第28話①

あれから家に帰った俺たちだったが、何故か王家の馬車が家の前に来ていた。家の中に入ろうとすると、来ていたナツメが抱き着いてきた。


「お兄様、お久しぶりです。アリス様との婚約は済ませましたか?」

「いや、色々あってそれはまだなんだが…。今日は一体何があって来た?国王様も来てるみたいだけど」

「それが…大変なんです!魔王軍の幹部が復活しました!」

「え?魔王軍の幹部?魔王本人はどうした?」

「復活しませんでした。多分、魔王事態の浄化はレイカ様が完全に遂行したんでしょうけど幹部は倒しきれなかったか一時的に封印していただけだった所為で復活してしまったようです…」

「それで、俺たちに倒すよう依頼しに来たってことか?」

「はい。レイカ様もセリオス様もまだまだ戦えるということで、一家総出で来てもらうことになりそうですけど、よろしいですか?」

「ああ、いいぞ。俺は仮にもナツメの兄貴だ。それに、俺との結婚を免除してくれた借りもあるからな。勇者の息子として、人間で唯一【炎王】を使える者として人類救ってやる」

「頼もしいですね。それでは、まずはお父様のところまで来ていただけませんか?」



俺たちが宮殿を訪れると、前と何ら変わらない国王様の姿があった。


「お久しぶりです、国王様」

「おお、まさかここまで早く来ていただけるとは…。感謝しますぞ」

「そりゃ当たり前ですよ。国の、いや、世界のピンチですからね」

「それで、ナツメからある程度の概要は聞いているか?」

「じゃい、聞きました。魔王本人は復活しなかったのに、魔王軍幹部だけが復活したと。魔王軍幹部にはどんなのがいるんですか?お母様からもあまり深く聞いたことはなかったので、ぜひこの機会に教えてもらえませんか?」

「いいだろう。魔王軍幹部は7人いるが、今回は5人しか復活しなかった。炎獄のサタン、迅雷のベルフェゴール、波濤はとうのレヴィアタン、蟲毒のベルゼブブ、聖魔のルシファーだ」

「それぞれがどのように倒されたかはご存じですか?」

「魔王軍が倒されたのは前代の頃の話だから私は知らぬ。すまないが、勇者様直々にお話しになってもらいたい」


レイカは、俺たちの前に立った。普段はおっとりとした雰囲気だが、今日は勇者らしくいつもとは何かが違う感じの雰囲気であった。


「私が最初に倒したのは蟲毒のベルゼブブ。彼女の毒は人間はおろか、ミスリル製の鎧すら溶かす力を…」


その時、外から叫び声らしきものや「逃げろ!」という声が聞こえてきた。何があったのかを確認する間もなく、宮殿の大きな扉が爆発で吹き飛んだ。


「ここから上位魔人に匹敵する魔力を観測したはずなんだが…。それらしきヤツは勇者様を除いて1人も見当たらないな」

「しかしサタン殿、この魔力反応はあの忌々しき勇者のものとは少々違いますよ」

「アタシから言わせれば勇者も所詮人間。他のヤツに同じような魔力の波長を持ってるのくらい居てもおかしくないんじゃない?」

「ウチははよ人間が食いたくてしゃあないんや。はよせぇ」

「まあ、この魔力が誰からのモノかなんてどうでもいい。どうせ我々が来たからにはすぐに全滅するであろうから。勇者も当時ほどの力はあるまいて」


そこには、おぞましい気配を漂わせた5人の魔人がいた。

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