深夜

 やがて。

「……いやじゃなかったです」

 ぽつり、クリエはアンペルに言う。

「え?」

 まだ星を見ていたアンペルが小声で返す。

「頭、なでられるの」

「……」

「悲しいときに慰められるのはいやじゃないです。アンペル、あなたはそうではないですか?」

 アンペルは困ったように寝返りを打ってクリエに背を向けると、聞こえないように小声で言った。

「なんだか調子が狂うなぁ……」

「それだけです。アンペル、今日はありがとう。そして、すみませんでした」

「……」

 アンペルはクリエの言葉に寝たふりをきめこんだ。


深夜。


クリエは目を覚ましていた。基本、このような短時間で機能を休止させるようなことはない。

 そしてクリエは考えていた。アンペルから聞いた話のことを。

(人と人とが殺し合う……それは本当でしょうか?)

 そしてそっと毛布から手を伸ばし自分の頭に触れる。

(……)

 温かかった手。マスターと同じ、熱を持った手、こんな温かい手を持った人間が自ら殺し合いをするのだろうか。クリエには信じられなかった。

(確かめなくてはいけません)

(なぜ人間が己の同胞を殺さなくてはならないのかを)

 それから……。星のことも。

 星のことを思うとクリエの心は知らずときめいた。

 星。月。星々。あんなきれいなものたちがいつも自分の頭上にきらめいていたなんて知らなかっし、そしてこれは自由を手に入れて初めて知った、自分にとってよいことの始まりのようだとクリエは思った。

 そして星と言えば。

(マスターは星々の世界に旅立つといっていました) 

(あのきらめきのどこかにマスターはいるのでしょうか?)

 クリエは思い、そっと胸に手を当てた。

(叶うなら、また会いたいです……マスタ……。そのためなら、自由も悪くないことなのかもしれません………)

 そして気づく。

(そういえば、天は夜の間も廻っているのですね)

 クリエは仰向けになり星たちのきらめく世界に心をはせた。朝まで、心をはせていた。

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