第11話 〜暗殺依頼とトマト開業〜
家族で食事をする日を迎えた。
家族全員が哲治の泊まっている宿ガイヤに集う。
リリーとアンナ,モリウスが歓迎してくれた。
沢山の食事が運ばれてくる。
「たんと食べな!」
アンナが話しかけてきた。
「それじゃあ皆揃った事だし,いただきます」
「「「いただきます」」」
食事をしながら舞が話す。
「あや,ちょっと頼みたい事があるんだけど?」
「お母さんどうしたの?」
「ドリアン侯爵って人の家族,奥さんと娘を殺して欲しいんだけど!?」
「え? 侯爵?」
「ええそうよ! 今はその人にお世話になってるんだけど,家族を殺してほしいの」
「そうなの? 悠介はどう? いけそう?」
「僕は何でも良いよ!」
「じゃああや地図を見せてくれる?」
あやはテーブルの上に地図を広げた。
「ここの場所に本邸があるらしいからお願いしたいのよ」
「わかった。僕に任しといて」
「お願いするわね」
「お父さん,ギルドでシャーキーズって組織を聞いたことない?」
あやが哲治に話す。
「今のところ聞いた事はないかな」
「この街に住む悪い組織なんだけど,今後活動していく上で厄介そうだから,もし依頼とかあったら片付けてほしいなと思って……」
「なるほどな! わかった。明日ギルドに聞いてみるよ」
「お願いします」
「んな,話しばっかしてないで,飯食べようぜ!!」
悠介がみんなに言った。
「そうだな悠介の言うとおりだな。とりあえずは食事を楽しむとしよう」
「そうね」
仕事の話しは止めて,ごく普通の家族のように,色々な話をする。
「ごちそうさまでした」
「「「ごちそうさまでした」」」
家族はモリウスが作った沢山のご飯を平らげた。
「じゃあまた来週に」
「では」
「じゃあねー」
「じゃあ」
家族は解散した。
「あや〜,あそこの料理美味しいよな! 僕らの店で作ったり出来ないかな?」
「ウチら料理出来ないしね。ちょっと難しいかもね」
「じゃあとりあえず僕は早速だけど,このままお母さんの仕事してくるわ」
「え!? 今から行くの?」
「ん!? ああ。早くに終わらせたいからね」
あやは自分の店へと戻る。戻ると明日開店のお店の作業をレオナルドとアル,他の子供達がしていた。
「あやお帰り! 悠介は?」
「悠介はちょっと用事があって先に帰ってきた」
「どうですか? 開店準備は」
「もう終わるよ! 後は明日を迎えるだけだな」
アルが笑顔で答える。
「店の名前は本当にこれで良いのか? トマトって」
「簡単で良いんです。皆が字を読める訳でもないですから,子供でも分かる位簡単でいいんです。それに店名は関係ないですから」
「あやがそういうなら良いんだけどさ」
「レオナルドさんしっかりしてください! 明日から店の店長で主なんですから」
「わかってる」
「ただいま〜」
悠介が帰ってきた。あちこちに血が付いていた。
「おかえり」
「悠介お前どうしたんだ? 大丈夫か?」
レオナルドは悠介の姿を見て,持っていた荷物を落とした。
「おっちゃん別に大丈夫だよ! それより明日の開店準備は大丈夫なの?」
「もう終わるそうよ。特にもう手伝える事は無いんじゃないかしら?」
「そっか! 僕はじゃあ井戸でちょっと身体を流してくるよ」
悠介は庭にある井戸へと向かっていった。
「あや,悠介は大丈夫なのか??」
「別に平気よ」
開店の準備も終わり,レオナルドは自宅に戻り,子供達は疲れて寝ていた。
あやと悠介,アルの三人は二階のキッチンに集まっていた。
窓から入るその明かりが部屋を照らし,三人は何故か会話もせず,椅子に座っていた。
「そろそろ寝る? 明日こそ本当に忙しくなるし,早めに寝ないと」
「そうだな! 俺は寝るよ」
「僕はもうちょっとここにいるよ」
「そう? じゃあおやすみ」
「「おやすみ」」
そして次の日を迎えた。朝起きて全員で顔を洗いに行く。キッチンで拙い料理を皆で作り出来栄えは良いとは言えないが,朝ごはんを食べた。
