六話 シルフィン皇帝陛下に気に入られる
三日後。私は公爵ご夫妻とヴィクリートに連れられて帝宮へと上がった。……嘘でしょう? やっぱり私も行かなきゃ駄目な話だった。当たり前か。私本人が関わる話なんだものね。
帝宮は帝都の中心部の丘にあり、城壁で囲まれている。一番高いところにある印象的な尖塔は帝都の色んな所から見ることが出来るから、私もどこが帝宮なのかは知っている。しかし勿論立ち入った事は無い。近寄ったことも無い。迂闊に門の側に近付くと罰せられると聞いた事があるからだ。
それが今回は公爵家の立派な馬車に乗せられて入り口で止まることさえ無く、あっさり帝宮城壁の巨大な門を潜ったのだった。門の向こうは大きな水堀になっていて、跳ね橋が架かっている。その跳ね橋を馬車が渡るとその向こうにもう一つ城壁があり、そこにも門があった。勿論公爵家の馬車が止められる事は無い。
そこから道は巨大な丘を巻くようにして伸びていた。左右は庭園であったり、壮麗な建物(離宮だそうだ)であったりする。そして随分長い事馬車は走り、また城壁の門を潜り、広い空間に出た。城壁に囲まれた大庭園の真ん中に、てっぺんが見えないほどの高い尖塔が建っている。これが帝宮市街から見える塔だろう。その下には何というか、大き過ぎるし複雑過ぎてグロテスクにさえ見える建物が建っている。いや、豪華絢爛なのは分かるけど、行き過ぎて怖いくらいな建物になっているのだ。
これが帝宮か。皇帝陛下のお住まいである事しか分からないけれど、流石に凄い所だわ。
本宮の正面玄関へと馬車は付けられる。馬車は公爵ご夫妻が乗っているものと私とヴィクリートが乗っているものの二台。私にはミレニーとレイメヤーが付けられていた。ミレにーもレイメヤーも緊張した顔をしていたわね。
馬車からおっかなびっくり降りる。参内までの三日間、帝宮で使う作法は徹底的に教わった。それこそ寝る間を惜しんで。レイメヤー以下侍女たちが先生になってくれてね。でも、この時着ていたドレスは参内用の正装で、夏だというのに重厚な動き難い事この上ないものだった。そして髪もしっかりセットされ、変な動きをしたら崩れてしまいそう。おまけに身体中にピカピカ輝く装飾品がくっつけられている。重い。それにこれ、いったいお値段は幾らするんだろう。……考えない方が良さそうだ。
帝宮本宮のエントランスホールは公爵邸の玄関(ただ、私が知っているのは家族用の通用口だけど)よりも遙かに広く、天井は高く、床は大理石で複雑な文様が描かれていて、壁際には何やら石像や銅像がずらっと並び、なんだか優雅な音楽まで聞こえる。昼間なのに煌々とシャンデリアが点されていて、何故か屋内なのに風が吹いていた。魔法を使っていると聞いたけど、私は魔法なんて初めて見たわよね。
貴族の持つ不思議な力を魔力と言い、大地の女神に大昔の皇族が授かった力なのだそうだ。それが婚姻で貴族にも齎され、大地を肥やすのやこういう魔法に使用されているのだという。
なので、貴族であるには「大地の女神の祝福を得た血」が大事で、私がヴィクリートと結婚するにはどうしても最低限、貴族の血を引いていないと無理だったのだそうだ。私は父が確かに子爵家の子息だ。母は平民だけど。これは紋章院がきちんと確認したそうである。私が間違い無く貴族の血筋である事を知り、ヴィクリートは随分ホッとしたらしい。
初めて入る帝宮の圧倒的な空間に圧倒される私と対照的に、帝宮など来慣れている公爵ご夫妻とヴィクリートは、私を連れてさっさと奥へと入って行く。一応は侍従が先導しているけど、案内などいらなそうだ。私はヴィクリートの腕に掴まって何とか作法通りを意識しながら静々と歩く。
「凄い所ね」
「そうか? 古くさいだけであろう」
ヴィクリートは何でも無いように言った。彼に言わせれば帝宮は建築からもう三百年近くを経過する老朽化している建物で、そろそろ全面的な修復が必要な古くさい建物なのだ、ということだった。乱暴な意見に私の口元は引きつった。
「こんな息が詰まるような宮殿になど長居はしたくないものなのだがな」
不敬にも程がある言い草だ。どうもこの人は堅苦しい事があまり好きではないらしい。そうしてヴィクリートと共に歩いていると、廊下を数人の集団がこちらへ向かってくるのが見えた。するとヴィクリートがはっきりと舌打ちした。
「ちっ。面倒な。わざわざ途中で待ち構えていたな? 物見高い奴だ」
は? 待ち構えていた? ヴィクリートを? 誰が?
