1.神様に選ばれた私

まず、病気を発症したことについて、忘れてはならないことがあります。私が病気を発症する前に「ひとりこっくりさん」をしていたことがありました。


これをし始めたのはとあることが知りたかったからです。

とあることとは「母親の病気は治るのか?」ということです。私は医者にそれを問わず、何の力か分からないものにすがってました。まずそこからおかしいと、今なら言えますが。


1日1回の制限を付け、ひとりこっくりさんを続けた私でしたが、ついには左手が勝手に文字を書き続けるようになり、脳内には声が聴こえるようになりました。


曰く、「自分は西の方からやってきた狐。お前を食うために来た」とのこと。

そこで不安になってきたので、「ひとりこっくりさん」はその時点で辞めました。


ですが、幻聴が聴こえるがままに過ごしていたら、「お前の中におれの子どもがいる」と言い出しました。「マジかよ……」と言ったところ、「4匹いる」とのことでした。

もちろん今じゃ妊娠なんてしようがなかったとわかっているのですが、当時は幻聴の言葉を信じてしまっていたのでした。


いつの間にか出産したのか、「子どもたち」は話しかけてくるようになった。今ははっきりと思い出せないが、それぞれ性格が違ったと思います。


しかし、妄想との蜜月は突然終わりました。

すべての妄想の人物は、突然私に牙をむいてきたのです。

「お前は死ななくちゃならない」「死ね」「死ね」と、頭の中に声が響いている状態が続き、夜寝ることができなくなりました。


いつだったか、交霊ができる(と勘違いした)私は、「神様に選ばれたんだ」と思っていました。しかし、違いました。神様があずかり知らないところで、私の脳は私のせいで”壊れてしまった”のだと、今ならそう考えられます。


そして、その日もいつの間にか夜になっていました。

眠ろうにも、眠ったら瞼の裏が「シね」と言ってくる始末。

眠ることも諦め、寝具の上で胡坐をかいて瞑想をしていました。

そうしたら、私の右隣に二人分の人影が現れた。


「あ……んっ……!」

なんと、男の鍛えられた肉体の中心部は、女に蜜が漏れている所にあてがわれていたのだ。


「な……なに……?」

私は(何とも言えない顔をしてるんだろうなー)と思いながら彼らに問う。

「あっ、いや、ああ、っ!?」

獣のような体の男性が、こともなげに女の印に自らの尖りを打ち付ける。

「もうひとり、いやふたりか……、あんたの中に3人人格がいるってことさ」

「そうなの?で……この子は?」

さんざん目の前でセックスしてくれるこの馬鹿はいったい誰だろう。

「この痴れ者ちゃんは、好きな人と繋がりたいっていう欲求が強すぎるんだなぁ」

こんなのが私の妄想から出たのかと恥ずかしくもあり……だが、私にも「好きな人と繋がりたい」という欲求があるのだと知ってある意味ホッとはしたかもしれない。


「あ、あぁぁ……」

先程まで濃厚なセックス(私も知らない体位使っていただけで)をしていた妙につやつやなあの子は、地べたに座っている兄さん(体育系のガチムチ体系、私は嫌いではない)に寄りかかって座った。


「外の世界だと……人間世界だと、『もっと濃厚なセックスしたい』なんて、言えないのよね……。あなたはどちらかといえば、『性を隠したい』みたいだし」

「はは……、まあ間違いじゃないかな、でも、私と彼で触れあうことができたなら……、私もあんたみたいにされたくは、ある」


「ん……?」私はおかしなことに気づいた、

「なんで私を構成してる人たちの中に、男がいるのよ?」

「ああ、言ってなかったね。個々の世界だと性別なんて入れ替えられるんだよ、役回りが来るとさ」

「そんなご都合主義、ありますK「あんたは自分が男になったら、女の自分を犯したいって言ってたでしょうが」

た、確かにそんなことも言ったかもですが……。


「あたしみたいに欲深く生きなよ」

”彼女”は私に顔を近づけてくる。

「いや……、それはいやかな……」


「ああ、今寝たらもう一人のあたしがあんたの家族皆殺しするらしいわ」

「そんな!?」

なんとか目をこすり、コーヒーを飲んでみた。

が、眠い。とてつもなく眠い。

夜だけど、寝てはいけない。

寝ないで家族を守らなければならない。

どうもできない。


ついには私の頭の中に火がつけられた。

「君はもうすぐ死ぬんだ」

頭蓋骨の面を付けた少年が呟く。

死にたくはなかったが、納得してしまった。

そこからは記憶はないけれど、勤め先に電話して救急車を手配していたことは聞いた。

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私に起こったこと 名無しの詩 @nanashi_no_uta

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