十四話 シルフィン公爵領を満喫する

 レクセレンテ公爵領は帝国の北東国境にある。北は平和な遊牧国家が広がっており、東には友好国があるそうだ。帝国の周りには帝国と仲の悪い国も少なくないが、公爵領の周辺は比較的平和で、この百年は大きな争いは起きていない。


 気候は温暖だがそれは歴代公爵家が魔力を毎年大地の女神に奉納しているからで、本来はやや寒冷な土地であるそうだ。魔力ってよく知らないけど凄いわね。私の故郷は公爵領より南なので、魔力を沢山奉納すればもっともっと作物が取れるようになるのかしらね。


 私達の乗った馬車は畑以外には何にも無い平地を進んで行く。季節は春だから畑にはまだまだ青い麦が揺れている。秋まき小麦の収穫は夏だ。この辺も同じなのね。


 だけど、しばらく畑を見ていて気が付いた。あれ? おかしいな? なんで延々と同じくらい育った小麦なんだろうね? まさか全部これ麦畑なの? まさか。そんなの故郷ではあり得なかった事だ。どういう事なんだろう?


 私は考えこんでしまったのだけど、まぁ、公爵領では何か違いがあるのかもね。と、この時はスルーした。農業は地方によって色んなやり方があるものだもの。


 馬車は田舎道を進み、領都に入った。農村地帯である公爵領だけど、流石に領都は栄えていて大きな街だった。こんな大きな街は故郷には無かった。北や東の国から商人がやってきてそれほど大規模では無いが交易もしていて、その中心がこの領都なのだという。


 大きいとは言ってもせいぜい人口は一万人くらいなのだそうで、何十万人も住んでいる帝都とは比べるまでもない。馬車は領都の簡素な城壁を潜り中心部へ向かう。街の中心に結構高い岩山が立っていてその頂上に石造りのお城が見える。あれが領都のお城だ。


 ただ、頂上まで行くのは大変(馬車では行かれないらしい)なので麓にお屋敷が建てられていて、私たちが滞在するのはそこである。お城は儀式と戦争でしか使わないんだって。魔力奉納の儀式はお城でやるのだそう。


 岩山の麓のお屋敷は、ヴィクリートは「小さな」と言ったんだけど、勿論それは公爵家基準であって、ブゼルバ伯爵の帝都邸と同じくらいの大きさはあったわよ。


 帝都の公爵邸に比べれば簡素な造りでそれほどキンキラしていない。全体的にちょっと古めかしい内装だと思ったわよね。


 私の私室は先行して来てくれていたレイメヤーが整えてくれていて、私好みに若草色にすっきりとした印象のお部屋になっていた。広さは帝都の私室の半分くらいしかないけど、十分よね。帝都のが広過ぎるのだ。


 ちなみに隣がヴィクリートの部屋で、実はお部屋同士の間に扉もある。つまり繋がっている。これは夫婦が使うことが想定されているからだ。だけど私とヴィクリートは婚約者だがまだ夫婦ではない。なのでこの扉にはしっかり鍵が掛けられている。


「昼間は空けておいても良いのでは無いか?」


 とヴィクリートは残念がったのだけど、昼だろうと夜だろうと、未婚女性の部屋に男性が立ち入る事自体が破廉恥案件なのでダメである。


 公爵邸に入ったその日はゆっくりお休みした。快適すぎる旅だったから私は全然疲れてなかったけどね。ちなみに、侍女や従僕、執事に関しては旅の間のお世話をしてくれた者と、前乗りで来てくれた者で、普段の半分くらいの人数がいる。お屋敷が小さいからそれで十分なのだ。私の侍女もレイメヤーとミレニーだけだ。他の者たちは休暇を与えてある。下働きは地元の者が来てくれているらしい。


 翌日になると、領地内の有力者が何人かやって来たので、公爵ご夫妻と私とヴィクリートで面会して挨拶を受ける。こういう地方の有力者は貴族ではなく豪族という扱いになるそうだ。