そのうちレオナルド来て,開店の準備を始める。
「お店にお客さん来るかな〜??」
子供達が不安そうに吐露した。
「まあそんな簡単にいかないと思うけど,心配するなって! 皆あやの凄さは分かってるだろ? なんとかしてくれるさ」
「そうだね! あや姉ちゃんは凄いもんね」
「そうだろ? だから大丈夫だよ!」
開店までもうそろそろだ。お店の商品としてあやが用意したのは,一つだけの商品に特化した。それは石鹸だった。様々な石鹸を用意はしたが石鹸だけだった。
「あや! 石鹸なんて売れるのか??」
悠介はあやに聞いた。
「まあ見てなよ! そのうち分かるから」
あやは説明はしなかった。
いよいよ開店をした。
すると次々にお客さんが訪れた。皆が石鹸をいくつも買う。
「おお! いきなり凄いなあや」
「ウチでも流石に驚いたけどね……」
数日前,あやと悠介,そしてアルとレオナルドで人通りの多い場所へと向かった。
そこに即席の出店を作り石鹸の魅力を道行く人達に無料体験してもらった。
無料で出来るという事で,買い物に来ている人達や通りすがりの人達が沢山来てくれた。レオナルドは石鹸という商品の説明と効果を説明しながら体験してもらった。匂いがついた石鹸なども用意し,汚れも落ちて,いい匂いも漂わせてくれる不思議な商品を体験した人達に驚きの声を沢山もらった。
休憩をする暇もなく,次々に人が訪れて売れていった。
「レオナルドさん。ウチは教会に行くから後は任せていいですか?」
「わかった。任せてくれ!」
あやは教会に向かっていった。
他に残されたアルと悠介,レオナルドと子供達は忙しく働いた。
驚くことに昼間を過ぎた頃には全ての商品が売れきれてしまった。
雑貨屋トマトの開店初日は大盛況で終わった。
あやが教会から戻ってきた。
「お帰りあや! 今ちょうどご飯が出来たから上で食べよう」
「あれ? レオナルドさんが作ってくれたんですか?」
「ん〜俺じゃない! まあ一緒に食べよう」
キッチンに向かうとそこにはレオナルドの娘のアンジーが居た。
「アンジーじゃない。どうしたの??」
「パパの仕事を手伝おうとして……」
「朝俺の後を付いてきて,ここに居ることが分かったみたいで,入ってきたんだ。まあどうせバレちゃったならせっかくだしアンジーに食事でも作ってもらおうかなと」
「そうだったんですか」
テーブルの上には様々な種類の料理が所狭しと並べられていた。部屋中にいい匂いが包む。
「アンジーはとっても料理が上手でな,そんな不味いものは作ってないと思うから」
「不味いなんて酷いパパ」
「ははは! 冗談よアンジーとっても美味しいさ」
皆でテーブルに付いた。アンジーの料理を頂くことにした。
「「「「「いただきます」」」」」
一口料理を口に入れた瞬間,皆次々に料理を口に運んでいった。
「美味しいですか??」
「おいしいよアンジーありがとう!!」
「とっても美味しいわ」
「「「おいしい」」」
皆アンジーの料理を気に入ったようだった。
「あやにお願いしたい事があるんだけど?」
「アンジーどうしたの??」
「パパの仕事を手伝いたいの! お願い私にも何か手伝わせて」
「んー……そうねぇ……」
「いいじゃんあや! アンジー料理上手いし,料理人として雇いなよ!」
「確かに料理出来るのは貴重よね。アンジーはそれでもいいの?」
「うん! それでもいいからお願い」
「わかった。それじゃあ毎日料理をお願いするね」
「ありがとうあや! パパ私も頑張るね」
「アンジーはもう頑張ってるさ」
アンジーが店の料理番として通うことになった。
雑貨屋トマトの一日目は大盛況で幕を閉じた。
開店前に並ぶ人が居るほどだった。
あやの作戦と戦略が大いにはまったと言える。
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