第13話
魔窟の森を抜けると広い平地に出た。
小さな村がちらほらと点在しているのが見える。
高い上空を飛んでいる為、平地の遠くまでもよく見通せた。
竜の視力は異常に高いのだろう。
瞳を眇めて対象を見てみると、村に住む人の詳細も鮮明に見る事が出来るようだ。
ズーム機能付きな視力って凄すぎるでしょう。
何か楽しくなってきた!
文明的にどれくらい進化しているのだろうと、目に付いた村を興味を持って眺めていると、男性の村人の服装は白い生成りのシャツにサスペンダーで長ズボンを吊ったスタイルで、女性もシャツと膝下より長めのロングスカートというスタイルだ。
規模の小さい村でも服装がしっかりしている。
という事は規模の大きい街だともっとオシャレしているかもしれない。
これは服装も楽しむ事が出来そうだと、街へ行く楽しみが増えた。
街の近くに到着するまでの間、通り過ぎる村々もチェックしてみる。
私が目指している街に距離が近づく程、建物も村の規模もグレードが上がっている気がする。
大きな街へ近い場所にある村の方が発展し易いのはどこも一緒なのだろう。
物流が整っている場所は人が集まるし、人が集まる所には仕事もある。
いい循環が定着すれば更に上のランクを目指すので、暮らしは豊かになっていくのだ。
勿論、人が多くなれば犯罪率とかも上がるので良い事ばかりではない。
そこはその地を治める領主や村長のお仕事だろうけど、見てきた村での人達の顔に暗い雰囲気は無かったから、良い環境なのだろう。
(あ、あの先に見えるたくさんの建物が見えるのが、目指してる街?)
≪はい、マスター。シンダルという街になります。≫
(シンダルね! 楽器の名前っぽいから覚えやすいかも)
≪マスターの姿は大変目立ちますので、そろそろ降りて人化された方が宜しいかと思います。≫
(あ、やば。そうだったね)
慌てて滑空し降り立つと、マシロが私の背から降りるのを確認してから人化する。
「はぁー、うっかりしてたわ。ありがとう泉くん」
≪どういたしまして。マスター≫
とんでもない巨躯のドラゴンを万が一でも見られたら大パニック間違いなしだよ。
討伐隊とか組まれるのも嫌だし。
「マシロ、此処からは身体強化かけて駆けていこうか」
「ガウッ!」
ずっと私の背中に乗っていて運動不足を感じていたのか、マシロがとってもご機嫌な鳴き声で返事をする。
「それじゃ……」
≪マスター、身体強化で突っ走りこの場を駆け抜けるだけで通り過ぎるより、売れるような物を採取しながらゆっくり向かった方がいいのではないですか?≫
「あ、そういえばそうだね」
≪マスターはお金も所持しておりませんので、先立つものは必要かと。ちなみに、冒険者ギルドに登録するにも登録料が掛かります。街へ入るには身分証が必要となります。身分証発行には発行料が掛かります。≫
「えっ、そうなの!? あー、でも、何となく思い出してきた。異世界物語とかでもそんな描写あったかも……」
毛玉モドキはそこら辺を一切考慮してなかったな。
その場で頭を抱えてしまう。
マシロが「くぅん?」と鳴いて、私の手をペロリと舐めてくれた。
「マシロはいい子ね。毛玉モドキと同じ白だとは信じられないくらいのいい子。毛玉モドキは腹の中と毛の色を間違えたに違いない」
何もかも適当な腹黒毛玉め。
「じゃあ金策の為に採取しながらゆっくり進もうか」
≪その方がいいかと思います。身分証は既に所持されていますので、冒険者ギルドに登録する際の登録料分と、宿に泊まる予定であれば宿泊代が必要です。≫
泉くんの説明が続く。
≪マシロも一緒に泊まる場合も別途料金が掛かるようです。色々話しましたが、マスターがアイテムボックスに仕舞いこんであるその中でも下級の魔物の素材をひとつふたつ売るだけでも、一週間以上の宿泊も食事も賄えますのでご安心下さい。≫
「泉くん!? それ先に言う事だよ!?」
≪申し訳ありません。ですが採取はした方がいいかと思います。冒険者ギルドには依頼を受けてクエストをこなして報酬を得たりランクを上げるポイントが貰えるパターンと、素材採取のクエストをこなして報酬を得たりランクを上げるポイントを貰うパターンがあります。勿論、ただ素材を売って金銭を得る事も出来ますが、ランクを上げたいのであればクエストを受けて達成する方が後々を考えれば宜しいかと。≫
確かに泉くんの言う通りである。
「あー、そうだよね。それは確かに。冒険者ランク上げたいから、採取クエスト常時ありそうな素材が分かるなら、それらを選んで集めるかー。大量は相場が崩れてそれで生計立ててる人が居たら迷惑かけちゃうから、程ほどの量でさ」
≪常時出ていそうな採取クエストの素材ですね。承知しました。ひとつの素材ではなく様々な種類を少しずつ採取して移動しましょう。≫
街まで採取をしながら移動する事にした。
「ごめんねマシロ、駆け抜けるのは今度ね」
「ガウ!」
マシロは「大丈夫」とでもいうように一声鳴き、キリッとした可愛い表情をしている。
「マシロ、健気っ」思わずギュっと抱きついてナデナデする。
マシロの可愛い成分をたっぷり補給した。
「よーし! 頑張って見つけるぞー! マシロも気になるのがあったら教えてね」
「ガウガウ!」
マシロと一緒に意気揚々と歩き出した。
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