 豪族たちは私とヴィクリートの婚約を寿ぎ祝福の言葉を述べた後、早速という感じで本題に入った。


「今年も小麦の収穫は減ってしまいそうです」


 どうも麦の生育が良く無いらしい。公爵閣下が不満そうに言った。


「去年もしっかりと魔力の奉納はしたのだぞ? なぜこうも毎年収穫量が減るのだ。天候が不順だった訳では無かろうに」


「分かりません。しっかり作付けはしたのですが……」


「つきましては。来年の収穫を増やすために、東の森を焼く許可を頂きたく……」


 森を焼いて焼畑をやりたいという意味だろう。焼畑は故郷でもたまに村全体でやったけど……。


「しかし東の森は一昨年も大分焼いたであろう。これ以上焼いては森が無くなって其方たちが困るのでは無いか?」


 ヴィクリートが言う。そうよね。森は薪や材料に使う木の供給源だし、食べ物や薬草を採集する場所でもある。無ければ農村の者たちが困ってしまうのだ。ヴィクリートは農村を良く視察していると言っていた通り、そういう所も分かっているようだ。


「しかし、耕地を広げねば来年も収穫が減ることは確実です。そうすれば公爵様に指定の税がお納め出来なくなります」


 ……え? 耕地を広げて収穫を確保する? 私は首を傾げた。もしかしてこれまでもそうやって耕地を広げ続けて収穫を維持し続けて来たのかしら? それはちょっとおかしいのよね。


 結局、公爵閣下とヴィクリートは焼畑の許可を出さず、収穫を見て税の額は調整するという事になった。豪族が帰った後、ヴィクリートと公爵閣下は渋い顔をしていた。


「奴ら、収穫を誤魔化しておるのではないか? ヴィクリート」


「いえ、私はかなり細かく農村を見て歩いていますから、そういう誤魔化しがあればすぐに分かる筈です。普通に年々収穫が悪化しているのですよ。焼畑をやって広げた耕地は数年は良く麦が実るらしいので、彼らは焼畑をしたがるのでしょう」


 ……焼畑をした土地は数年収穫が好調で、他の土地は年々収穫が減っているですって? それはつまり、土地がドンドン痩せている事を意味するのでは?


 公爵領を通過中、馬車の窓から見た、一面の麦畑を思い出す。そう。それこそ見渡す限りの青い麦畑だったわね。ひたすら麦しか生えていなかった。そうなのだ。麦しか見えなかったのだ。


 ならば原因はアレではないのかしら? で、でも。農民がそれを知らない、気が付かないなんて事があるのかしら……。私はちょっと考え込んでしまった。うーん。ちょっと情報が少な過ぎるから、もう少し農村に行って様子を見て話を聞いてみないと。


 私がそんな事を考えていると、ちょうど良いことにヴィクリートが私に優しく微笑み掛けてきた。


「さて、シルフィン。私は農村の視察に出るが、君も来るだろう?」


「勿論!」


 私は目を輝かせて答えたわよ。わー嬉しい! 公爵領の農村、どんなところなのかしらね! 故郷とどんなふうに違うのかしら。それに、田舎の農村の雰囲気に触れられるだけでも嬉しい。


