第24話
物凄い速度で馬を走らせてきたおじさんは、俺の目の前に降り立つと意味ありげな微笑みを浮かべていた。
「レントくん、ティア、そして、レントくんの恋人、かな?とりあえず、3人とも私の部屋に来なさい。」
ダメだ…。言い方からして完全に怒ってる。ここは、おじさんに俺のアリスへの思いを精一杯語って認めてもらうしかないか。
*
そして、客間に連れて行かれた俺たちはおじさんとテーブルを挟んで反対側のソファー腰かけた。おじさんは向かいの椅子に座るとまたさっきの意味ありげな微笑みを浮かべた。
「レントくん、君と会ったのは数年ぶりだね。もう娘とイケナイところまで行ったものだと思ったのだが…。むしろ外から湧き出たどこの馬の骨とも知れない
「炎が蒼いのはアリスだけが特別というか…。でも、アリスはその所為悩んでいたんです。自分の体熱が抑えられなくて他の火炎精霊たちのように生活できなかったから。それに、俺はアリスと出会う運命だったんです。俺の前世と関係あるというか、俺が【炎王】を持って生まれたのもきっとこの為なんです」
「前世…?ああ、あの話か。しかし、それをティアと結婚しない言い訳にするつもりか?兄者の家にティアを置いていいと許可を下したのは結婚が前提条件だったんだ。そもそもティア、何でもっと誘惑しなかった?」
ティアは何かを考えこんだようだがすぐに慌てた様子で弁明を始めた。
「で、でも、もしもアリスさんがいなくても王女様と結婚することになってたから私とは結婚できなかったと思うし…」
「じゃあ、何で今レントくんがここに居るんだ?」
「それは、王女様のおかげです。どうやら、何かしらの約束を取り付けてくれたみたいで…。だから、王女様の恩義を無碍にしたくなかったらレントくんはアリスさんと結婚するしかないんです」
「だったら、レントくんの表向きの婚約者をアリス某にしてティアがレントくんと結婚すればいいじゃないか」
その時、どこからともなく謎のノイズ音が聞こえてきて、それと同時にナツメの声がしてきた。
「ロレンツィオ・アルグリアさーん?こちらから行動は監視させてもらっているので、もしも私たち王家に歯向かうようなことをするのであればお兄様の血縁の方であろうと攻撃は惜しみませんよ?また領地を減らされたいんですか?」
「そ、それだけはご勘弁を…」
「なら、お兄様はアリス様と結婚させることですね。もう1回警告しますよ?こちらから行動は監視させてもらっていますからね?」
ナツメがそう言うと、音はプツンと切れた。
「ナ、ナツメ様直々の命令であれば、我ら貴族は従うしかない。レントくんの結婚は自由、私はティアと結婚させることを諦めよう」
こうして、やっと俺とアリスの結婚は認められた。
「お父様、今日ここに来た本来の目的の方に話を移してもいいですか?」
「本来の目的?ティアがレントくんと結婚しないという話じゃないのか?」
*
こうして、ディナーを兼ねて本題を話し終え、元セラ邸に仕えていた給仕や警備員たちは雇ってもらえることになった。
「今夜は泊まっていきなさい。しかし、3人も来るのは想定外でベッドが1つしかない。悪いが3人で1つを使ってくれ」
そんなことを言われたが、まずは風呂だ。確かここの風呂場は大浴場に近い内装だったし、露天風呂も完備されていてそこからの眺めは絶景。一応、1人でってのも心細いような気はするが男女で別れて俺は後から入るか。
そう思っていたのに…。
「レントくん、一緒に入ろうよ」
「レントさんと一緒じゃないともしも温度調節が効かなくなっちゃった時に困らないし…」
2人に誘惑されるまま、俺は風呂場に行った。流石に3人とも隠すべきところは隠したが実際に行動に移すと恥ずかしい。
「レ、レントくん、背中流そうか?」
「レントさんは私が洗ってあげる」
そう言って2人はさりげなく胸を腕や背中に押し付けてきた。俺だって思春期なんだから勘弁してくれよ…。気づいた時には俺は鼻血を出していた。
「す、少しのぼせてきたかな…?」
「もしかして、興奮しちゃってる?」
「やっぱりレントさんも思春期だね~」
そうやってからかってくる2人に俺は苦笑いするしかなかった。
「ちょ、ちょっと露天風呂にでも行ってくる」
「あ、逃げた」
「待ってよ。まだ途中じゃん」
2人は俺をからかうのが楽しかったのか少しつまらなさそうな顔をしながらも俺について来た。露天風呂に浸かりながら夜空を見上げると、たくさんの星々が輝いていた。
なんだか日本から見た星空に景色が似ていた。
「綺麗だな」
「そういう時、普通私たちに向かって『あんな星より、2人の方が綺麗だぞ』とか、そんな感じのセリフ言うんじゃないの!?シチュエーション的に」
「誰がそんな恥ずかしいセリフ吐けるか」
そう言って3人で笑った。
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