第4話
俺たちは冒険者登録を済ませ、最初のクエストに挑もうとクエスト掲示板の前にいた。
「なぁ、まずはどのクエストにする?」
「そうだな…。レントくんがいるし、中級者向けのクエスト受けても問題ないと私は思うけど」
「た、確かに俺の【炎王】はチートかもしれないけど、あんまり期待しないでくれ」
「そりゃ、私たちだって一緒に戦うよ。パーティーだからね」
「それで、難しいクエストは受けるの?期待しないでくれとは言ったが、別にそれなりのクエストだったらいいぞ」
「そうだな…。それなら、これでいい?」
そこには、『大量発生したハイオークの討伐(中級者向け)』とその下に詳しい概要が書かれていた。
「本当にこれでいいのか?ハイオークは群れるとかなり強いって学校で習ったけど」
「レントくんにかかれば普通のオーク同然でしょ?」
「だから、あんまり期待しすぎないでくれ…」
そんなことを言いながらも、俺はその紙を手にとってクエスト執行の申請をしに受け付けに向かっていた。
*
「危なかった…。レントくんの功績を説き伏せなかったら取り消しにされちゃうところだったね」
「セラはよくわかんなかったけど、レントはそんなに凄いの?」
「もちろんだよ!今はこの街で有名人だよ」
俺は2人の会話を聞きながら、もう1回深呼吸をした。ここは
「レントくん、そろそろ始める?」
「そうだな。もしも肉とか毛皮を買い取ってもらうならクエストの後もしばらく家に帰れないからね」
「よし!レントくん、私たちはしっかりサポートするから討伐お願いね」
「やっぱり俺任せかよ…」
少し不満はあるものの、俺は体がうずうずしてたまらなかった。強敵相手に刀を使う日が来るのはずっと楽しみだった。
「さて、まずはこれでどこまで出来るかな?」
俺は刀の刀身を炎で包んだ。こうすれば、ダメージも2倍になって殺しやすくなるだろう。対人戦で使うと本当に殺す可能性があったから使えなかったこの技をまずはコイツらで試してみよう。
「はぁっ!」
刀と炎でかなりのダメージを与えられたらしく、1匹目のハイオークはわき腹を切りつけると悶え苦しみだした。
「さて、この調子でどんどん行くか!」
俺は調子に乗ってハイオークたちに突っ込んでいき、次々と切り伏せた。しかし、残党と死骸の数を合わせても最初に見た時より数が少ないような…?
「きゃぁぁぁぁ!?」
背後からティアの悲鳴が聞こえてきた。俺がその方を向くと、2人はハイオークたちに取り囲まれていた。
俺が2人の方に向かおうとすると、群れのボスらしきハイオークが俺の前に立ちふさがった。その後ろでは、数匹のハイオークが2人に乱暴を働いていた。
俺がその様子を睨んでいるとそのボスは俺の刀を取り上げ、いとも簡単にへし折ってしまった。
仕方ない、どうなるか分からないからできれば使ってみたくないけど、こうするしか…。
俺は右足に魔力を込め、発火させた。そして、俺は動きでソイツを翻弄しながら何回も蹴りを食らわせた。
少しするうちにあちこちの毛や衣類から発火し始め、気づいた時にはソイツは地面を転げまわっていた。
さて、さっさと2人を助けるか。
俺はそのままの勢いでその中の1匹を炎のドロップキックで思いっきり蹴り飛ばした。
「れ、レントくん」
「レント…」
「義姉様、セラ。すぐに来れなくてごめん。俺の後ろにいてくれ。絶対に前に出ないでくれよ」
「え!?何するの?」
「こうするのさ!」
俺は手の中で圧縮させていた魔力と炎の玉をハイオークどもに投げつけた。
火の玉は激しく爆ぜ、ソイツらの体に大火傷を負わせた。
「さて、断罪してやるから2人を傷つけた分をあの世でしっかり償ってもらおうか」
俺は刀で数匹のハイオークを素早く片付けた。
「あ、ありがとう、レントくん…。レントくんがいなかったら本当に危なかったよ」
「レント、ありがとう。セラ、今度からもっと気をつける」
「いいんだよ、無事だったから。まあ、明日からはもう少し難易度が低いのを受けよう」
「嫌だよ。このままだと私たちが弱いままになるし…」
「セラも、レントにばっかり任せてられない」
「そうか。2人がそういうなら、少しは考えてみるか。とりあえず、今日は帰ろう」
「「うん」」
*
「クエスト達成を確認しました。素材の買い取り価格と報酬、合わせて3万5000円です」
「はい」
俺たちは報酬を受け取り、家に帰る途中だった。そういえば、この世界のお金の単位も円…。日本人が定めたんだろうな。
「えっと、とりあえずお父様に生活費として5000円払って、1万円ずつそれぞれ自由に使える小遣いにしよう」
「そういえば、今日刀折られちゃったんだっけ?」
「ああ。でも、体術のステータスも上げたいからしばらくは刀もなくていいけど」
「レントくん、ちょっといい?」
「どうした?」
「私たち、ちょっと寄りたいところがあるから先に帰っていていいよ」
「分かった。なら、先に帰るよ」
俺はこうして先に家に向かったが、どこからともなく感じる熱い視線で謎の悪寒が止まなかった。
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