向かってくる集団は、武装した兵士らしき人が三名。侍従と思しき方が一人。侍女が一人。そしてそれらに囲まれるようにして立派な身なりの若い男性がいた。
ヴィクリートよりも赤みが強い赤茶色の髪。秀麗な容貌。グリーンの瞳が面白そうにヴィクリートと私を見ていた。あらま。これは凄い。ヴィクリートは私が知る限り圧倒的に冠絶した美男子なんだけど、この方も匹敵するくらいのイケメンだわ。ヴィクリートは比較的肩幅が広いがっちりした体格だけど、こっちの方は細身の柔らかな体格という違いがあるけども。
まぁ、ヴィクリートの方がまだ少しカッコいいかな。うん。
その美男子が近付くと私達の前にいた公爵ご夫妻が深く頭を下げた。……え? 今、公爵ご夫妻が頭を下げたわよ。ということはこの美男子は公爵閣下よりもお偉いのだという事にならないかしら。この帝国で四番目に偉いと聞いている公爵閣下に頭を下げさせると言うことは、つまり帝国お偉いさんランキングトップスリーに入る方だという事になる。この美男子が。一体何者なのか。
彼は公爵閣下の挨拶を鷹揚に受けると、そのまま真っ直ぐヴィクリートの方に向かってきた。表情は如何にも楽しそうだ。反面、ヴィクリートの方はちょっと渋いものでも舐めたような感じの顔になっている。
近寄ってきた彼はヴィクリートに向かって大きな声で言った。
「その女性が其方の婚約者か? ヴィクリート! お前のような堅物をその気にさせた女をこの私によく見せてみろ」
そして彼は私の方に無遠慮に手を伸ばしてきた。へ? な、何を?
だがその手はパシンとはたき落とされた。ヴィクリートにだ。
「止めろメルバリード。シルフィンは私の婚約者だ。触るな」
「ケチな事を言うな。ヴィー。お前が結婚相手と決めたと聞いてから、どんな相手かが気になってよく眠れないほどだったのだ」
彼は好奇心でキラキラ輝く瞳で私をジロジロと眺め回した。私は気圧されて思わずヴィクリートの後ろに隠れそうになるが、美男子は回り込んで私を追い掛けようとする。
「ふむふむ。容姿は及第点では無いか? 少し幼いが。何歳なのだ?」
公爵閣下が礼を施すくらいの方なのだから、無視はまずいだろう。私はおどおどと答えた。
「じゅ、十五歳です」
「ふむ。なら十八のヴィクリートとは釣り合いも悪くないな。それで? どこの生まれだ? 身分は?」
「皇太子殿下」
ヴィクリートが溜息交じりに言った。……は? 今なんて?
「陛下とお話をした後に時間を取って話をするから今は勘弁しろ。メルバリード」
「お、言ったな? 約束だぞ? 待っているからな。ではシルフィン。後でな?」
そう言い残すと美男子はお付きの者達を引き連れて上機嫌で去っていった。……というか。
「……皇太子殿下?」
私は震える声で言ったのだが、ヴィクリートは面倒くさそうな顔で何でも無いように言った。
「ああ、皇太子メルバリード殿下だ。私には同い年の従兄弟に当たる」
……ぎゃー!
