第6話

演劇部がこんなに多い一年生を抱えることになるとは……。私、陽キャっちゃー陽キャだけど……コミュ障なんだよね……。ちっさい頃はコミュ力ありまくりだったのになぁ……あの時のコミュ力はどこぞへ……。

「おはよ、桐谷」

「あ、おはよ、神楽くん」

リア充になったんだし、下の名前で呼んでみよっかな……?

「あの、さ、」

「ん?」

「そっ……」

……緊張するー!!!うわ、いきなりとか無理……!

「……さち」

「……えっ?!」

え?!……先を、越された……?めっちゃ顔赤い、神楽くん……。

「……これからさ、下の名前で呼んでいい?……俺の名前も下の名前で呼んでほしい……ダメ、か?」

……反則だろこの顔はっ……!可愛すぎる……!

「……」

……かっ、可愛い……!

「……いいよ……そっ、壮良……くん」

「……!」

やばい、可愛い……だけじゃない、かっこかわいい……。めっちゃ顔赤いじゃん!超可愛いし仕草がかっこよすぎる……!

「……顔赤いぞ」

「……壮良くん……もね」


「何よ、顔赤くしちゃってさ。付き合ってんの?あの2人」

「見れば分かるじゃん、付き合ってんだよ神楽とさち」

「はぁ?!壮良くんは私の……」

「沙耶、もうそういうのやめたら?」

「……え?」

「人の恋愛をけなしたり否定したりするの、よくないよ」

「……あんたに、何が分かるのさ」



――放課後……


「さーちせーんぱーい!」

あれ、なんでいるんだ?いつも来ないのに……。

「どしたの?紗奈」

この子は花柳紗奈。二年生の後輩。コミュ障だが、仲良くなると結構明るい子。まあ、私と性格がよく似てる子だ。

「一緒に部活、行きませんか?」

「え、どしたの?……あの2人と喧嘩でもしちゃった?」

「そんなことないです!ただ……」

「ただ?」

「勉強を教えてほしくて……。でも、先輩も受験生ですもんね、ダメですよね……」

「全然大丈夫だよ!今はまだ余裕あるし」

「そうですか!じゃあ今週の土曜の午後って大丈夫ですか……?」

「土曜の午後……か……」

土曜の午後は壮良くんとの初デート、なんだよなぁ……。

「あ、何か予定あるんだったら別の日で大丈夫ですから!私なんかに時間割いてくださるだけで私は幸せなので!」

「……そっか……じゃあその次の日、日曜はどう?」

「空いてますよ!一日中!」

「じゃあ、日曜にしよっか……朝から夕方までやる?」

「いいですよ!どんと来いです!」

「了解!」

……あれ、壮良くんこっち来る……?

「……さち」

「……ん?」

……はっ?!なんで耳元に来んの?!

「……また明日、部活頑張れよ」

「……壮良くん、もね。……また明日」

ま、まじか……メンタル意外と強いんだ……。しかも耳元で言ってくるとか……攻めてくんなぁ……。

「先輩……顔、真っ赤ですよ!」

「えっ?!ま、まじ、か……?」

「もしかして……先輩、リア充なんですか?!」

「しぃー!そんなでかい声で言うなぁー!!」

「すみませんって……。それで?どうなんです?」

「……そうだよ、リア充だよ」

「おー!流石です、先輩!いつも私の先を行っていらっしゃる……」

「そんな、大袈裟な……」

「大袈裟じゃないですよ!流石部長!」

「え、えぇ……」

恥ずかしいなぁ、もう……。

「っていうか、なんでわざわざこっち来てくれたの?」

「だって、さち先輩にお願いごとしようとしたら、あの2人が黙ってないですもん」

「あー……確かに。この前も勉強教えてほしいって紗奈が私に言ったとき、あの2人が『紗奈ずるいー!』ってずっと言ってたもんね……」

「そうなんですよー。だからこうして来た、という訳です」

「納得だわ……」



――部室にて……


「おはようございます!」

「おはよー」

「おっはー」

「あれ、今おはようじゃなくないですか?」

あ、そっか、一年生になんも教えてないんだった……。

「あとで一年生揃ったら色々言うからちょっと待ってて」

「はい!わかりました!」

「あっ、あの……さち……先輩」

「ん?どしたの?静香」

「私が演劇部に入って、よかったのでしょうか……」

「よかったに決まってんじゃん!近所の知り合いが入ってくれたとか超心強い!」

「……そう、ですか……?あ、ありがとう、ございます……」

「今日一緒に帰らない?」

「えっ?……いいんですか?」

「もち!」

「えー!ずるいです!私も一緒に帰りましょうよせんぱーい!」

「私も私もー!」

……まーた始まった……。

「桃香も梨花も、分かったから……」

『やったー!』

「ごめんね、なんか……」

「いえ……!大丈夫です……」


ガラガラガラ……


「先生!おはようございます!」

『おはようございます!』

「おはよう、一年生は揃った?」

「あと3人です」

「了解」

「先生!昨日部長がすごいことおっしゃってたんですよ!」

ちょ、紗奈???

「え、何々?なんて言ってたの?」

「『同じ台詞、同じ動き、同じ心……。こんなことは時間を戻す以外にない』って!」

「恥ずかしいって〜……」

「名言じゃん!流石部長!」

「いやいや、事実言っただけですから……」

「何遠慮してんの!いいことじゃない!」

「え、えぇ……」


――5分後……


「すみません!遅くなっちゃって……」

「大丈夫よ!美結ちゃんと優來ちゃんの行方知ってる?」

「美結と優來はちょっと今日学校来てないです……」

「そうなのね……。おっけ!じゃあ揃ったところで、昨日言い忘れたこと言うからちゃんと聞いてね!」

『はーい!』

小学生かっ。まあ、ついこの間まで小学生だったしね。

「演劇の挨拶はいつでも『おはようございます』で、終わったときは『お疲れ様です』だから、それを徹底してね!」

「先輩!廊下とかですれ違ったときもおはようございますですか?」

「そうそう!飲み込みが早くて助かるよ。でも他人の目が気になる時は、こんにちはでもいいよ」

「分かりました!ありがとうございます」

よし、じゃあ基礎練だな。こんな大人数の1年生に教えられっかなぁ……。


――基礎練終わり

「はいっ、これで基礎練終わりー!じゃあうがいしてきてー。2年生水道連れてってあげてー」

『はい!さち部長!!!』

「よし、いい返事だ」

……そういえば部活のノートどこ行ったんだろ。基礎練メニューとか書いてあるのに……。教室置いてきたかなぁ……。とりま教室行ってみるかぁ……。

「さち先輩!早く行きましょうよー」

「ちょっと教室に忘れ物した疑惑あるから教室行ってから行くわー」

「えーまじですかぁ……。じゃあついて行きますよ!……いいですか?」

「いいよ!一緒行こ!」

「やったぁ!さち先輩とデートだぁ……!」

「デートっていうほどじゃないでしょ。じゃあ行くよ、桃香」

「はい!先輩!」

……可愛いやつめ……。

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