第7話

というわけで教室来たけど……。

「先輩、もう戻った方がいい気がするんですけど……」

「そうだよなぁ、戻ろっかなぁ……」

なぜかバスケ部のミーティングがまさに今、私の教室で行われている。……なんでこーゆーときに???

あ、待って、壮良くんに気付かれてしまった……。


「どうした?さち」

「……いや、ちょっと忘れ物しちゃって……」

「じゃあ取っていいよ、入って」

「ありがとう……」


――5分後……

壮良くんに会釈しまくって教室を出る。あー、焦った……。でもまあノート取れたしいっか。

「先輩、私、分かっちゃいましたよ」

「えっ?」

「もしかしてもしかして……先輩、あの人のこと好きなんですか!?!?!?」

「……っ!!!ちょっ!声でかいって!!」

「あ、すみません……。私、人の恋愛話大好きなので、つい……」

梨花もか……。華といい紗奈といい桃香といい……。そんな私の恋愛事情そんな興味あるの?

「もしかして先輩、付き合ってたりするんです、か……?」

「……まっ……まあ……ね」

「えー!!!まじですか!!!私のさち先輩がー!!!」

「なになに、そんなに好きなの私の事」

「好きです!いや大好きです!!!らぶ×無限です!!!」

「まじかありがと……」

らぶ×無限って……。まあ、後輩に愛されてるしいっか☆

てかそんな私分かりやすい?顔に出るのかな?それとも態度?


――最終下校時刻の部室にて

「もう帰る時間だから、1年生、昨日教えたやつ覚えてる?」

『はい!』

「よし、いい返事だ。気を付けて帰ってくれるかな?」

『いいともー!』

「さよなら!」

『さよなら!』

「全員変身!」

『シャキーン!』

「さよなら!」

『さよなら!』

「よし、じゃー帰ろー!」

『はーい!』

ちなみにこの変な挨拶みたいの(気を付けて帰ってくれるかな?からのやつ)は我が演劇部に伝わる伝統的な(?)儀式なんだよね。私もいつからあるのか分かんないけど。『シャキーン!』ってとこはみんな自由な決めポーズしてる。みんなの個性が出ますなぁ。ちなみに、私は我が最推しの柏田あいな様の厨二病ポーズをいつもしている。

「さち部長!一緒に帰りましょ!」

「いいよー桃香。一緒に帰ろ」

「やったぁ!じゃああの2人に見つかんないうちに早くいきま……」

「ちょっと桃香!抜け駆けとかずるいよ!!!」

「そーだそーだー!!!」

「うわぁ見つかったぁ!今日は私がさち先輩と一緒に帰るの!早く行きましょ先輩!!」

「うおっ?!ごめーん梨花!紗奈!また明日ねー!」

「うわー!我が愛しの部長ー!!!また明日ですぴえーん!!!」

「また明日会いましょうねー!!!」


さっきのは日常茶飯事なので、慣れに慣れまくってる。……まあでも、私のことを好いてくれるのは嬉しいこと、なんだけどね。

「いやぁ、こうしてさち先輩と2人で帰れるなんて夢のようです……!」

「夢のようって……。言ってくれればいつでも一緒に帰るよ?あ、でも、あの2人が黙ってないか……」

「そうなんですよね……。あの……折り入ってご相談があるんですけど……」

あの気が強い桃花から相談?!珍しいこともあるもんだなぁ……。

「いいよ。どうした?」

「……先輩、先輩がいなくなったら私は部長になるわけじゃないですか……」

「そうだね」

いきなりどうしたんだろ。まだ4月なのに。

「……私、部長になるの、怖いです……。先輩がいてくれるから今の演劇部が成り立ってるのに……。私、あんな人数をまとめるのは……」

「何急に弱気になってるのさ!まだ時間はあるし、私の背中を見てよく学ぶといいよ」

なんか偉そうなこと言っちゃったけど、部員を引っ張っていくのが部長の使命だしね。頑張らないと。

「先輩……!さち先輩をお手本に私、頑張ります!私、一生先輩に着いていきます!!」

「はははっ。でも、まだまだ私はお手本になれるレベルじゃない。だから、桃香のお手本になれるように、私も頑張るよ」

「もう先輩は私のお手本だし、憧れですよ。先輩は演技がすごい上手じゃないですか!脚本書くのも上手いし……。どこからその才能が溢れ出ているのでしょうか!」

すごい熱量だ……。私に興味を持ってくれるのは嬉しいけどね。

「そんなことないよ。桃香の方が演技上手いし、尊敬してるよ」

「いえいえ!さち先輩の方か上手いですよ!……でも、そんなことを言っていただけるなんて、私感激です……!」

「感激って……。……絶対、私よりいい役者になりなよ」

「はい!いつか、さち先輩を超えてみせます!」

やっぱり桃香は、桃香だなぁ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る