私の側にいらしたのは、少し太めの紳士だった。


「ち、父上?」


 そう。この方がフレイヤー公爵閣下サミュエル様。最近病気がちであまり社交にはお出ででは無いのだけど、先ほどレイメヤーを送って急いで帝宮に来て頂いたのだ。


「貴様に次期公爵の誇りがあるのなら、潔く罪に服せよ! バカ者が! よりにもよって皇帝陛下に弓を引こうとは」


 そして公爵閣下は皇帝陛下の方へ跪いた。


「……全ては私の不徳と致すところ。全ての罪を我がフレイヤー公爵家は償いまする……」


 フレイヤー公爵の謝罪に皇帝陛下は厳しい表情で頷いた。


「病床の身である其方には辛いことではあろうが、其方に謹慎を命じ、次期公爵とその婚約者は反乱の罪で幽閉とする」


「へ、陛下!」


 ドローヴェン様が悲鳴を上げるが、公爵閣下は深く頭を下げ、従僕の肩を借りつつ騎士に周囲を囲まれて退場していった。ドローヴェン様とワイヴェル様がへたり込む。皇族が幽閉されるのは反乱の罪のみ。つまり、皇帝陛下も彼らが反乱を企んだことを認定なさったのだ。


 皇帝陛下が頷くと、今度は皇太子殿下が立ち上がり宣告する。


「次期公爵とその婚約者以外の者は身分剥奪の上で牢獄に繋ぐ。軽い罪で済むと思うな!」


 サッカラン侯爵夫人やその他の一族の者から悲鳴が上がる。今更ね。ちょっと考えれば反乱に手を貸したらどうなるか分かりそうなものじゃ無いの。抵抗する彼女たちを騎士は殴りつけて(先ほど身分が剥奪されたので)縄で縛って捕らえている。これから彼女たちは彼女たちが蔑視してやまなかった平民以下の存在となるのだ。まぁ、それも長い事では無く、多分数日の内に首を刎ねられるでしょうけども。


 最後に残されたのは勿論ファルシーネ様だ。彼女は事態が急展開し過ぎてついて行けないという顔になっている。


「な、何が……。お母様?」


 最後の頼みの綱なのだろう。ファルシーネ様は皇妃様に訴えるような視線を向けた。


 しかし、皇妃様はほんの少しだけ辛そうに眉をしかめたが、それだけだった。ファルシーネ様にゆっくり語りかける。


「其方がこのような事を企むとは、残念な事でした」


「お母様!」


「もう遅いのですよ。メルバリードもスイシスも、立派な皇太子と皇太子妃です。貴女の出る幕はありません」


「お母様! そのような身分卑しい者に何が出来ましょうか!」


 皇妃様は今度こそ沈痛な表情をなさった。恐らくファルシーネ様にかつての自分の妄執の姿を認めたのだろう。


「貴女はその身分卑しい者に負けたのです」


「何ですって?」


「私達は入場前に貴女が何をしようとしているのか、シルフィンに伝えられていました。一字一句、同じでしたよ。シルフィンが予想した事と貴女が言ったことは。事前に、フレイヤー公爵を呼んで根回しもして、レクセレンテ公爵家、ウィプバーン公爵家とも話が付いております」


 そうしないとこの場でいきなり、上位貴族であるサッカラン侯爵夫人たちの身分剥奪なんて出来る筈ないのよね。侍従からお義父様にも連絡して貰い、何もかも準備を整えた上で、皇帝陛下ご一家には入場して貰ったのだ。


 もしも何の備えも無い状態でファルシーネ様があの宣言をして、フレイヤー公爵一族が同時に皇帝陛下への不満を叫び、皇太子殿下や妃殿下の身分について声高に言いふらすのを許してしまえば、この後がどうなるか分かったものでは無い。貴族界が分裂し、本当に内戦になってしまうかも知れなかったのだ。


 それを防ぐには準備万端整えて、ファルシーネ様が皇帝への野心を明らかにした瞬間、即座に潰してしまう必要があったのだ。準備は大事。


「シルフィン……。ヴィクリートを寝取った男爵令嬢……」


 ファルシーネ様が血走った目で私を睨む。ちょっと待ってよ。寝取って無い、断じて寝取ってなんていませんからね!


