第6話

 その後、初飛行にも関わらず危なげなく目的地に辿り着き、無事に食と寝床を得ることができた。

 泉くん(スキルの知識の泉)に紹介された場所はたくさんの種類の果実の木が密集している場所で、飽きる事なく色んな果実を食べる事が出来て果実だけでお腹は満腹になった。


 その時に人化スキルも初めて使ってみた。


 だってドラゴンのままで果実食べてたら、食いつくしてしまうような気がして怖かったんだもの。

 そこそこの量の果実を食べた後に、湖に棲む魚たちをたらふく食べたら、ドラゴンの姿のままで食事する事をいけた気がするけど、でも……異世界の魚を生で食べるというのは、何となく抵抗があった。


 異世界に来たという実感はドラゴンの姿で思い知っているけれど、心がこの世界に未だ馴染んでないというか、発展途上国の全く整備されてない水を温室育ちの日本人が飲んで食あたりに遭う……そうなると知識では分かっている癖に飲んでしまうのか!? のような躊躇いがある。


 鑑定スキルを持っているのだから、鑑定して生食がいけるか調べて安全だと判明してから湖の魚を食べるのだったら何も問題なかっただろうけど、情報として太鼓判を押されても、気持ちの問題なのである。


 この世界で過ごすうちに、少しずつ解れていって、やがてはすんなりと受け入れるようになっていくだろうから、それはまた今度チャレンジしてみたい。


 魚は食すつもりはなくとも、湖だけは見に行った。

 他の種族や人族がまだ未踏らしく原始のままの湖は、素晴らしい圧巻の景色だった。

 透明度の高い水質で湖の中が綺麗に見通せる。

 あまりにも素晴らしい景色を前にすると、言葉って出てこないものだと知った。

 魚は食べる予定は今の所ないけれど、この景色を見るためだけに毎日湖に来る事にしたのだった。

 だって、まだ何をするか決めてもないし、基本的にずっと暇だしね。

 魔物がたくさんちょっかいかけてくるけど相手にするつもりはないので、結界とバリアを張って放置するもりだし。


 一番最初に転生で降り立った場所にはおびただしいほどの死骸があって、そこにはたくさんの色も大きさも様々な魔石も大量に転がっていたので、死骸も魔石もひとつ残らずアイテムボックスに収納してある。

 泉くんに訊いたら魔石はいいお値段で売却出来るし、魔物は防具や武器や魔道具や薬品などたくさんの商品の素材に使われるらしくいい値段で売却出来るみたいだ。

 変化や人化という便利スキルもあるようだし、しばらくは森に棲みながら毛玉モドキが一切教えてくれる事のなかったこの世界の情報を泉くんにしっかりと教えて貰ってから町や他の大陸に行こうと思っている。

 ドラゴンの姿は見られて問題ないのか、この世界でどんな存在として認識されているのか等、色々と知ってから行動しないとめんどくさいことになりそうだし。

 今は知識を蓄えて快適な異世界生活を送る為の下準備をする期間だ。






 ♦♢♦♢♦♢




 泉くんに紹介された洞窟は入口も大きかったので、私がドラゴンサイズで洞窟の中に入っていっても洞窟を壊す事は無さそうで、流石泉くん! と思った。


 人間の体はドラゴンの体よりとても脆いと思い、ドラゴンのまま夜を洞窟で明かそうかなと思った。

 今の私は、人間の体といってもエンシェントドラゴンが人化した人間の姿だから脆くないかもしれないけど、そこら辺の検証も追々やってみようとは思う。



 ――――翌日、以外にもスッキリ目覚めた。


 転生してから二日目。

 昨日の食事は果実ばかりだったので、今日はそろそろ別な食べ物が食べてみたい。

 けれど魚はまだ……といった気持ち。


「魚以外に食べれるものって何があるかな……」


 ≪おはようございます、マスター。魚以外ですとマスターのアイテムボックスに大量に収納してある魔物の肉などは如何でしょうか?≫


 ま、魔物の肉……魚以上にハードルが高い気がするけど……。

 泉くんが進めるくらいだから、この世界では普通に食べられているのだろう。


「泉くんおはよう。魔物の肉ね……この世界では魔物の肉は普通に食べられているものなの?」


 ≪肉といえば基本的に魔物の肉を食べています。食肉として動物を飼育している訳ではないようです。動物からは乳を採取してその乳を使って食品を加工したり、また動物の乳をそのまま売ったりしているようです。≫


「なるほど。育てた動物を殺処分して食肉にするのもせつないもんね。代わりの肉として討伐しないとならない魔物の肉なら気持ち的には楽なのかな。」


 ≪なぜそのようなのかはわかりませんが、育てた動物を肉にしてまた育てて肉にしてをするより、自然に発生し続ける魔物を狩って肉を採取する方が手間が少ない為、供給しやすいと考えられているようです。≫


 なるほど。

 そうやって食に関して上手く回ってる世界なんだね。


「ということは……肉を食べたいなら、魔物の肉一択って事か……。」


 上手く回ってるんだろうけど、地球の価値観も持っている私にはハードルの高い話。

 でも、肉を食べずに生活出来る気がしないのも事実。


 異世界物語では魔物肉はよく食べられているし、オークとか豚肉扱いだった。

 ミノタウロスに似た魔物は牛肉扱いだったし。

 解体済みのものであれば、食べられるかもしれない。


 泉くんに説明して貰いながらアイテムボックスにある魔物の死骸から、抵抗なく食べれそうな肉を教えて貰おう。


 あ、その前に――――


 私が持ってるアイテムボックスって時間停止機能とか付いてるんだっけ……?


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