◇◇◇
まぁ、皇太子殿下で驚いている場合では無いのよね。なにしろこれら面会するのは皇帝陛下だ。
私たちは帝宮の奥まったところにあるサロンに通された。それほど広くは無い部屋だ。落ち着きのある緑系の色合いに統一された室内には大きな絵画や陶器が飾られ、天井画は狩猟の様子が描かれている。調度品も比較的簡素なものだ。
明らかにプライベートな部屋で主人の飾らない性格を表していると思う。私たちは公爵ご夫妻、私とヴィクリートに分かれてソファーに座る。
私は神の一人とさえ聞く皇帝陛下にお会いするという緊張でカチコチなのだが、ヴィクリートは何せ皇帝陛下の甥だ。全く緊張の様子は無く、優雅にお茶を飲んでいる。公爵ご夫妻もいつも通り仲良く談笑なさっていた。相変わらず住んでいる世界が違う。
そうして随分待たされて、私の背中が痛くなり始めた頃、侍従がやってきて皇帝陛下の来訪を告げた。
その瞬間、リラックスしていた公爵ご夫妻やヴィクリートの表情がぴりっと引き締まった。……なるほど。ずっと緊張していたのでは疲れてしまうから、メリハリを付けているのね。納得だ。
ドアが開くと公爵ご夫妻とヴィクリートは恭しく頭を下げた。私も教わった通り腰から頭を下げる、下げ過ぎないように。目を伏せて、声に出さずに祈りの言葉を発するのが目上の方にお会いする時の作法なのだそうだ。
入室してきた方は意外と軽い足取りで、そしてやはり軽い感じでおっしゃられた。
「なんだ。仰々しいなヴァレジオン」
「今回は陛下にお願いに上がる立場でございますからな」
「ふん。こういう時にだけ殊勝な態度をするのか」
私たちはゆっくり頭を上げた。金に近い赤茶の髪に濃い緑色の瞳の方がそこには立っていた。
服は意外と普通だ。豪華ではあるが普通の緑のコートに白いシャツ。臙脂のタイ。あまり装飾品は付けず、派手ではない。先ほどの皇太子殿下の方がキラキラしていたわね。
お顔立ちは皇太子殿下よりグッと男性的だがお髭は生やさず、柔らかだが鋭い瞳が印象的だった。
この方が帝国皇帝マクファーレン三世陛下。の筈だ。……なんというか、普通ね。いや、私も公爵閣下やヴィクリートを見慣れてしまったからそう思うんだろうけどね。農家のおじさんや出入りの商人とはやっぱり威厳とか色々な部分が違うもの。
皇帝陛下はふっと視線をこちらに向けてニヤッと笑った。うひっ! 私は思わず頭を下げてしまう。
「その方がヴィクリートの命の恩人とやらか。なるほどな」
何がなるほどなんですかね? そして皇帝陛下は私たちに椅子を勧め、自分も椅子に腰掛けた。背もたれにぐいっと体を預けてリラックスしている。そしてニヤニヤ笑いながら言った。
「ヴィクリートが結婚を決めたと聞いて驚きのあまりひっくり返りそうになったぞ」
ヴィクリートは済ました顔をしているけど公爵ご夫妻もちょっとニヤニヤしているところを見ると、やはりヴィクリートが嫁をいきなり連れてきた事は、彼を知る者にとっては非常に意外な事だったのだろう。
「ふむ、それで? ブゼルバ伯爵の養女という事だったが、元は男爵令嬢だったか?」
そんなところまで皇帝陛下にはお話が通っているのか。よく考えればそれはそうだ。今回の来訪の目的は皇帝陛下に私とヴィクリートの婚約についての内諾を頂く事だ。根回しをしないでいきなり話が出来るわけがない。
「そうです。ですが父親は子爵家の子息で、貴族の血を引く事は間違いありません」
「ふむ、だが、あまりにも血が薄いな。公爵領を維持するには膨大な魔力が必要になる。その者に公爵領が支えられるのか?」
