戦火

 爆発音が遠くでした。次いでゆっくりと隊をなして進軍していく軍勢めがけて火の矢が空を覆うように落ちてきた。魔術的防御が施された盾でそれを防ぐと、第二射の前に、栗色の髪の兵士アンペルは重い盾を捨てると敵の砦に向かって駆け出した。背の高いすらりとした体で敵陣との距離を詰めていく。

 そして敵陣めがけて駆け出したのは、兵士アンペルだけではなかった。二百、三百の兵士たちが皆気勢をあげながら、敵陣へと切り込んでいった。

 ここは戦場。

 北方の大国ノイラント王国と、西方に覇を唱えるベルゼビュート皇国との戦場だ。そしてアンペルはノイラント側の一兵士だった。

 ヒュンヒュン!

 直線的に放たれる光の槍が猛進するノイラントの兵士の幾人かを突き刺していく。ノイラントの側の後詰めからも次々と氷の槍がでて敵陣に向かって飛んでいった。その槍の間をアンペルたちは突撃していく。爆発音。ベルゼビュート側の魔術師の爆発魔法。地面がえぐれ、兵士たちの進軍を阻む。アンペルたち幾人かのノイラント兵士は爆発でできた穴の縁にたどり着くとそこにへばりついた。そこからまた隙を突いて、ベルゼビュートの陣を伺う構え。そこにそうはさせまいと第二撃。ベルゼビュート側の爆発魔法が炸裂し、アンペルたちを吹き飛ばす。そして兵士アンペルはその衝撃の中で気を失った――――。 


 ……。

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