第10話 〜それぞれの休日〜
あやと悠介達は今日一日,休みという事を決めた。
ある程度お金が出来た事もあって,アルにお金を渡し,子供達に洋服などの買ってあげてほしいという事をあやは伝える。
もう少しすれば,地下の生活から開放されるからもう少し待って欲しいという事を伝えた。
「わかった。あやと悠介が来て,俺達はご飯がちゃんと食べられるようになっただけでも感謝してる。だから二人共あんまり無茶な事はするなよ? 俺達は今のままでも十分楽しいんだ」
「それでも,アルに言っても分からないと思うけど,今のこの生活は良くないの。いつかは身体が蝕まれて病気にきっとなる。そうなる前にちゃんとした生活を手に入れないといけないのよ」
「アルの言ってる事も分からなくもないが,僕達はあやの言う通りにしていくのが一番正しくて,近道だと僕は思うよ! アルだってあやが正しいって思ってるんだろ?」
「ああ! でも二人が居なくなったらまた元の貧しくて,怯える生活に元通りになってしまうんだ。だから二人にはあんまり無茶はしないで欲しいって思ってるんだ」
「大丈夫よ。ウチには悠介が付いてる。悠介にはウチが付いてるから」
「そっか……ならいいんだ」
「じゃあ今日はお休みという事で。ウチは用事があるからちょっと出かけて来るけど,悠介はどうする?」
「ん〜僕もアル達と今日は遊んでくるよ!」
「あやはどこに行くんだ??」
「教会よ! 歴史や宗教,字を学んでくるわ!」
「わかった」
各々今日の予定が決まり,それぞれ動き出した。
あやはさっそく教会へと向かう。教会の中へ入ると,前回に会った神父のリストが神についての話をしていた。
他にいる人達と同じようにあやも座って説教を聴く。
しばらくするとリストの説教が終わる。
リストが参加者の人達を回る。何やら袋を持っている。
あやの前へとやってきた。
「おや! 来てくれんですねあやさん。お待ちしてましたよ」
「神父のリストさんどうも」
あやはリストの持つ袋の中に1万ギメルを献金した。
リストが回り回ると,参加者の人達は立ち上がり,各々帰り始めた。
あやは残りリストの元へと向かう。
「リストさん,本を見せてもらいたいんですが?」
「ええ分かりました。ではその前にちょっと身体を清めましょう」
修道女があやを抱えて,庭の方へと連れて行く。そこには井戸があり,修道女の女性達が身体や髪を洗ってくれた。
洗い終わって修道女の人に案内される。一つの部屋の前に到着した。
開けるとリストが居た。中央には六人ほどが座れるテーブルと周りには本棚と沢山の本が並べられていた。
「凄い!! 本がいっぱいある!! これ読んでもいいんですか??」
「それは許可出来ません。本に触れる事が出来る人は限られているのです」
「ですから私が本を読み聞かせる事は出来ます」
「そうなんですか……わかりました。お願いします」
「ではこちらの本を読みましょう」
あやはリストのすぐ側に寄り,本の中身を見る。
本には挿絵も入っており,何かと何かが戦っている絵が書かれていた。
「この本はどんな本なんですか?」
「世界がどんな風に生まれ,出来て,どんな風に育っていったかを説いている神話です」
あやはリストが読む本に釘付けだった。
リストが本を読んで数刻が経った。
「今日はこの辺で終わりにしましょう。またお待ちしておりますよあやさん」
「もう終わりですか? もう少し駄目でしょうか?」
「私もこの後用事や仕事がありますから。あやさんも早くお帰りなさい」
「分かりました。今日はありがとうございました」
あやは自分の住処へと戻る。
アルや悠介達が戻ってきていて,わいわい楽しそうにしていた。
「おお! あやおかえり,どうだった?? 何か良い収穫あった?」
悠介があやに投げかける。
「あったよ! 教会には沢山の本があったし,宗教や倫理観とか分かるような本がありそうだった。だけど毎日行けるわけじゃないし,本を貸してくれるわけでもないから,このままだと時間がかかって仕方ないから,ちょっと待つしかないわね」
「ふ〜んまあいいけど,あやの分の食事買ってきたからこっち来て食べなよ」
