第9話
俺はあの日から、アリスのことが気がかりになっていた。何故、俺が温度調節や耐熱が使えることを知った上で俺たちのパーティーに入ろうとしないのか。1人だけ特別に体温の高い
*
きっとレントさんは私の恋慕に気づいた上で、私のことを気遣って誰とも付き合っていないって言ってくれた。優しいウソを吐いてくれたんだ。なのに、私は混乱してる。まだ、レントさんを諦めたくない。心のどこかで勘違いであれと祈ってる。レントさん、どうか私の祈りが届くなら、私を助けてください。
*
俺は一夜中眠れず、気づいた時には夜が明けていた。
「レントくん、もしかして寝不足?まだまだ成長期なんだから夜更かしはいけないよ。それに、夜更かしはお肌にも悪いんだから」
「いや、そこまで寝不足っていうわけでもないんだが、どうしても気が重くて…。あ、ごめん。やぱり今の忘れてくれ」
「レントくん、何か悩んでるんならいつでも話聞くよ。私だけで解決できないことなら、セラちゃんもいるし」
「いや、そう大したことじゃないからいいよ」
俺の口からどうしてもアリスをパーティーに入れたいなんか言えるわけがない。そんなこと言ったら、俺がアリスに恋してるみたいじゃないか。俺は決して、そんな感情で言ってるわけじゃない。きっとそうだ、きっとそのはずなんだ。
その時、道端にいたアリスと目があった。アリスもまた、寝不足のようで少し疲れたような顔をしていた。やっぱり、何かで悩んでいるんだろう。寝不足の所為なのか、はたまたこの胸を締め付ける何かの所為なのか、俺は頭がぼんやりしてきた。
「レントくん、レントくん。おーい、起きてる?やっぱり寝不足なんじゃないの?さっきからボーっとしてたよ」
「あ、ごめん…。俺、やっぱり、ちょっと今日は休む。何というか、やる気が起きないっていうか、気だるいっていうか」
「そっか。まぁ、健康の方がクエストよりも大切だもんね。なら、今日はお休みにしよっか」
俺は、屋敷に向かってUターンした。帰る途中、少しだけアリスの方を振り向いた。アリスは、絶望したかのような顔をしていた。やっぱり、俺に悩みでも相談したくて待ってくれていたのだろうか。そう思うと、アリスに申し訳なくて仕方がなかった。
*
私は、絶望した。レントさんはきっと、私がいて気まずくなったから帰ったんだ。やっぱり、あの少女とはお付き合いしてるんだ。受け止め難い現実だった。無理やりその感情を受け止めようとすると、また目尻で熱い涙が蒸発しては消えていった。
*
俺は家に帰ってから、激しい罪悪感で本当に体調を崩した。もしかしたら、俺が悩みを聞きたくなくて逃げたと思ったアリスは、二度と俺を頼ってこないかもしれない。何故かそう思った。どうしても、前世が忘れられない。あの、何よりも愛おしかった愛梨沙に似ている彼女を助けられない。俺は、誰かが困っていても逃げてしまった。酷い男だ。
「俺に、彼女を救う資格はあるのか…」
俺は再び考えた。何故、俺は彼女を救いたかったのか。まず、アリスが俺のところを訪ねてきて、特別な
まず、そこで呼び方が愛梨沙を彷彿とさせた。
2回目会った時は何故か俺を手助けてくれたけど、その後すぐにいなくなって…。
3回目には俺にわざわざ美味しいもの紹介してくれた。その時、俺はまたアリスと愛梨沙を重ねてしまった。
きっと、俺がアリスを助けたいのは、愛梨沙に似ているから。きっと、俺はあの懐かしさ、ずっと昔の愛おしさを探して…。いや、何か違う。腑に落ちない。うまく、理解できない。この締め付けるものは、一体何なんだろう。
そんなことを考えていると、外で雨が降り出した。俺は考えすぎの所為か頭痛が増した。とりあえず、俺は考えるのも嫌になって眠った。
*
これは、夢か、現実か。俺は愛梨沙に膝枕をされていた。
「愛梨沙、俺、どうしたらいいと思う?」
これが夢なのかどうか自分でもよく分からない。だけど、この夢で何かが変わることを予感していた。
「煉さん、きっと煉さんは気づけてないんだよ。私、知ってるんだからね」
「そういうこと、それ?」
「わたし、煉さんに助けてもらえて嬉しかったよ。でもね、私を助けてくれたことは無駄になっちゃったんだよ、ごめんね…」
「…え?それ、どういうこと!?ねぇ、教えてくれよ!」
夢だから嘘の可能性もあるとは分かっていても、こしそれが本当だったらと思うと知らずにはいられなかった。
「これは、たぶん7年前くらいの話…」
俺は、この真実を知りたくはない。だけど、大好きな愛梨沙の為、愛梨沙に似たアリスを救う為にも、これは俺にとって必要なことだと思った。
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