第2-2話(番外編)

──数ヶ月前の3年生を送る会にて


私はそのとき、先輩(前の部長)に追い詰められていた。

先輩たちまじで怖いんだよね……。一応陽キャなはずなんだけどなぁ私……。って関係ないか。

「さち、あんたがこの演劇部を背負っていくんだからな。その覚悟があんたにある?」

「……あります」

「うちらが受け継いできた伝統を守るんだよ。分かってる?」

「……はい」

「……そんな気弱な感じで部長なんか務まるの?ほんっと変わらないよね。1年のときからさ。成長なし」

ちなみに私は年上の人と話すのがめっちゃ苦手なんだよね。だから気弱な感じになっちゃうのかなぁ……。しかもこの性格も変われなかった......。いつになったら変わるんだろ、私。

「……部長になったからには、頑張ります。いつか、先輩に認めてもらえるような……そんな部長に、なってみせます」

「あっそ。口だけならなんとでも言えるよね。またどうせ口だけなんでしょ?」

またってなんだまたって。常習犯みたいじゃん。

「夏の大会のときの受付のときだってさ……」


──夏の大会にて


受付とかできないんだけど……。人と話せないし、部長には怒られるし……。もうどうすればいいのさ……。

「おいさち!受付ちゃんとやれよ」

「すっ、すみません……」

「うちはただでさえ人少ないんだからちゃんとやれよまじ」

「……すみません」

「まったく、後輩とはあんなにめっちゃ喋ってんのに、うちら先輩とは全然喋れないとか、まじで意味わかんないんだけど?ねえ」

「……すみません……」

部長、怖い……!もう、嫌だ……っ!

「何泣いてんだよさち。うちが泣かせたみたいになってんじゃんかよ。まじふざけてんじゃねーよ」

「……すみません……!」

「はあ……。泣いたり謝ったりすれば許されると思ってんの?そんな甘くないからな」

「……」

「黙ってても許されないからな?数ヶ月後、お前はうちの部長っていう職を継ぐんだよ?そういう覚悟はできてんの?なあ?......おい」

何か言わなきゃ……えっと……えっと……!

「……はい。……部長になるからには……後輩たちをまとめて、手本になれるように……技術を磨いて頑張ります……」

「ほんとかよ。前もそんなこと言ってたよな?でもさぁ、そんな手本になれるような演技じゃねーぞ?全然」

「それは……自分でも分かってます……。でも……」

「でももくそもねーんだよまじでさ。……もう邪魔だ、後輩たちと他校の劇でも見てろ。さあ行った行った」

「……はい」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る