 私は準備しておいた膝丈スカートにブーツという格好に着替えた。上は普通のブラウスだが、腕には長手袋をしている。日焼けを防ぐためだ。


「少しくらい日焼けしても大丈夫だと思うけど……」


 そもそも、幼少時から外を駆け回って育った私の肌は白磁のような純白とは程遠い。


「ダメです」


 レイメヤーはにべもなかった。日焼け防止の意味もあるが、農村で身分差を示す意味合いもあるのだそうだ。うーん、私は逆に農民に混じって働きたいくらいなんだけどね。


 ヴィクリート一人であれば、騎馬でお供を数人連れて走り回るそうなのだが、私がいるからと馬車が用意された。農村を走るので小さくて頑丈な馬車だ。


「ヴィクリートの馬に相乗りしても良いわよ?」


 子供の頃はお父様の馬に良く乗せてもらったものだ。


「なかなか魅力的な提案だが、それでは侍女が移動出来ないからな」


 ヴィクリートはそう言ったが、私の耳に口を寄せてこうも言った。


「滞在中に一度はやってみよう」


 うふふふ。流石はヴィクリートだ。


 公爵邸を出た馬車は広くも無い領都をすぐに出て農村地帯を走る。見渡す限りの青い麦。生育状況が悪いと聞いたけど、そこまで酷いわけでは無さそうだ。旱魃や麦の病気が蔓延して不作になったのを何度か見た事があるけど、あの時はこんなものじゃ無かったからね。


 そして馬車は村の一つに入って行った。故郷の村と似たような村だ。私は懐かしくなった。小さな丘の上に小さな家が密集して建ち、周囲が木柵で囲まれている。


 家は藁葺きで土壁だ。村の中央の広場に入ると、家々から物珍しそうに村人が出てきた。その格好も懐かしい。故郷と変わらないわね。その辺りを鶏だとか豚が歩いているのも一緒ね。


 ヴィクリートにエスコートされて馬車を降りる。早速ミレニーが私に日傘を差してくれた。どこからどう見ても高位の貴族婦人に見えるだろう。まさか三年前までここにいる皆さんと同じように農作業で泥だらけになっていた小娘だとは思うまい。


 村長らしき人が挨拶に来て、私たちは村の集会場に通された。人が二十人も入ればいっぱいな集会場には木で粗雑に組み上げられた椅子とテーブルがあり、私とヴィクリートだけが座る。


 ヴィクリートは早速、村長に最近の状況の説明を求めた。背の低い背中が少し丸くなっている(農民には多い)四十歳くらいの村長は、ポツポツと話し始める。


「はぁ、特に変わりねぇです。ただ、麦は去年より悪いかと思います」


「なぜだ。土が悪いのか?」


「いえ、例年通りの黒土で良いと思いますが、どうも麦の育ちが悪く、病気になる麦も多くて……」


 魔力を奉納すると、土が湿り気を帯びて黒くなるのだそうだ。このため、それ程水を畑に引かなくても済むのだそうな。それは凄い。


 ただ……。私はちょっと気になっている事を聞いてみた。


「村長さん、今畑にあるのは秋に蒔いた麦ですね」


 貴族婦人が庶民に話しかけるなんてあまり無い事だ。村長はあからさまに驚きながらもなんとか答えてくれた。


「そ、そうです」


「では、初夏に刈り入れですね。その後には何を蒔くのですか?」


「はぁ。お許しを得た分だけ豆を蒔いております」


 小麦はあくまで納税用作物。自分たちが食べる用の豆を麦の後に蒔いて秋に収穫するのだろう。


「ではそれ以外の畑は夏の間は放置ですか」


「はぁ、そうですな」


 ……これは……多分、あれだ。でも、なんでそんな基本的な知識が農民に欠けているのだろう?


