第9話 〜父親の本領発揮〜

 哲治はいつになく嬉しそうに,走って盗賊団のいる廃城へと向かう。

 街を出て,廃城に到着した頃には辺りは夕方になっていた。


 廃城の近くの木々に身を隠し,哲治は廃城の間取り図を確認していた。

 確認すると木の上で仮眠を始めた。


 夜更け頃に哲治は目を覚まし,準備をする。

 廃城の外には何人もの見張りがいる。


 哲治はそんな事をもろともせず見張りを掻い潜って廃城へと潜入していく。

 中に入るとより見張りもそうだが、宴会をしていて起きている盗賊団も多く、見つからないのが不自然だと思うほどに人が溢れていた。


 しかし哲治は独特の動きと緩急、アクロバティックな動きで見張りと人の視界の包囲を突破していく。


 哲治は何度もここの廃城を訪れた事があるかのようにどんどん進んでいく。


 とある一つの部屋の前で哲治は立ち止まった。

 中からは騒がしい声が響く。哲治がドアに耳を当てて何かを聴いているようだった。


 哲治はノックをした。

 すると一人の男がドアを開ける。

 「んあ~!? 誰だ~?? ありゃ誰もいねぇー」

 

 哲治は開いた隙間から部屋に入り込む。

 部屋の天井の隅に忍者のように張り付き、部屋全体を眺める哲治。


 そして一瞬で姿を消し、一瞬で一人の男の首が舞う。

 話している最中だった全員が一瞬にして言葉をなくした。


 次の瞬間には盗賊団は武器を手に取り辺りを見渡している。

 「誰だ???」


 盗賊団の連中は哲治の姿を探しているが,哲治の姿はどこにも見えない。

 次の男の首が飛んでいく。


 そして次々と殺していく。男一人を残し,部屋に居た全員が首を斬られて死んでいた。

 盗賊団の男は膝を落とし,震えながら姿を現した哲治の方を凝視していた。


 「まあ待て! お前は一体誰なんだ!?」

 哲治は近づきその男の口に布を突っ込む。そして指を握り逆側にへし折った。

 「んぐぐぐぐぐぐぐぐぐ!!!!」


 入れられた布のせいで,悲鳴にならなに声が漏れる。

 「この盗賊団の幹部はどこにいる? 指で示せ」

 間取り図を広げ哲治は情報を聞き出そうとしている。


 すぐに答えなかった盗賊団の一味の男はまた一本指をへし折られた。

 「早く答えろ!」

 哲治はまた一本また一本と指をへし折った。


 盗賊団の男は粘っている。

 すると哲治は今度は男の足を出して,足の小指を切り落とした。

 「ぐがぁぁぁぁぁ」

 「早くしろ」

 