私は土地に魔力を捧げるというのがどういう事かは全然分かっていないのだけれど、どうやら領主になるには魔力が必要で、大領地を統治するには大きな魔力が必要であるらしい。
私には魔力なんて無いから無理じゃない? 私は青くなったのだが、ヴィクリートは小揺るぎもしなかった。
「そこは私が頑張れば良いだけですし、結婚すればシルフィンの魔力もある程度上がる筈です」
結婚したら魔力が増えるというのがどういう理屈なのかはよく分からないが。どうやらそうらしい。私は兎に角魔力ってなんだ、という事からして全然分かっていないのだ。
「しかし、それではヴィクリートの負担が大きかろう。どうだな? ここはやはり妃はイーメリアとし、シルフィンは愛妾という事にしては?」
……貴族的には妥当な提案という事になるんだろうね。この間公妃様に伺った通り、貴族は結婚と愛情を普通に分離して扱う。地位的にも魔力的にもヴィクリートの妻に相応しい第二皇女であるイーメリア様を正式な夫人とし、身分卑しいお気に入りの私は愛妾にする。それが貴族的には収まりが良いポジションなのだろう。
しかしヴィクリートはそれを一蹴した。
「そんな不誠実な事は出来ません。イーメリア様にもシルフィンにも失礼極まりない」
ヴィクリートがそう反応するだろうことは私にだって分かったのだから、私よりもヴィクリートと付き合いの長い皇帝陛下が分からない筈はない。皇帝陛下が苦笑しておられるところを見れば、そう返答されるのは完全に想定内だった事が分かる。
「ふむ。ではシルフィン。其方はどうだ? 自分で考えよ。自分に公妃が務まるのかどうか?」
その場の視線が一斉に私に集まった。ひー! 公爵夫妻やヴィクリートは優しい視線で、皇帝陛下は好奇心一杯という視線。そしてミレニーとレイメヤーは心配そうだったが、帝宮の侍女や侍従の視線には若干厳しいものも混じっていた。
帝宮の侍女や侍従となれば私よりもはるかに高い身分の方々なのだろう。それは私を見る目が厳しくもなろうというものだ。何しろ私はこれからヴィクリートと結婚して、その身分の壁を何個も飛び越えて彼らの上に出ようとしているのだからね。
私は生唾を飲み込みつつ、震える手を握りしめる、落ち着くのよ。シルフィン。って、落ち着ける筈ないじゃない! ううう、口を開いても声が出なさそうだ。
と、私の手が温かいものに包まれた、ヴィクリートが私の手を握って包んでくれたのだ。思わず彼を見上げると、彼は穏やかな顔で私を見下ろしていた。……私を信じてくれている顔だ。この信頼には応えなければなるまい。そう思うと不思議と私の震えは治った。
この現実感が無いほど場違いな席で、彼の存在だけが私の拠って立てる、しっかりしたものだ。そう思うとなんだか私はくすぐったいような、嬉しいような幸せなような、そういうホカホカしたものに包まれる気分がする。
私は姿勢を正し、しっかり皇帝陛下を見る。
「自分が公妃になる自信なんてございません、そもそも貴族がどんなお仕事なのかも全然知らないのですもの」
あまりにも明け透けな私の言葉に皇帝陛下が驚いたようなお顔をなさった。
「でも、何とかやってみせますわ。私にしか出来ないのであれば」
「別に其方ではなく、別の者にやらせても良いのだぞ?」
皇帝陛下がすかさず突っ込んだ。しかし私は首を横に振った。
「いいえ。ヴィクリートは私以外とは結婚しないと聞いています。ですから私にしか出来ないのです」
私が自信満々に言い放つとヴィクリートが頷いた。
「そうだな。シルフィンと結婚出来ないのなら私は生涯結婚などせぬ」
「ですから自信なんかありませんけど、私にしか出来ないのですもの。ならば私がヴィクリートと結婚して公妃になります! きっと立派にやってみせます!」
