第4話 〜チルドレン〜
「ねぇ〜あや〜,僕達これからどうするの〜??」
「悠介,とりあえず情報収集するのが先よ」
「情報収集って何の情報??」
「とにかく何でもいいから全部よ!」
「ウチらはとにかくこの世界を全く知らない。それが最大にまずい事よ。そして大人じゃないから出来る事も制限が多いし。とにかくこの世界や常識などを知る事が先よ」
「まあ分かったよぉ〜」
「とりあえずお昼,丁度太陽がてっぺんに上がった頃に,今いるここに集合って事でいい?」
「ん〜分かった」
二人はそれぞれに情報収集しに行った。あやはまずは本屋や図書館など本を探した。だが,そういった店を見つける事ができなかった。ふいに入った雑貨屋のおばあちゃんに質問をすると,本自体が貴重でそんな簡単に手に入るものじゃないという。
あるとすれば,王宮の中の書庫,もしくは教会の中にあるかもしれないという情報を得た。
あやは教会を訪れた。神父が居てあやは話しかけた。
「神父さん,教会には本がありますか?」
「ん? どうしたんだい? お嬢さん。本ですか? ある事はありますが,字が読めるんですか?」
「今はまだ読めません。ですから教えて頂きたいんです。それと共に本で知識を蓄えたいんですが,どうすればいいですか??」
「そうですね! あなた自身が神にお祈りを捧げ,神と自分自身に向き合って下されば,私が少し教えましょう」
あやは眉をひそめている。
「わかりました。それではウチはどうしていけばいいですか??」
「でしたら毎週教会に訪れてお祈りを捧げて下さい。その後に私が字と教養を教えましょう」
「お嬢さんお名前は??」
「あやです」
「神父さんは??」
「私の名前はリストです」
「ではせっかくですから,神に祈りを捧げましょう」
「え!?ああ……はい」
祈りを捧げたあやは教会を出た。
「なーにが神だ! 糞宗教め。まあ勉強代として仕方ないか……」
その後あやは街のあちこちを巡った。この街の地図をあやは作っていた。事細かい地図をあやは自作する。紙がないから布を縫い合わせた布にインクの代わりに自分の血を使って木の棒で書き込んでいった。
街にあちこちにいるストリートチルドレンに気になっているようあや。見つけては後を付いて行って,観察していた。途中で食べ物を買って,ストリートチルドレンの子供に食べ物を分け与え情報を聞き出した。
どうやらこの世界は子供のホームレスも数多く存在しているようだった。
「おばちゃーん! この串焼き頂戴!」
「はいよ! ほら!」
「ありがとう」
悠介はひたすら屋台を回っていた。
そこで出会った人達から色々な話を聞いた。そして道端で井戸端会議をしているお母さん達の話などを盗み聞きしたり,知らん顔しながら会話に勝手に入ったりして情報を得る。
そしてあやと悠介は太陽が昇りきった所で,待ち合わせの場所で集合した。
「悠介どうだった? 色々と情報は得られた?
「まあちょこっとは! あやは?」
「ウチはこれからって事が多いかも」
お互いに知り得た情報を共有した。あやは今後教会に出入りし,本から情報を得ていく事を伝えた。そして街を歩いたことで発見した事があり,どうしていきたいかという事を悠介に伝えた。
悠介は出店を回った事で得られた情報は最近,食材などの値段が高くなっている事が市民の中で不満になっているという話を聞いたという。
この街にいるシャーキーズという悪い組織。そして街の外にいる盗賊,野盗のせいで,物があまり入ってこなくなり,値段が上がってしまっているという。
あやは今後の方針を悠介に伝える。
納得した悠介とあやは早速,あやの思惑の場所へと向かう。
途中途中の出店で食料を買い込む。そして街外れにある廃墟の教会へと訪れた。
場所としてはスラム街といっていいだろう。そんな中にある廃墟の教会に足を踏み入れる。
「誰だ!?!?」
声が聞こえた。
「別に怪しいものじゃないよ! ただちょっと提案があってウチらは来たんだ」
「それはどういう意味だ?」
姿を現したのは,悠介とあやよりちょっと年上に見える少年だった。
するとゾロゾロと様々な年齢の子供達が現れた。
「ウチの名前はあや。そしてこっちが悠介って名前だよ。ウチらも子供だから」
「悠介だ! よろしくな」
あやは大量に買ってきた食料を出してここにいる全員に振る舞った。
「食料を買ってきたんだ。皆で食べていいよ! ここのリーダーと話がしたい」
「一応俺がリーダーだ! 名前はアルだ」
「アルね! ウチらの提案を聞いてもらいたいんだけどどうかな?」
「食料をもらったんだ。話しは聞いてやるよ」
あやは事の詳細を話した。