「よくも!」


 勝手な事を言わないでよね。もう。


「ファルシーネ様」


 私もいい加減うんざりした気分で言った。


「貴女はもう隣国の王妃様でしょう? その責任はどうお考えなのですか?」


 彼女は私にきつい言葉で詰問されて、逆に驚いたようだった。


「王妃には国を護り慈しむ責任がある筈。その責任をどうお考えなのですか?」


「……あんな国に思い入れなどございません! 私はこの帝国の皇帝になるべきなのです!」


 私はもうお作法の仮面を被るのも面倒になるくらい腹が立ってきた。


「ふざけないで下さい!」


 ドカーンと怒鳴り声が出てしまった。そんな大声で怒鳴り付けられたことなど無かったのだろう。ファルシーネ様が目を点にしている。


「皇帝陛下も、皇妃様も! どんな思いでこの帝国をまとめ導き、慈しんでいるのだと思っているのですか! 実の娘なのにそんな事も分からないのですか! それならよっぽど皇太子殿下と妃殿下の方が陛下とお妃様の気持ちをご存じです! 貴女など王妃どころか皇女の資格もありません!」


 私は一気に怒鳴り付けた後、周囲の貴族を見渡して、これは全員に言うつもりで言った。


「帝国の高貴なる血は帝国の大地と民を護り癒やし肥やすための力です。その力を持ち、帝国のために全てを捧げる者が貴族です。そして皇族です。大地の女神はそのために私達に魔力という奇跡の力を下さったのです! その事を忘れてはなりません!」


「そうだ」


 台上から皇帝陛下が私の後を引き取って下さった。


「高貴なる血を持つから貴族なのではない。その力を使って帝国を護り導く覚悟と気概がある者が貴族なのだ。そして皇帝はその先頭に立つ者。ファルシーネよ。私が其方を後継者にしなかったのは、自らの事しか考えぬ、其方には皇帝などとても無理だと思ったからだ」


 ファルシーネ様は愕然としている。まぁ、分かって無いのだろうね。


「既に他国の者である其方を帝国の法で処罰は出来ぬ。よって其方は国外追放とし、二度と入国は許さぬ。アンガルゼ王国国王には反乱扇動の責を問う使者を送る事にする」


 プレイヤー公爵一族に比べるとずいぶんお優しい処分だが、他国の王族をまさか牢屋には入れられないという事らしい。その代わりアンガルゼ王国には外交圧力を掛けて責任を取らせるという事だ。アンガルゼ王国の方でファルシーネ様を処罰させるのだ。しかし……。


 ファルシーネ様は皇帝陛下を嘲笑った。


「後悔いたしますわよ。お父様。アンガルゼ王国は私を処罰などいたしません」


 だろうね。王妃が帝国に乗り込んできてこの好き放題さ加減。どう考えてもあちらの国王陛下はファルシーネ様の言いなりなんだろう。こんな強烈な王妃様ではお尻に敷かれるのも無理はないとは思うけど。


「それならそれで仕方が無い。適正な代償をアンガルゼ王国受け取れぬ場合は、戦争もやむを得ぬ」


 皇帝陛下の厳しい表情に私は息を呑んだ。確かに王妃による反乱扇動は立派に戦争の原因になり得る。これには流石にファルシーネ様も怯んだようだったが、すぐ挑戦的な表情を作って自分の父親を睨み付けた。


「望むところ! お父様がそのような分からず屋と知っていれば、最初から力ずくで手に入れれば良かったですわ!」


 今度は戦争宣言だ。王妃の発言には責任が伴う。これはアンガルセ王国国王からの宣戦布告に等しい。問題はファルシーネ様がどの程度それを理解しているかどうかだけど。


「……国境の外まで護送せよ」


 皇帝陛下は明らかにうんざりしたご様子で仰った。それに応じて騎士達がファルシーネ様を広間から出そうとするが、ファルシーネ様は「触るでない!」「私を誰だと思っているのですか!」「お母様! お母様はどう思われているのですか!」などと叫んで抵抗している。


 そしていよいよ騎士達によってファルシーネ様を広間から追い出されようとしたその時、ファルシーネ様は私を物凄い目付きで睨み付け、叫んだ。


「お前だけは! お前だけは許しません! 私が帝国を手に入れた暁には、お前は八つ裂きにしてやります!」


 此の期に及んでまだ帝国を手に入れる気でいるのはいっそ天晴れだとも言える。碌でもないけどね。


 私を庇おうとするヴィクリートを制して私は一歩ファルシーネ様の前に出ると、私はあえて和かな笑顔で言った。


「おとといきやがれ、ですわ」

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