「ありがとう」
あやと悠介,アル達はたまの休日を楽しんだ。
次の日を迎えると,あやは悠介を連れてレオナルドの家へと向かった。
「おーーいあや,荷車襲いに行かなくていいのか?」
「アル達に偵察に行ってもらってるわ。あれだけ暴れたから警戒されてるだろうから,そんな頻繁に出来ないよ」
「それよりもこっちの方を早く解決しないと後々が大変になるわよ」
しばらくするとレオナルドの家が見えてきた。
家の扉の目におばあさんとレオナルドが見える。
「おーーい!! レオナルドのおっちゃーーん!!」
悠介がレオナルドに挨拶をする。
「レオナルドさんお客さんですか?」
「いや! 俺も知らない人なんだよ」
「あやと悠介じゃない!」
声を聞いて,二人とも首をかしげていた。があやはすぐに誰か分かったようだった。
「はいこれ!! あやに本を持ってきたわ!」
「ありがとう」
「いいのよ!」
「それとあや地図見せてもらっていい?」
あやは懐から地図を出して地図を広げた。日に日に地図の完成度が増していく。
「ここにある物件好きに使っていいそうよ。さっき見てきたけど,掃除すればかなり良い物件だったわよ!」
「好きに使っていいの?」
「ええ。無料で使っていいそうよ」
「本当に?? ありがとう!」
「じゃあ私は帰るわね」
舞は帰って行った。
悠介が耳元であやに聞く。
「さっきのおばさん誰?」
「お母さんよ! どうしてるのか分からないけど変装だと思う」
「本当かよ!?」
「あやと悠介,あのおばさんと知り合いなのか?」
「知り合いといえば知り合いです」
「それで?? 今日はどうしたんだ?」
「色々とレオナルドさんに相談したい事があるんです」
「とりあえず中に入るか?」
「お邪魔させていただきます」
「おっじゃましま〜〜す」
中に入ると中央にテーブルが置かれ,横にキッチンが付いていた。奥には部屋が二つある簡素な造りだった。
「パパー,お客さん?」
「ああ。アンジーそうだなお客さんだな! 飲み物でも用意してくれるかい?」
「は〜い」
アンジーはキッチンで何やら用意をしている。
「それで? 今日はどうしたんだい?」
「元々は本を探してたんですけど,手に入ったので,レオナルドさん字が読める知り合いいませんか??」
「俺の奥さんのカトリーヌが字を読めるよ」
「この本を読んでもらえませんかね??」
「わかった。ちょっと聞いてみるよ」
レオナルドは奥の部屋へと消えていった。
「こちらをどうぞ」
アンジーが飲み物をくれた。
「「ありがとう」」
「私はアンジーって名前なの! よろしくね。あななたちの名前を聞いてもいい?」
「あやよ」
「僕は悠介」
「よろしくね。私と歳が近いと思うの! 私は十四歳。二人は??」
「「十三歳だよ」」
「じゃあ私がちょっとお姉さんね」
レオナルドが戻ってきた。
「今聞いてきたけど,いいそうだ。ちょっとこっち来てくれ」
案内された奥の部屋へ行くと,ベットに横になった美しい女性が居た。
「あなた達があやと悠介ね! レオナルドから話は聞いてるわ。ありがとうね」
「レオナルドのおっちゃんの奥さん超美人じゃん!」
「いや〜まあそうだな!」
「お母さんはねぇ,この辺では有名な美人なんだよ」
アンジーが腰に両手を当てて,高々に発言した。
「カトリーヌさん,早速で悪いんですが,この簡単な絵本を読んでもらえますか?」
「あら? アンジーと近い歳とは思えないほど大人なのねあやちゃんは」
「おばちゃん! あやの事は大人だと思ったほうがいいぜ。子供じゃないよこいつは」
笑いながら悠介が言う。
「うるさいわね! 皆が子供過ぎるのよ!」
「カトリーヌさんお願いします」
あやは本を一冊渡す。
カトリーヌは綺麗な声で本の物語を語り始めた。
あやはカトリーヌが太ももに乗せた絵本のページを凝視している。
アンジーとレオナルドは静かに話を聞いていた。
悠介は落ち着きなく,窓の外を眺めていた。
程なくするとカトリーヌの語りは終わりを告げた。
「王子様とお姫様は幸せに暮らしました。これで終わりね」
「いい話しだったね」
アンジーが反応する。
