第3話 例えば、こんなお仕事しております

『【黒魔術師】様へ。

私、真村仁恵まむらひとえと言います。

昨日、親友の片柳楽初かたなぎらはつに、酷い事を言ってしまい、〔絶交する〕と言われてしましました。でも、初は、小学校からの友達で、本当に、心にもなかったことを言ってしまったんです。私は、同じクラスの盟和務めいわつとむくんがすきで、初にもそう言ったら、初も、盟和くんがすきで…。それで、2人で言い合いになって、つい、〔あんたなんて死んじゃえばいい!!〕と言ってしまったんです…。そうしたら、〔じゃあ、もう絶交だね〕…って…。すきな人は同じでも、友達のままでいたい、それってダメなことでしょうか?』




「ふ~ん…。どう思いますか?イブリーズ」


「そうだな…。でいこう」


「ですね。比較的、簡単なお仕事ですね」




その日の放課後、裏庭でソワソワしている女子が1人、立っていた。


そこへ現れたのが、ピンクのマントと、ウサギのお面をつけた、【黒魔術師】、蒼崖蜜羽だった。


「あなたが、仁恵さん、ですね?」


「!あ!は!はい!!」


「貴女の願いを叶えるべく、お返事の手紙に、一つの呪文を添えてまいりました。この手紙に添えた呪文は、一度しか使えません。あなたが、心から望み、信じられる心を持ち、この呪文を、初さんの前で唱えてください。そうすれば、あなたの願いは叶うでしょう…」


「…本当に、初と…仲直り…できますか?」


仁恵、と名乗った女子は、今にも泣きそうだ。相当、大切な友達だったのだろう…。


「大丈夫です。信じて、唱えるだけです…。では」


そう言うと、蜜羽…いや、【黒魔術師】は、その場を去った。




*****




「こんなところに呼び出して何の用?」


初は、怒った様子で、仁恵を見ようともしない。仁恵は、【黒魔術師】の言葉が段々信じられなくなってくる…と言うより、自分の中の、今まで親友であった…と言う確信が、薄れていた。


そんな状況下で、仁恵がまた初と仲直りできる方法は、一つしかなかった。そして、思いっきり、叫んだ。


笑続リクタスセンプラ!!」


ドクンッ!!


初の鼓動が、仁恵にさえ聞こえた気がした。


「ふ…ふふふふ…あははははっ!!私、何怒ってたんだろう?すきな人が同じでも、友情は成立するよね!2人で切磋琢磨して行けばいいんだし?もう!ごめんね!仁恵!教室、戻ろ!授業、始まっちゃう!!……仁恵?」


「…か…った…」


「へ?」


「良かった…。友達いに…戻れて…。ありがとう…初…」



そう言いながら、心の中では、


『ありがとうございました!!【黒魔術師】様!!』


と叫ぶ、仁恵だった。



「上手く行ったようですね。あのお二人」


「そうだな。まぁ、あのくらい、一族最強の魔術力を持つ蜜羽なら、当然だがな…」


「まぁ、ありがとう。イーグルズ。あなたも、もうかれこれ300年、この蒼崖家の仕事に励んでくれていますが、そのイーグルスにお褒め頂けるとは、わたしも嬉しいです。これからも、頑張らなくてはなりませんんね」


「まぁ、くだらない依頼も、数少なくはないがな…。昨日の朝の嘉虹弥とか言う女も本当に勉強の術を頼みに来るのか?」


「…はい…。彼女は恐らく…イエ、確実に本気で、楽をしようとしています。お仕置きせねばなりませんね」


「だが、蒼崖家では、悪事に【黒魔術師】を使うのは禁止だろう?どうするんだ」


「簡単です。本当に、頑張ってもらうだけですので…」


そう言うと、蜜羽はにっこり、微笑んだ。

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