「なんだ、シルフィン。何か分かったのか?」


 ヴィクリートが俯いて考え込む私を、覗き込むようにして尋ねた。私はうーんと考え、頷いた。


「ええ。多分。でもねヴィクリート。ここの農法と故郷の農法の違いが分からないから、断定は出来ないんだけど……」


「小麦の収穫量が増えない理由が分かったというのか⁉︎」


 ヴィクリートは驚いたように言い。その言葉を聞いた村長も目を剥く。


「な、なんですと? そ、そりゃあ一体……」


 ちょっと、勘違いかも知れないんだからあんまり騒がないで! でも良い機会だ。私は村長に聞いてみた。


「なんで村の畑はひたすら麦ばかりなのですか?」


 村長は一体何を言われたのか分からないという顔をした。


「そ、そりゃあ、麦畑ですからな。麦しか蒔いておりません」


「……もう何十年も?」


「そうですな。私が子供の頃より麦以外を蒔いた事はほぼ無い筈です。さっき言った豆以外は」


 ……間違い無さそうだ。


「シルフィン? 何が分かったというのだ?」


 ヴィクリートが好奇心が抑えられないという声で聞いてきた。私は彼に割と真面目な顔で言った。


「連作障害です」


「? 何なのだそれは?」


 公爵領の農村によく行くというヴィクリートが知らないのだから、やはり公爵領の農民にこの知識が無いのだろう。


「ヴィクリート。麦はね、毎年毎年同じ土地に蒔くと、その内に穫れなくなってしまうのよ」


「な、なんだって?」


「土地の力を吸い尽くしたり、麦が病気になり易くなったりするの。だから麦畑は休ませないとダメなのよ」


 村長は何を言っているのか、という顔をしているし、ヴィクリートも信じられないというような顔をしている。


「私ね、公爵領の麦畑を見て気になっていたのよ。全部が全部麦畑なんだもの。普通はそんな事はあり得ないのよ」


 麦を連続で蒔くと土地が死んでしまうので、前の年に麦を蒔いた土地には芋を植えたりカブを植えたりするのが当たり前なのだ。本格的に休ませる時には牧草になる草の種を蒔いて放牧地にする。ヤギや羊、牛のフンは土地を肥やす。その土地を起こす時には堆肥も混ぜて耕す。


 そうやって土地をローテーションさせて使うのが麦を育てる際の鉄則なのだ。というか常識だ。だって間違って二年も麦を蒔いたら麦はろくに穂も出さないからね。


 つまり、何十年も麦だけを蒔き続けて収穫があるのがおかしいのだ。それが魔力奉納の効果なのだろう。しかしながら魔力奉納の効果にも限界があり、地力を完全に回復させる力は無いのだろう。だから年々収穫が減っているのだ。


 私の説明を聞いて、ヴィクリートが何かに気が付いたように手を叩いた。


「ああ、それでか」


 何でも軍務で他所の土地に行くと、麦畑のように見えるのに芋が植っていたり、雑草が生えていたりする土地があるのが不思議だとは思っていたらしい。


「ということは、土地を休ませれば地力が回復して収穫が増やせるという事だな」


「多分。焼畑をして新しく造成した畑は獲れるのに、だんだん収穫が減るというならそういう事だと思うわ」


 ヴィクリートは何度も頷き、村長に向かって言った。


「よし、早速やろうではないか。村長。庄屋を集めるのだ」


 村長は慌てて出て行き。しばらくして庄屋(領主から土地を貰っている大農家。この下に庄屋から更に土地を借りている小作人がいる)が二十人程集会場に入ってきた。農家としては裕福な部類に入る筈だが、あまり身なりも良くなく元気も無い。


 ヴィクリートは早速、さっき私が言ったことを皆に教え、早速実践しようと言ったのだが。庄屋達の反応は鈍かった。明らかに困惑と尻込みをしていて、ヴィクリートの提案から言を左右にして逃げようとしていた。


「そんな話は聞いたことがないですな」


「いきなりやれと言われてもやり方もわからんし」


「やっても良くなるとは限りませんぜ」


「それにもう今年は無理でしょう。麦が生えちまったんだから。来年にしましょうぜ」


 ……田舎だ。田舎の人たちの反応だ。田舎の者達はとにかく新しい事を嫌う。知ってた。私の故郷でもみんなそうだったもの。お父様が商人から良さそうな種をもらって蒔いてみようと近所の農家や小作人に言っても必ず反対されたものだ。


 そういえばお父様は結構色んな事を試す方だったわね。田舎の人にしては。灌漑設備を改造して効率を上げたり、牧草にする物凄く成長が早くて家畜が肥える草をどこかからもらってきたり。流石は男爵様だったのだわね。今思うと。


 それはともかく、庄屋達の消極的態度に、ヴィクリートの機嫌はみるみる悪化した。あ、まずい。この人は基本温厚な方だが何しろ軍人さんだもの。激しいところもある。私には常に甘々だけど。