あやと悠介も親の居ない双子だと話した。そして自分達はこのままだといつか殺されたり,大人のいいように使われてしまうという事を知ったと話した。
そうならないように自分達の店を持って仕事をしていきたいという話しをした。同じような境遇の子供達と一緒に店を作り,お金持ちになって,自分達のような子供をまた生み出さないように手助けをしていきたいとあやは語った。その為の労働力として,ここに居る子供達の手を借りたいというあやはアルに話す。
アルは,終始黙ってあやの話を聞いていた。途中でアルが口を開く。
「出来たら凄いと思うが,子供だけで出来るわけがない。大人が邪魔するだろ?」
それについての対策も万全に考えていたあや。そして最大の懸念も悠介が払拭してくれる事をあやが説明する。
「話しは分かった。だけど,信用は出来ない。なら最近俺達みたいな子供を攫って奴隷として売りさばいている大人達が増えていて,困ってるんだ。ここの場所もバレて最近は大変なんだ。どうにかしてくれるか?」
「任せて!! 悠介がなんとかしてくれるわ。任せたわよ悠介」
「おっと! やっと僕の出番かな? 任せておいて」
お互いの話しに折り合いがついて,あやと悠介は教会で時間を過ごす。
今日は満月で月の光がステンドグラスを通じて教会に広がる。
沢山の子供達は今日は満腹になったせいか,早くに皆寝静まった。
アルとあや,そして悠介だけが起きていた。
すると外の方から何人かの人間が歩く足音が聞こえて,こちらの教会に向かってくる。
教会のドアが開くと,四人の武装した大人が入ってきた。
「お〜〜い! 怖くないよぉ〜! 出ておいで〜〜」
一人の大人が声を発した
「悠介頼んだわよ」
「了解」
悠介が二階からジャンプし,一人の大人の肩に乗り,そのまま脚を使い全体重を傾けて首をへし折った。
すぐさま殺した男の腰につけていた剣を手に取り,すぐに他の大人達に斬りかかる。
「なんだ!! お前は!!」
構えさせる前にあっという間に二人を殺す。そしてもう一人はアキレス腱を切って動けないようにした。
「悠介! そいつからアジトを聞き出して」
「おっけ〜〜!」
悠介はそいつを拷問し始めた。まずは手の指の爪を一枚ずつ剥がしていく。そして足の爪を剥がす,次に手の指を一本ずつ反対に曲げて折っていく。
口には布を噛ませ大声と自殺出来ないようにしていく。
アルは目をそらして震えていた。
あやは拷問をしている横で男にアジトの場所を聞く。
最初は粘っていた男も最後の方にはアジトの場所を吐いた。首を切り殺した。
悠介は大人達を殺した後,にやにやしていた。
「アル分かった? ウチらは大人にも負けない能力を持ってる。だから安心してついてほしい!少し我慢すれば今の生活より遥かに良い生活を約束するわ! どう? 一緒にやらない?」
「分かった……あやと悠介の話しに乗るよ」
「良かった! 断ったらウチらはここに居る全員殺さないといけなかったから!」
「冗談だろ……?」
アルが固まったまま二人の事を見つめる。
「フフフ……アル。勿論冗談よ!」
「とりあえず死体は教会の外に埋めておくわ。その後に今後の方針を話したいからアルも手伝ってもらえる?」
「ああ……わかった」
悠介とあや,そしてアルは大人達を教会の外に出し,埋めていく。
あやは大人達から流れ出ている血を瓶に詰めていた。
全員を埋めた後,教会であやは二人に自分が考えている方針と行動を話した。
アルが理解し,納得するまであやの説明は続いた。悠介自身も納得したようだった。
次の日になると,あやと悠介は街に出かけた。
生活が安定するまで,地下に拠点を移すことにした。廃墟の教会に関しては組織に場所がバレているから安心して生活出来ないとあやが説明した。
あやが探索した時に見つけた地下に子供達全員を移すことにした。
あやと悠介は昨日男に吐かせた組織のアジトに向かった。アジトがどんな事をしているのかを観察する為だった。
少なからず,すぐに分かった事は人身売買や薬,闇賭博や飲食店,更にはお酒を扱った店までやっているようだった。大人のお店の経営もしているようだった。
あやは興味津々にアジトを見回す。ん〜と唸りながら顎に手を当てて,ずっと何かを考えているような素振りを見せていた。
悠介は飽きて,外に出ている屋台に行って飯を食い始めた。
気付いたらあっという間に夜になり,あやと悠介は地下へと戻った。
アルが出迎えてくれた。
「どうだった? 何か分かった?」
「ん〜どうなの?? あや」
「そうね! 色々と分かった事があって,早速明日から仕事を始めるわ。それでアルに相談したい事があるんだけど……」
「何??」
二人は相談をしながら夜更けていった。
次の日になり,子供達全員を集めてあやが説明する。
