第17話

「これは、もう20年近く前のお話…」


しかし、レイカは話だそうとすると何かを思い出したのか身じろぎした後、顔を真っ赤にしてから両手で覆った。


「お母様、何かあったんですか?やっぱり、無理に話さない方が…」

「いえ、少しばかり恥ずかしいことがあって…。やっぱり、私の口から話すのは少し気が引けるから投影魔法で写したのを見てもらうわ」


そしてレイカは持っていたカバンの中から水晶を取り出すと、そこから壁に映像を映し始めた。そこには、今のレイカからは想像できない性格の少女が…。



24年前…。魔法学校に通っていた10歳の少女は友達と話しながらの帰り道にいた。その少女には、確かに今のレイカの面影はあった。しかし、性格が違った。


「ねぇルミ、今日もボクがクラスで1位だったよ」

「すごいです、レイカは。学校には大人の方もいらっしゃいますのに魔法の勝負では負けなしなのですから」

「なんてったって、ボクの師匠はあの大魔導師のクレア様だからね!それに、ボクには夢があるんだ」

「どうゆう夢です?レイカのことだから、それはもう偉大な夢なんでしょ?」

「うん!ボクね、師匠から『お前が私と出会ったのは誰かを救う為だ。その力で世界を救ってくれ』って言われたんだ。だからね、ボクは師匠に負けないくらい強い大魔導師になって世界中の困ってる人たちを助けたいんだ!」


すると、そこに見覚えのあるような紅い髪をした少年が現れた。


「あ、お前ってこの前の…」

「あ!?確か、セリオスか何かだっけ?この前は負けたけど、次は絶対に勝つんだからね!」

「お前、魔法学校の生徒だから体術得意じゃねぇだろ?それに、お前は頭かてぇんだよ。身体強化とか使えばいいのに魔法の1つも使わずに突っ込んでくるもんだから…。コッチも手加減するのに苦労したんだぞ」

「手加減なしって言ったはずだよね!?次は絶対に手加減なしだからね!!」


これが一体どうやったら魔王討伐に繋がるのか分からなかった。それくらいに平凡な日常が描かれていた。


「ねぇ、なんでお前がボクの家の方について来てるの!?お前の家はあっちでしょ?」

「今日はお前ん家の近くに友達ん家があるけどソイツが休んだから手紙とか宿題を届けに来てんだよ。お前ん家行こうとしてるとか馬鹿みてぇな勘違いすんなよ」

「そんな勘違い、誰がするもんか」


これを見る感じ、昔のレイカとセリオスは仲が悪かったみたいだ。まぁ、そこから紆余曲折あって恋仲になったのは今の2人を知らなくてもこれさえ見れば一目瞭然だが。


その友達の家とやらに手紙などを届けたセリオスは少し何かを悩んでいたが、突然決心したかのようにレイカの前に立った。


「しょ、正直に言うけど、今日俺ん家親がいなくて…。虫のいい話かもお前の家で夕飯食わせてもらっていいか?」

「は?お前さ、やっぱり私のこと幼馴染か何かと勘違いしたりしちゃってんでしょ?お前友達多いんだからソイツらの家で食わせてもらえばいいじゃん」

「ソイツらがニヤニヤしながらお前ん家で食べさせてもらえって言うから仕方ないだろ?俺自身の判断じゃないからな!」

「あー、お前って自炊できないんだ~。私の方が1つ下なのに恥ずかしくないの~?まったく、今日だけだよ、今日だけ」


俺はさりげなくレイカの方を振り向いた。24年前の自分を相当恨んでるだろうな…。レイカは部屋の端でふさぎ込んでいた。


その後、シーンが不自然に飛んだ。カットされたらしい。一体、その間に何があったんだろう…。


「いやぁ~、助かった。うまかったぞ」

「ちょうどコッチもお母さんがいなかったからよかったけど…。普段ならこんなことしなかったんだからね」

「分かってるさ。じゃあ、また」

「次に来たってお前の食う飯なんかないんだからね!」


その時、空が赤黒く染まった。それと同時にあちこちで魔法陣が展開されて多種多様な魔法が飛び交った。


「おいおい、これどういう状況なんだよ!?敵か、魔物か!?とりあえず、これはやりすぎだろうが!!」

「私に捕まってなさい。【アブソリュート・シェルター】!」


その魔法をレイカが使うと、2人は完全に魔法を弾く簡易シェルターの中に包まれた。激しい音が止んで2人が外に出ると、そこは無法地帯と化していた。


「これ、さすがに人間のやったことじゃなさそうだし、かと言って普通の魔物にここまでのことができるはずがない…」


その時、上空から1発の爆破魔法が飛んできた。2人はそれを避けることができたがその威力は恐ろしいものだった。


「まさか、火炎魔法の使えない劣等種ごときに我の【マジック・フェスティバル】を防がれるとはね。脱帽モノだよ、お嬢ちゃん」


そこには毒か何かにでも侵されたかのような紫色の毒々しい色の肌をした冒険者らしき少女がいた。


「あなた、誰!?どう見ても上位魔神みたいだけど」

「そう、我こそは魔王トゥナイン。貴様らのような愚かしい劣等種を滅ぼしに来た救世主さ!」

「魔王トゥナイン…。封印されているはずじゃ…」

「いや、その封印が解けたからこそ我が今ここにいるんだ。さぁ、滅びのゲームを始めようか、お嬢ちゃん!」

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