第3話
俺が冒険者学校を入学して6年。紆余曲折を経て俺は冒険者学校を卒業した。
友達も知り合いも増え、【炎王】の影響で少し有名人になった俺も今日から冒険者になれる。
今、そんな俺はヤバい状態にあった。
「俺のパーティーに入ってくれ!」
「いいえ、ぜひ私どものパーティーに…」
「俺たちのパーティーに入ったら優遇するから」
これだけじゃない。大勢の同級生が僕の家に押しかけてきてパーティー勧誘をしてきた。俺としては嬉しいようなだが、もう決まってるんだよな…。
「みんな、悪いんだけど、もう俺の入るパーティー決まってるから諦めてほしいんだけど…」
すると、今度は誰とパーティーを組むのか教えてくれという声があちこちから上がった。
「俺がパーティーを組むのは、ティア
皆はティアに面識はあったものの、セラに面識はない。中にはセラとは誰か、セラに会わせてくれ、と言っている同級生もいたけど、セラは極度の人見知りだからちょっとな…。
*
しばらくしてみんなが帰ると、奥の部屋から黒い猫耳が覗いた。
「もうみんな帰った?」
「うん。もう大丈夫だと思う」
セラとは、去年の夏から一緒に住んでいる。歳はティアと同じく14歳で、気まぐれな性格猫耳の女の子だ。
あれは、快晴の夏日のこと。
*
俺は夏休みの自由研究で水魔法を火炎魔法と併用する方法を調べる為に滝がある家の近くの大きな川に来ていた。
「レントくんはどんな感じのことができたらゴールなの?」
「そうだな…。高温の熱湯を出せるようになったり、炎と水を同時に出せるようになったりだとか、かな」
「頑張ってね。じゃあ、私はこの辺でゆっくりしてるから」
「…ねぇ、もう冒険者になれるはずなのに何で1年半も冒険者にならずに俺の家で住んでるんだ?」
「だって、私はレントくんと一緒に冒険者デビューしたいし、何よりレントくんに何かあったら嫌だし」
「そっか」
俺はひたすら火炎魔法と水魔法の併用の実験を繰り返していた。魔力消費量が大きくならないように耐熱魔法を使っていなかった俺は、暑さを凌ぐのと水浴びの為に森林の中にある滝へ向かった。
すると、そこには裸で水浴びする猫耳の少女が…。
「うわぁぁぁ!?」
思わず俺が叫ぶと、ティアが物凄い速度で駆けつけてきた。
「どうしたのレントくん!?って!?そこ、見ちゃダメ!!」
「義姉様、大丈夫です。見てない!見てないから!」
その少女は俺たちがいるにも関わらず水浴びを続けていた。その後はまだ目の前に少女がいると勘違いして僕を地に伏せさせようとするティアと服が濡れるのが嫌で必死に抵抗ぢている俺を気にもせず古びた布に身を包んだ。彼女が既に水浴びを終えていたことに気づいたティアはその
「君、女の子1人がこんな人目のつかないところで水浴びなんかしたら色々と危ないよ!シャワーならギルドで借りれるのに…」
「ぎ、ギルド?何それ?」
「…え?ギルドはギルドだよ。ほら、ここからでも見えるあの大きい建物だよ」
「…セラ、ずっと1人だから分かんない」
「ずっと1人?どういうこと?」
「セラ、ちっちゃい頃にこの森に捨てられて…。自分の力で頑張ってるけど、森の外にはもう何年も行ってない」
「そうなのか…。なら、私たちの家に来ない?」
「あなたの家、ですか」
「行く宛ても無いだろうし、こんなところで見つけちゃったからには見捨てる訳にはいかないからね」
「本当にいいの?」
「大丈夫、私が責任持つからさ。ところで君、名前は?」
「セラ。あなたは?」
「私はティア。こっちはレント。よろしくね、セラちゃん」
「うん」
「よし、じゃあまずは私たちの家について来てね」
*
思えば、もう半年くらい前か。早いなぁ。セラは物覚えがいいから学校で教えられたことを俺たちが教えても覚えてもらうまでに時間は掛からなかったし、今ではすっかり慣れてきてるし、早く一緒に冒険したいな。
「レント、セラはもし知らない人に会ってもちゃんと相手できるかな」
「大丈夫だ、すぐに慣れるさ」
俺は背中に色々なものを詰めたリュックを背負っていた。そう、これからギルドに冒険者登録に行くのだ。
「レントくん、もう勧誘来てた子たちは帰った?」
「ああ。帰った。そろそろ俺たちも行くか?」
「うん」
こうして俺たち3人は屋敷を出て、村を抜け、街に出た。
目の前に高くそびえ立つ建物はギルド。ここで俺たちは冒険者としてのスタートダッシュ…俺にとっては、第2の人生の本当のスタートを切るのだ。
しかし、チート持ちは苦労することを俺は身をもって知った。
「おい!あの【炎王】が冒険者始める前からハーレム築いてるぞ!」
「やべ~、やっぱり【炎王】は違うな~!!」
ハーレムなんて言われてはいるけど、俺は2人を恋愛対象に入れたりするかもしれないけど、本気で好きになることはきっとできない。
本気で好きだった人は前世に置いてきてしまった。創造神様の言うことからこっちの世界に愛梨沙が来ているのかもしれないと期待したりもするが、愛梨沙がいなくても俺はこの人生を全うしてやるんだ。
俺は背後から懐かしい視線を感じたような気がしたが、ただの勘違いだった。
また、愛梨沙に会いたい。俺はただ、そう思った。
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