私は半ばヤケクソで宣言してやった。ヴィクリートが励ましてくれたというのもあるけど、あんまり無茶振りが続き過ぎたせいで私も大概キレ掛けていたというのもあるし、それにお偉いさんのインフレが過ぎて私がお貴族様オーラに慣れてしまったというのもある。
そもそも私は自分の責任が投げ出せない損な性格である。ヴィクリートが行き倒れていたのを見て、面倒ごとになるのを承知で放置出来ない程度には。
そして私はもうヴィクリートと離れたくない。公妃様に宣言した通り、彼と結婚するためなら困難を乗り越えるだけの覚悟はあるつもりだ。完全に無理であるならともかく、ヴィクリートは大丈夫だと言ってくれた、なら、後は私が頑張れば良いだけだ。
ともあれ、フンスと鼻息を荒くして言い放った私の言葉に皇帝陛下は最初唖然とし、そしてそれから思わずと言う感じで吹き出した。声を出して笑い始める。
皇帝陛下が声を上げて爆笑なさるなどあんまり無い事なのだろう。侍女や侍従は本より、公爵ご夫妻までが目を丸くしている。皇帝陛下はひとしきり笑うと、目に浮かんだ涙をハンカチで拭った。
「なるほどなるほど。ヴィクリートが見染めるわけだな。これは」
そして実に楽しそうな表情で私を真っ直ぐ見ると、聞く者の胃の腑に響く様な重々しいお声で仰った。
「気に入った。その意気やよし! 昨今の貴族にはその気概が足らぬ。案外、其方が公妃になることは我が帝国にその気概を注入する事になるやも知れぬな」
そしてヴィクリートに向けて大きく頷いた。
「ヴィクリート! 結婚を許す! シルフィンを大事にせよ!」
ヴィクリートはザッと立ち上がる、私も慌ててそれに習う、そして二人で皇帝陛下にしっかりと頭を下げた。こうして、私とヴィクリートの結婚は、皇帝陛下の御許可を頂けたのだった。
◇◇◇
これは随分後に皇帝陛下に聞いたのだが、皇帝陛下はヴィクリートと私の婚姻を許可する気など本当は無かったそうだ。
「当たり前であろう? ヴィクリートの奴血迷いおって、と思っておったよ」
それを聞いて私は頬が引き攣った訳だけどまぁ、当たり前よね。庶民と次期公爵の結婚など普通はあり得ない。皇帝陛下にしてみれば、ヴィクリート個人の我儘で帝国の身分制度を混乱させるような事は認められる訳がないのだ。
「だがな。其方を見て、高貴なる者に必要なのは、自分の責任を自覚する事だと気が付いたのだ。其方はあの時点で公妃になって責任を負う覚悟が出来ておった。それは稀有な事だ」
だから血筋を度外視して私とヴィクリートの結婚を認めたのだそうだ。私は首を傾げる。
「魔力の点についてはどうお考えだったのですか?」
あの後私は、魔力が無い事で散々苦労することになった訳だが、皇帝陛下としてはその辺りも考慮すべきだったのでは無いかしら。
「其方とヴィクリートが苦労するのは分かっていたが、其方ならなんとか出来ると信じておったよ。ま、苦労するのは私では無いしな」
……まぁ、そうね。なんとかなった事はなったのだから陛下のお見立ては間違っていなかったわね、
「其方をヴィクリートと結婚させた事は、結果的には帝国の利益になったであろう? 私の目に狂いはなかった」
……色々偶然も重なった結果オーライな出来事が重なっての話なんですけどね。
「そうでございますね。流石は陛下」
私がいろんな皮肉を込めて陛下に言うと、皇帝陛下はあの日と同じように声を上げてお笑いになったのだった。
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