「カトリーヌさんもう一冊――」
「あや。すまないもう勘弁してくれ」
「わ……かりました」
「あやちゃんと悠介くんまた明日いらっしゃい」
「じゃあまた明日きます」
「レオナルドさんちょっとこのあとウチらと一緒に来てもらっていいですか?」
「ん? ああいいよ!」
「そんなに時間はかからないと思いますので」
レオナルドを連れて三人は家を出た。
「あや,それでどこに向かうんだい?」
「店舗確保出来たんで,見に行きましょう」
「おお! そうだったな行こうぜ」
三人は舞に教えてもらった場所へと向かう。中心地とは少し離れた場所に店があった。
敷地はそこそこある。雑草が成長しまくっているが,問題は見えない。
三人は建物の中へと入る。舞が話していた通りいい物件のようだ。
「おいおい! こんな所使って良いのか?」
「いいみたいですよ」
「ひろ〜〜い」
悠介が走りだす。二階へと上っていく。
「おーーい! こっち来てみ?」
呼ばれて行くと,二階は沢山の部屋がある。一つ一つの部屋に机とベットが備え付けられていた。
「ここに住めそうだな!」
「確かにそうね。ウチらだったら十分な広さね」
「あやはここの物件で何を開くんだ?」
「まあ簡単に言えば日用雑貨のお店を開こうと思っているけど」
「大丈夫なのか?」
「大丈夫よ!」
「とりあえずレオナルドさん,この物件をキレイにしといてもらっていいですか? ウチも途中から手伝いますけど,商品とかお金とか用意しないといけないんで,色々と動く事が多いですから,レオナルドさんに物件の掃除と修繕,それと庭の雑草をどうにかしておいてもらいたいです」
「ああ,わかったよ! どの位で終わらせればいいんだ?」
「そうですね七日程でおねがいします」
「!?!?!?!?」
「わかったよ仕方ないな! どうにかするよ」
「ウチらも開店する為の準備をしていきますので」
「レオナルドさんも開店の準備をおねがいします」
「やるしかないな!」
「明日全員でここに引っ越すので!」
「全員!?」
「ええ! 明日になればわかります。子供沢山いるんで、掃除などに役に立つかと思いますので」
「じゃあレオナルドのおっちゃん僕達は帰るよ!」
あやと悠介、レオナルドは物件を後にした。
「なああや! あそこに住めるのはいいな! というかどんどんいい暮らしになってきたな」
「今のところはね。でもお店の準備とかでこれから大変だよ?」
「楽しそうじゃない!? それよりも早く何か起きないかなぁ」
二人は地下の拠点へと戻った。
「二人共おかえり〜! どうだった?」
「良かったぜ!!」
「良い収穫が沢山あったかな」
アルに答えるあやと悠介。
「とりあえず新しく住む所が決まったから,明日皆で行くわよ」
「え? なんだよ新しい所って!?」
「ウチらのお店が決まって,そこに皆で住めそうだから皆で移動するわよ」
「「本当に??」」
子供達があやに聞く。
「ええ本当よ! 明日皆で行くから早く寝ましょう」
次の日を迎え,荷物を全て抱え地下から出る。
そして皆で店に着くと,レオナルドが草むしりをしていた。
「レオナルドのおっちゃん!!」
悠介が呼ぶとレオナルドは手を振っていた。
子供達とレオナルドが顔を合わせをした。
「皆,この人が今日からウチらのボスになる人だから言うことをよく聞くように」
「レオナルドだよろしく」
「「「はーい」」」
「アル,この人がウチら大人の協力者のレオナルドさん」
「アルだ! よろしく!」
「よろしく」
「レオナルドさん今日から皆二階に住みますから」
「皆,二階がウチらの住処になるから,好きな部屋に住んでいいよ!」
「「わーーい」」
子供達は店の中へとなだれ込んでいった。
「アル子供達をお願いしてもいい?」
「わかった」
「レオナルドさん悠介,後は任せていい? ウチはカトリーヌさんの所へ行ってくるから。アルと協力して,店の中の掃除終わらせちゃって」
「おっけー!」
「わかった」
それぞれがそれぞれの仕事に就いた。
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