 次期領主に向かって平民がこの態度なら罰する権利はあると思うけど、農民達の協力が必要なこの場面で農村の実力者を罰してしまうのはいかにもマズい。


 私はヴィクリートが切れてしまう前に立ち上がり、パンパンと手を叩いた。


「あなた達の言い分は分かりましたけど、却下致します。私の言う事を聞きなさい!」


 お上品な格好をした小娘が何を言い出したのか? と庄屋たちは目を丸くしている。私は全員の注目を集めると、堂々と大嘘を吐いた。


「私は農業の専門家です。あなた達より詳しいのです。故に公爵閣下より公爵領の農業改革を任されたのです。あなた達は私の命令を聞く義務があります」


 庄屋達が呻き声を上げる。こういう田舎の農民は、お上のからの命令に弱い。ヴィクリートは彼らと交流があるから相談から入ったが、いきなり命令した方が納得して従うものなのだ。


「女なのに農業の専門家?」


「いかにもそうですわ。農業の専門家にして次期公妃です」


 庄屋達が驚く。ヴィクリートが次期公爵であることは知っていても私が次期公妃であることは知らなかったようだ。専門家の権威と公爵家の権威をギラギラと見せつけた後で、私は彼らを懐柔に掛かる。


「もちろん、言う通りにして収穫が上がればあなた達にも報いましょう。納税はこれまで通り小麦で払えば良いです。輪作で栽培する作物は全てあなた方のものとしましょう」


 庄屋達が騒めいた。彼らが耕している土地は本来は公爵家のものだ。彼らは預かっているに過ぎない。そのため、土地の収穫物は本来全て公爵家の物なのである。


 しかし、私は輪作で作る芋やカブなどは農民が処分して構わない、と言ったのだ。それらを売ればお金になり、農民達が潤うのである。しかも輪作でちゃんと作るのだから結構な量が獲れるはずだ。


 それを自分たちで処分して構わないというのだ。市場にでも店を出して街の人々にでも売れば相当な収入になる。これまでは食べるのにやっとだったものが、比べ物にならないくらい豊かになる事だろう。


 農家なのだからそれが分からない筈はない。彼らの目の色が変わるのは当然だった。


「良い話だと思いませんか?」


「本当に、そんな事を公爵様が認めてくださるのか?」


「ここに座すのは次期公爵閣下で、私は次期公妃ですよ。約束は必ず守ります。あなた方が私の命令をきちんと聞けばですけどね」


 ただ、この提案にはやや裏がある。非常に長期に保存が出来る麦と違い、芋やカブはあまり長期保存が出来ないから貢納作物に向いていない。なので基本的には地産地消するしかないのだ。これはどこの領地でもそうだろう。私の故郷も勿論そうだった。


 となると作物を儲けにするには街まで持ってきて自分たちで市場で売るしかない。だからそれを知っている領主は作物に直接税を掛けるのではなく、市場への出店に出店税を掛けるのだ。領主はそうやって土地からの収益を回収するのである。


 領主というのは損をしないようになっているのだなぁ、とこのカラクリを知った時に私は思ったのだが、そんな事は今言う必要は無いわよね。庄屋達は自分たちの儲け話を聞かされて明らかにやる気を出し始めている。


 これなら言う事を聞いてくれそうね。私はヴィクリートを見た。彼は何だか物凄く感心したような顔をしている。そして大きく頷くと、私に力強い言葉を掛けてくれた。


「よし! 全て君に任せる。思うように領地を改革してくれ。父は私が説得するから」


 次期公爵からのお許しが出たわよ! 私は嬉しくなってヴィクリートに満面の笑みを向けると、農民達に向かってこう叫んだ。


「では、全員私の言う事を聞いてキビキビ働きなさい! 私はレクセレンテ公爵家次期公妃シルフィンです! 公爵家の名の下に、あなたたちに農業革命をもたらす者です!」


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