あやが布を広げて,この街の地図を広げた。事細かに書いてある地図はかなりの完成度だった。
あやと悠介,アルの三チームに別れて,荷車を襲う計画を立てた。襲うといっても,ほとんど見張りもいない事を昨日のうちに調べておいた。荷車の場所もほとんど把握していた。あちこちの店の必要な物資によって荷車のおおよその中身も分かっていた。
あやが各チームの全員に袋を渡す。盗むものにあやは制限をつけた。
食料,お酒,高価そうじゃない服だけに限定した。他の宝石や絵画,ドレスような高価そうなものがあったとしても,盗んでくるなと制限した。
「なんで高価なものは盗んじゃいけないんだ? そっちの方が儲かるだろ?」
アルが至極真っ当な質問をする。
「宝石や絵画などは必ず足がつくからよ! どこで誰が売ってきたか? などそういった事が必ずバレる。もしバレた時に今のウチらじゃ対処出来ないから,足がつかない商品だけにしておくのよ!」
「なるほどな〜わかった……」
「じゃあ行くわよ!」
さらにあやはもし何かあった時の為に全員に手作りの笛を渡した。
不測の事態に陥った時の為にも作戦も何パターンも提案した。
完璧に近い作戦で,裏組織の荷車から荷物を盗む事を決行する。
リーダーの三人がそれぞれ子供達を連れて荷車を襲いに行く。
三箇所でもずさんに荷車が放置されていた。
子供達は荷車に静かに入り込み盗み,何事もなくあっさりと盗み出せた。
仕事が終わり,地下の拠点に全員が集まった。
子供達は皆喜んでいた。
しかし,あやはとても冷静だった。
「あや! お前凄いやつだな! 簡単に盗めたぜ!」
「今日はね,だけど,見張りがきっと付くから次からはこんな簡単にいかないわよ」
「それでアル。この商品を子供でも捌ける闇市に連れて行って」
「ああ。分かった」
「悠介も一緒にきて」
「ほいよ〜」
アルはいつも通りにしていたが,あやと悠介は顔がバレないように布を顔に覆ってアルの後に付いて行く。
アルの話によると,何でも買い取ってくれる店があるらしい。子供でも関係なく取り扱ってくれるという話しだった。
その店とやらに到着した。
「いらっしゃい。 おおアルか! なんだ? またクズを買い取ってくれってか?」
「マスター今日はちょっと違うんだなそれが!」
「ん? それはどういう事だ?」
三人は袋いっぱいの大量の商品をカウンターの上に広げた。
「おいおい! こいつはどうしたんだよ!」
「まあ色々あってね」
「まあいいけど! ちょっとまってろ!」
アルがマスターと呼んだ人は,中身の食材やお酒,服などを物色し始めた。
「なるほどな! 全部で50万ギメルでどうだ?」
「50万!?!?」
アルが驚いた表情をしている。
「アルどうだい?」
「マスターさん! それはちょっと少ないんじゃないかしら?」
「食料に関しても最近は値段が上がっているからいい値段で買い取ってもらえるはずだし,食材を売っている店を回って,食材の値段の全てを把握している。それにお酒に関してもここにあるのは,相当上等なもののはずだし,服だって新品で品質も悪くないわ」
「子供だからって流石に足元見過ぎじゃないかしら??」
「ほう?? 中々言うな嬢ちゃん」
「どうせこの商品達は盗品なんだろ? こっちだって盗品を買うってのはリスクあるんだ。この値段位が限界だな!」
「ふ〜んじゃあいいわ! ここで売るのは止めましょうアル。じゃあマスターウチらこれで!」
「おいちょっと待てって! ここ以外で売れる場所なんてないぞ!」
「それはあなたが勝手にそう思ってるだけでしょう?? ウチらには売る手段はいくらでもあるからいいのよ。じゃあマスターありがとう」
「分かった。100万ギメルでどうだ?」
「120万!!!」
「……分かったそれで良い」
「じゃあお願いするわ」
あや達は一瞬にして120万という大金を手に入れて店を出た。
「おい! あややったな凄いぞ!」
「これでも安いのよ! 私の計算が正しいなら本当なら二百万ギメル位で取引出来たはずなのよ。まあでもあっちからしてみればいい取引だったから,また何か持っていってもそれなりの取引をしてもらえるはずよ」
「流石だな〜あや」
悠介が軽いノリで答える。
「とりあえず大きな元手が手に入った事は良いことだわ。食料を買って,食事にしましょうか」
「俺肉食いたい!」
アルが提案する。
「まあ今日ぐらい,いいでしょう」
「ならいい店知ってるぜあや」
「なんで悠介がそんな詳しいのよ」
「食べ歩きしていい店覚えた」
三人は意気揚々と食材を買い込んで,地下に居る子供達と今日は盛大にお祝いをした。
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