第2-3話(番外編)

逃げてきちゃった……。建物の外に出ちゃったけどいいのかなぁ……。……そんなことより早く涙を止めないと……。って思うほど涙が出てくるんだよなぁ……っ!

「あ、先輩!いたー!」

……!我が後輩、桃花……!

「来てくれたんだね……!」

「先輩ー!私先輩が心配で心配で……!さっきの見てたんですけど、怖くて足がすくんじゃって……。ほんとにいつもいつも助けられなくてすみません!」

「……いいんだよ。桃花がいてくれるだけで心強いから……」

「ほんとにお役に立てなくて……。いつか、先輩のお役に立ちたいです……!」

「もう役に立ってるよ。こうやって、私を追いかけてきてくれて、私は嬉しい」

「先輩……!大好きです!!!」

「うわっ!いきなり抱きつかないでよ」

「えへへ。でも、先輩、笑ってる。笑ってる顔、可愛いですよっ!」

「何それ~」

ほんとに、優しいなぁ……。私はいい後輩を持ったよ……!

「あらぁ、さちちゃんに、桃花ちゃん。こんなところで何をしているのかしら?」

……げっ、副部長……。今ので一気に涙が引っ込んだ。

「そっ、それは……」

なんて言おう……。とりあえずあれかな。えっと……。

「副部長こそ、こんなところで何を?」

えっ、ちょっ、桃花?!何言ってるの桃花?!相手は副部長だよ?大丈夫かなぁ……。

「私は外の空気を吸いに来ただけよ。まあそんなことはどうでもよくて……あ、そういえば桃花ちゃんは自販機に飲み物を買いに出たのよね」

「そうです」

「じゃあ、さちちゃんは?」

「……」

「何?」

「……」

どうしよどうしよ……!なんて言えばいいの?私も自販機に飲み物買いにきたって言う……?でもパクったみたいに思われるのも嫌だし……。あーもうどうしよう……!

「さち先輩も自販機に飲み物を買いにきたんです。さっきたまたまここで会ったんです」

「そうなの?桃花ちゃんが言うんなら間違いないわね。ところで、自販機の場所は分かる?」

「あ、今から行くところです」

「そうなのね。できるだけ早く戻ってくるのよー」

「はーい」

はあ、助かったー……。桃花はやっぱり信頼されてるなぁ……。私と違って。同学年以下とは普通に話せるのに、なんで先輩とかは無理なんだろ……。コミュ障……?先輩に対する拒否反応……?よく分かんないけど……。

「先輩!副部長いなくなったのでもう大丈夫ですよ」

「……ありがとう、桃花」

……てかなんで桃花は私のことこんな気にしてくれるんだろ……。それが不思議で不思議でしょうがない……。

「……ねぇ、桃花はなんで私のこと、こんなに気にしてくれるの……?こんな役立たずのダメ人間なのに……」

「先輩はダメ人間なんかじゃありません!先輩は優しいですし、演技も上手いし……!」

「そんなことない……!私は何も出来ないし、先輩にも信用してもらえない……。こんな人いたらみんな嫌でしょ……?だから、この大会終わったらやめたいと思って……」

「そんな簡単にやめたいとか言わないでくださいよ……!」

「えっ……?桃花……?」

なっ……なんで泣いてるの……?私そんな悪いことでも言った……?

「先輩は……私の憧れなんです!」

「……えっ?」

「私は……先輩の演技も、人柄も……全部、ぜーんぶ!大好きで……憧れなんです……!」

「桃花……」

「他の1年生もそう思ってるんです……。みんな先輩のことが大好きなんです……!」

「そんなこと思ってくれてんだ……。でも、私と関わらない方が身のためなんじゃない……?」

「何を言ってるんですか!!さち先輩は私たち1年生の憧れなんです!だから……!」

私が、1年生の……憧れ……?

「そんな簡単に……やめないでください……」

桃花……!

「……ごめん……ごめん……!……やっぱり、やめない……!私だって、桃花が大好きだし……。もう少し……もう少しの辛抱で先輩達から解放されるし……。後輩たちとももっと……仲良くなりたい……!」

「……先輩……!うぅ……!大好きですー!!!!」

「ありがとう……桃花……!」


──3送会にて(2-2話の最初の場面に戻る)


「……もううちは卒業したしもう干渉しないけどさ……まあ、副部長とせいぜい頑張りなさいよね」

「……はい」


──そして現在


あのときは怖かったなぁ……。まあ、もう先輩に怯えることもないしね。

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