第15話

 魔物が闊歩する世界という事もあって、街に入る前に武装した兵士が何人も配備されている大きな関所があった。

 魔物や賊等を警戒しての事なのだろう。


 関門を通るには関所で色々なチェックがあり、犯罪歴の有無の確認が主らしい。

 所持する身分証カードや各ギルドが発行するギルドカードを出せば、カードを特殊な機械に通すと、そのカードに登録されている人物の経歴が全て確認出来る。


 犯罪歴や犯罪に近いトラブル等を起こしていないかの照合も早く問題がなければスムーズに全てが終わり通れる。

 どちらもない場合は教会で使用する犯罪歴を調べる道具を使用して調べるようだ。

 それらを全て合格出来ても街の中に入る為にはいちいち通行料を支払わないといけないらしい。


 その街に住民登録していれば街を出たり入ったりも無料。

 ただ住民登録はしていないが街に滞在する場合、街の中から出ないのであれば通行料を一度支払うだけでいいけれど、街の外に出たりすると入る度に通行料が掛かる。


 外に出て魔物を狩ってギルドの依頼を消化したり魔物素材を売ったりする場合には出たり入ったりでお金が掛かるのは正直困る。

 そこでギルドカードという訳である。

 ギルドカードを提示して一週間以内に何かの依頼を受けていたり、素材をギルドに売ったりしていると通行料は出たり入ったりの通行料は無料なのである。

 ただし、依頼を受けていなかったり素材をギルドに売っていなかったりすると、ギルドカードによって全て記録されているので、通行料が発生する。

 通行料を支払いたくない人は道中にあるような薬草の素材などをギルドに売って通行料を支払わないで済むようにするという手段もあるが、どちらにしろ一回目に関所を通る際は

 通行料が発生するのだった。


 長々と説明したけど、結局お金が掛かるという事。

 今手持ちにお金等ない私。

 そしてギルドカードもない。

 身分証だってないだろう。だって毛玉モドキに細やかな気配りなんてないだろうから。

 アイテムボックスに何が入ってるのか、やっぱり何も入ってないのか一度チェックした方がいいかもしれない。

 流石に泉くんも私のアイテムボックスに何が入ってるかは知らないみたいだもんね。

 知識の泉を何でも叶えてくれる青い猫型ロボットみたいに考えたらダメなのである。



 通行料や関所等の知識を泉くんか教えて貰いつつ、鑑定スキルを発動させつつ見つけた薬草を採取しつつで、到着したよシンダルに!



「……」

 泉くんや、街というには些か無理あるぽくない? と思った私は間違ってないと思う。

 シンダルへと距離が近付くたびに「あれ? 街?」と繰り返し考えたりしたもんな。


 上空から遥か遠目に見えていた建物だけを視認しただけで、村の時のように住民を見ようと全体的に確認しなかったから、想像の中で街ってこんな感じ的なぽやっとしたイメージだけでここまで来たしね……


 だからね、泉くん。コレは街とは言わないと思うよ?

 それともこの世界の街は魔物が怖いからこんな感じなの?

 だってコレ城郭都市ってヤツでは?


 石材をレンガのように積み上げて壁のようにしたものが街の周囲をぐるりと囲んでいて堅固に防御した都市を城郭都市って呼んでいたはず。

 お城は無さそうだから城郭都市っていうのも変かもしれないけど、要塞感はある。


 私が建物と思ってたのは、この街の中で一番高さのある建物で細長い塔のように見える。

 それがいくつも建ち並んでいるようだ。

 何となくゴシック建築って呼ばれるような建物に見た目が似ている。

 街に入らずに見れるのは高さのある塔っぽい建物だけなので、どんな街並みかは外からは分からない。


 街へ入る為の関所前には、馬車や人が並んでいた。

 左側は馬車だけの受付口みたいでたくさんの馬車や荷馬車が並んでいる。

 右側は人が綺麗に整列して並んでいたので、私もマシロもそちら側に並んだ。


(あ、マシロって街に入れるのかな!? 今更だけど……)

 本当に今更だけどマシロは街に入れるのだろうか。

 もしかして、神狼って魔物の扱いとかじゃないよね……。


 ≪マシロはマスターの眷属になりましたので、街に問題なく入る事が出来ます。≫

(良かったぁ、街が目の前に来るまでそこら辺まったく考えてなかったよ。万が一街に入れないなら街に入るのはマシロを一人にはさせられないから、止めようと思った。問題なくて良かったー)


 まだまだ関所までは長蛇の列が続いている。

 のんびりと待つか。



 前の人がどんどんと関所を通って街の中へ移動している。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る