 また一本切り落とされた。とうとう観念したのか変な方向に曲がった指で間取り図に場所を示した。


 「他は??」

 何箇所か示した。

 場所を確認した哲治は笑顔を見せた。

 「ありがとうな」

 感謝の言葉と共に男の首が宙を舞った。


 朝方になり,廃城の外で見張りをしている盗賊団が眠いのかあくびをしている。

 だんだんと太陽の光が差すようになると,そこに現れた。


 「なんだなんだ!! これは!! おい!」

 廃城の入り口の正面に木が植えられており,その木に装飾を施したかのように,昨日死んだ盗賊団一味の頭や手,足や胴体がバラバラになって飾られていた。


 盗賊団が廃城の中からぞろぞろと出てきた。

 哲治は木々に隠れてその様子を確認している。


 最後の方に現れた人達が居た。他の盗賊団の奴が彼らと何やら話しているようだった。

 そしてその中の一人が盗賊団を集めて話をしている様子が見てとれる。


 少しすると,集まった盗賊団は解散した。廃城を見回る見張りの人数が増えた。

 哲治はじっと木々の中に隠れて動く事はなく,ずっと廃城や周りを観察していた。


 夜になってもまだ動こうとしなかった。夜になると廃城の見張りはさらに増えた。

 だんだん夜も深い時間帯になって初めて,哲治が動き出した。


 見張りをしている盗賊団達はあくびなんかしている。


 哲治は簡単に見張りの包囲を突破していく。

 中に突入し,昨日拷問して聞き出した部屋へと向かっていく。


 部屋の前に二人の見張りが付いている部屋を見つける。

 哲治は瞬時に華麗に見張りの二人の首をへし折り殺した。


 ドアを開けて中へと入る。中は灯りが一つもない窓すらない真っ暗な部屋だった。

 哲治は明るい部屋にいるかのように中にいる人を殺した。


 哲治は次の部屋へと向かう。

 同じように見張りが付いていた。哲治はすぐに対処し部屋の中へと入る。

 中には大きなベットがあり,大きな筋肉質の男が女性を二人抱きかかえながら横になっていた。


 「お前はだれだ? 今日の朝の事はお前がやったの――」

 哲治はその男の話を聞く前に攻撃し殺した。

 「きゃ――」


 二人の女性も哲治は容赦なく殺した。

 流れる血を見ながら哲治が笑い出す。


 「ヒッヒッヒ。ヒッヒッヒ。たまんねぇ〜」

 不気味な笑いを見せる哲治。


 朝を迎えると,木に飾られる装飾品の数が増えていた。

 死体を飾られている木を見て,盗賊団の何人かが逃げ出した。


 哲治は夜更けまでまた全く動こうとしなかった。

 今日の哲治は廃城の外にいる見張りを次々に殺していった。


 そして正面から廃城へと乗り込んでいく。盗賊団に次々に出くわしていく。

 哲治は何事もないかのように華麗に殺していく。


 魔法を使ってくる者もいたが,哲治には当たらなかった。

 哲治の顔は終始笑顔を浮かべている。悲鳴と怒声,そして血が飛び交いながら戦闘が繰り広げられていた。


 すると一人の男が哲治に果敢に襲いかかってきた。

 「お前だな! 俺の部下達を次々に殺した奴は! 俺がぶっ殺してやる」

 哲治は瞬時に攻撃を繰り出したが,その男は哲治の攻撃を受け止めた。


 「お前やるなぁ〜おい! 良かったらうちの盗賊団はいらねぇ〜か!?」

 哲治は話を聞くまでもなく,男に襲いかかる。


 そいつは哲治の攻撃に付いてくる。

 二人にの攻防は激しさを増す。周りにいる盗賊団達は傍観していた。

 哲治が踊りを踊り始めた。姿を消す。


 男はギリギリで攻撃を受け止める。

 次々に攻撃を繰り出していく哲治。舌使って哲治は針を吐き出し,男の眼球を狙い見事に命中した。


 「ぐあ!!! クソ!!!」

 スキを見せた瞬間,男の首が宙に舞った。


 天を仰ぐ哲治。

 「気持ちいいいいい」


 傍観していた盗賊団達が悲鳴を上げながら次々に逃げ出していく。

 哲治は逃さない。すぐに追いかけて片っ端から殺していく。


 気付けば,辺りは明るくになり,朝を迎えていた。

 廃城全体は血の海と,肉片と血の臭いに溢れていた。


 「ああ〜。もっとしたいなぁ〜」

 哲治は独り言を言いながら,盗賊団の何人かの首を袋に詰める。


 廃城を後にした。返り血で血だらけになっていた哲治だったが,気にもとめず,街へと一目散に向かう。お昼頃にはアルベート王国に到着していた。


 門に立っている警備隊に呼び止められる。

 「ちょっと待てお前! 身分を証明しろ!」

 哲治はギルドカードを見せた。


 「通っていいぞ。しかしお前血だらけ過ぎだぞ。どこかで落としてこい」

 「わかりました。ありがとうございます」


 哲治は街へと入り,そのまますぐにギルドへと向かう。

 ドアを開けると,冒険者達は一斉に哲治の方へと向けられた。

 全員が血だらけでギルドに入ってきた一人の男を見ていた。

 カウンターに行き哲治は声をかける。


 「ララさん,どうも! 依頼を達成したんで,確認してもらっていいですか?」

 「その声は哲治さんですか?」

 「そうですよ」

 「そんな血だらけでどうしたんですか??」


 「あ〜まあこれは俺の血じゃないんで大丈夫です。それより依頼の達成を――」

 「ちょっと待って下さいね。ギルドマスター呼んできます」

 「わかりました」


 ララは奥の部屋へと向かい,ランベルクを呼んできた。

 「おい! 哲治。お前血だらけ過ぎるだろ!? それで? 依頼達成したのか?」

 「ええ勿論ランベルクさん! これが証拠です」


 カウンターに袋を広げ,盗賊団の首を見せた。

 「確かに盗賊団のボスと幹部の首だ! 哲治お前一人でどうやったんだ?」

 「普通にやっただけですよ! 特別な事はしてません俺は魔法も使えませんし」


 「まあいい! 達成してくれたからなお疲れさん。ララ依頼達成の報酬と,懸賞金を哲治に用意してやれ」

 「わかりました。哲治さん少し待ってて下さいね! 良かったらギルドの裏に井戸がありますから,そちらで身体を洗ってきたらいかがですか?」


 「そうさせてもらいますねララさん。ありがとうございます」

 ギルドの裏庭に向かいそこの井戸使って身体や服に付いた血を洗い流していく。


 戻るとララさんが大きな袋を携えて待っていた。

 「哲治さん今回の全ての報酬なんですが,全部で1億6800万ギメルになります」

 急に哲治に大金が入ってきた。


 「ギルドは銀行としての役割も果たしていますが,お金預けますか??」

 「そうですね!800万だけ下さい。その他は預けます!」

 ギルドのテーブルに座っている荒くれ共が哲治を煽ってきた。

 「人喰い!!! 大金入ったなら奢れよ!!!」

 「たまには一緒に飲もうぜ人喰い!」


 「そうですね! 今日ぐらいは付き合いましょう! 皆さんのお酒は俺が奢りましょう」 

 「言ったな人喰い!! 人喰いの財布空にするぞ!!」


 「おーーい! 一番高い酒もってこい!!」

 「人喰いこっちこいよ!!」

 哲治は仕事を終えて,冒険者の荒くれ共と真っ昼間から朝まで呑み明かした。

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