第14話
泉くんにおススメ薬草三種を教えて貰った。
オバコとクダミとショウコである。
何処かで訊いた事がある気がすると思ってはいけない。
私の世界でも似たような名前の野草が……と考えそうだったが、気にしたらキリがないと追求したくなる気持ちを切り替えた。
これらは泉くんが教えてくれたおススメ薬草なのであり、この世界の薬草といえばのスタンダードな種で常に買い取りされているとの事だから、確実に買い取って貰える有難い薬草である。
類似性を探してはいけない。今は採取に集中!
比較的安全な場所にも群生して生えている為、常に納品される種類である。
それなのに常時買い取りをして貰えるのは、薬品を作る際に必要なものに大体入っているから大量に必要らしい。だから大量に納品しても値崩れしにくい薬草なのだそう。
戦闘能力の低い子供や女性やお年寄りのお小遣い稼ぎとして有用で、おまけに大量に納品しても値崩れしないとは、私が納品する事によって相場が崩れないか心配してた私には大変有難い薬草である。
かといって、大量に納品する事はこれからも無さそう。
安全安心を優先のギルド最低ランクから上がって下級の魔物でも討伐出来るランクになったら、戦闘能力がある私は魔物を狩って素材を売る方が良さそう。
魔物狩りして街道の安全確保に尽力する方が喜ばれそう。
自分で薬でも作りたくなったら素材集めに精を出すかもしれないけれど、今の所のその予定はない。
アロマオイルは作ってみたいけど、それ関連を商売にする気はないのよね。
個人的に楽しむだけにするつもり。
という事で、取り合えず鑑定スキルをフル回転させて間違いのないように採取しなければ。
♦♢♦
「あ、これ『オバコ』だ。あっちにあるのが『ショウコ』かな。あー! マシロそれ踏んじゃダメ! 『クダミ』だから!」
マシロが「あ、やば」っとでも言ってるような表情で踏んでいた片足を持ち上げこちらを見上げている。
耳がへにょっと垂れてるところが「あ、可愛い」となってしまうが、ダメな事はダメなのである。
「踏んだらダメよ。マシロの重さで踏んじゃったらぺちゃんこになって素材として使えなくなっちゃうよ。足元には気を付けてね」
「くぅん……」
うんうん、反省してください。
一見雑草にしか見えないが、鑑定するとちゃんと薬草であった。
鑑定と口に出さずとも、頭の中で鑑定と思うだけで鑑定出来るのは楽ちんである。
鑑定して採取してアイテムボックスに入れるの繰り返し。
後でちゃんと種類別に纏めよう。
マシロが私のうしろを雛鳥のように付いてくるので、薬草を踏んづけ事件が多発していた。
「遊んでていいよ。ただし私の目の届く範囲に居てね」と伝えた所、ずっと後ろにいる。
根を傷つけないように周囲の土ごと持ち上げてから根に付着している土をそっと払う。
丁寧な作業が大切。
マシロには出来ない作業なので遊んでいて欲しいのだけど。
「しょうがないなぁ」
アイテムボックスにある魔物の骨でも渡して、それをカミカミして暇つぶしして貰おう。
「はい、マシロ」
マシロに渡したのは肩辺りが千切れたであろう腕。
昆虫と動物が混ざったような感じの魔物だったらしい。真ん中は肉感的なのに挟んだサイドは甲殻っぽいものに覆われている。
「クゥン?」
マシロが首を傾げて「なにこれ?」感を出している。
「マシロの暇つぶしの道具。何の魔物かちょっと分からないけどカミカミして遊んでていいから」
≪マスター、その魔物をお知りになりたいですか?≫
「知らなくて大丈夫! ちょっと気持ち悪い見た目だし……」
≪承知しました。もしお知りになりたい場合はいつでも仰って下さいね。≫
「多分興味持つ事はないだろうけど、ありがとう泉くん」
不気味な腕を目の前に差し出すと、マシロはパクリと口にくわえる。
「カミカミして遊んでおくんだよ」
マシロに背を向け、先ほどの続きに戻る。
周囲の土を柔らかくして、根が千切れないように……
バキバキッ、バキンッ。
ガリガリ、ゴキッ。
砕いたり折ったりするような音が聴こえてきて、音がした方を振り返る。
さっきマシロに渡した腕がバッキバキに砕かれて地面に――――
「マシロ、カミカミしてっていったのに」
「ガウ?」
「虫っぽいの混ざってたのに食べちゃってお腹壊したりしない?」
「ガウ!」
≪マスター、神狼族は雑食ですのでご安心下さい。狩りを行いその肉を食す事が多いそうです。肉食寄りではありますね。≫
「マシロお肉が好きだもんね」
「ガウッ!」
地面に散らばった欠片も綺麗に食べて片付けたマシロが頭を下げて撫でてを催促してきたので、頭を撫でてあげる。
「綺麗にしてエライねー、マシロ」
「クゥン」
嬉しそうに大きな尻尾が揺れた。
散らばったままのはちょっと気持ち悪かったから片付けてくれて助かった。
そんなものがうじゃうじゃアイテムボックスに入ってると思うと気持ち悪い。
早く街に行って売ってしまおうと思うのだった。
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