プロローグ:2

 こうして創造主は新たなる新天地を目指して旅立っていった。クリエを一人後に残して。

 そしてそのクリエはまだ完全に創造主の言葉に背を押されてしまってしかたなく承諾の意思を示してしまってはいたが、まだ完全に納得はしていなかった。

「自由に生きろと言われても、本当、わかりません……」

「そもそも私は生きているのでしょうか?」

 一人言葉を自分に投げかける。生きるという意味は知っている。自分が生きていると呼ばれる状態なのは知っている。けれど自分にその実感はなかった。

「……やっぱりよくわかりません」

 創造主がいたところを見るクリエ。そこにはもう何の痕跡もない。それがクリエには寂しくてならない。

「マスター。また、命令してください」

「マスター。つらいです。また、お声を聞かせてください」

「マスター。本当、寂しいです。また、頭を撫でてください」

 創造主がいた空間に向かって言う。それは二度と叶わない願いだ。なぜなら創造者は本当に遠くへ旅立ってしまったのだから。

「困ります……」

「自由に生きろといわれても。困ります。本当本当に困ります」

「本当、困ります……」

 うつむくクリエ。目には涙がにじんでいた。本当にこれからどうすればいいのだろう。クリエにはわからなかった。寂しくて寂しく仕方ない。やがて創造主が座していたところにいることすら寂しくなって、クリエはとぼとぼと当てもなく歩いて行った。

「……」

 歩きながら自由についてクリエは考え続けた。自分が何をすれば良いのか。何をしたいのか。歩き回る。草原、森林、荒野、砂漠、あてもなく。それでも答えは出なかった。

 人と交流することは避けた。それは許されていないと思ったからだ。ただ自分自身で考え続けた。孤独に、数万年も。


「……」

 やがて答えのない自答に疲れ果て、クリエは自らの機能を休眠させることにした。

 都合の良いくぼみを探してクリエは自身の体を横たわると、目を閉じ、考えることなく、ようやくに休らった。永遠、休むつもりだった。永遠休むことは死ぬことと同じだろうか。そんなことが最後、クリエの頭の中をよぎった。


 それから、長い長い時間が流れた。

 

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