第3話 〜依頼と衝突〜
昨日行ったギルドへと向かう哲治。ギルドに着くとカウンターにララが居て哲治が話しかける。
「おはようございますララさん,依頼を受けにきたんですが」
「おはようございます哲治さん。ちょっと待ってくださいね」
すると奥からギルドマスターのランベルクが現れた。
「おう哲治早いな。この依頼なんだが,場所は分かるか?」
「どうですかね? 地図か何かあれば分かると思います」
ララから地図を渡された。
「ここが今居るアルベート王国だ。ここから出てずっと西の方に向かうと洞窟があって,そこを根城にしているみたいなんだ。殲滅してきてほしい。盗賊のボスには懸賞金もついてるから殺したなら証拠を持ってきてくれ。生け捕りでもいいけどな。もし何か不測の事態があった時は素直に戻ってこい! 命が一番大事だということを忘れるなよ」
「ランベルクさんありがとうございます! 地図を見て場所は把握しました。じゃあ依頼を遂行してきます。ちなみにランベルクさんいい武器屋も紹介してくれません?」
「なんだ? 武器持ってないのか? じゃあこの道沿いにある武器屋ローリエに行くと良い。あそこは中々いい武器が揃ってる」
「何から何までありがとうございます! じゃあ行ってきます」
「哲治さん気をつけて下さいね」
哲治はララの言葉に笑顔で返すと,さっそく武器屋に向かう。
紹介された店へと訪れた。
「いらっしゃい!」
出迎えてくれたのはもの凄く小さい女性? だった。
「お客さん店前で突っ立ってないで入りなよ! 武器探しにきたのかい?」
「え!? ああはいそうです! ランベルクさんにここの武器屋がオススメだと」
「ランベルクさんの紹介か。どんな武器を探してるんだい?」
「出来れば短剣を二本。切れ味がいいのをお願いします」
「そうなのか? ん〜じゃあこれはどうだい?」
哲治に渡したのは二本の短剣だった。刀身には綺麗な刃文が広がっていた。
「美しい……」
「なんだいあんた武器が分かるのかい?」
「少しだけなら」
「まあランベルクさんの紹介なら多少分かるか。でどうだい?」
「これにします! おねがいします」
「じゃあちょっとオマケしといてやるよ。それであんた名前はなんだい?」
「俺は哲治って言います」
「私はローリエだ。よろしくな」
「あんたドワーフを見るのは初めてかい?」
「そうですね……初めて見ました」
「私らドワーフは数が多いってわけでもないからね。身長が低く,鍛冶が得意な種族さ」
「なるほど! でもローリエさんはそんなドワーフの中でも腕が良いのでは?」
「何故そう思う??」
「この二本の短剣の作りを見たらわかります。私も剣に似たようなのを作った事がありますが,こんな風に作るなんて到底出来ませんでした。さらに教えてもらった人も凄い腕でしたが,きっとローリエさんの方が腕がいいと思ったからです」
「そうかいそうかい! まあ嘘だとしても嬉しいさありがとうな哲治」
「何かあればまた私の店を使いな」
「ええ。そうさせてもらいます」
哲治はローリエが作った二本の短剣を腰に差して店から出る。
そのまま街の外へと向かう。街は大きな外壁に覆われているようだ。そして大きな門が見えてきた。
門をくぐり哲治は外へと出た。外の世界を見てもここが地球じゃないという風景が広がっている。
地図で示されていたように西の洞窟へ向かう哲治。道中で何体かのモンスターと出くわした。哲治はちょっと腕試しと短剣の具合をみる為に戦った。哲治にとっては盗賊団の前のアップにすらならないようだった。
林の中をかきわけると,盗賊団のアジトだと見られる洞窟の前に哲治が到着する。洞窟の前には盗賊団の一味だろうと思われる人が二人見張りをしているようだった。
哲治は今までに見せたことがないような笑顔を見せる。笑顔を見せたかと思うと,すぐに洞窟の方へと走って向かって行った。
見張りの二人は迫ってくる哲治を見つけた。
「誰だおま――」
さっそく二人の首を切り裂き大量の血が飛び散って二人は死んでいった。
哲治が天を見上げる。
「きもてぃーー! 最高だぁ〜」
気持ち悪い笑顔をし,洞窟の中へと入っていった。
洞窟の中は入り組んでいるようだったか、哲治は出くわす出くわす盗賊団を片っ端から殺していった。
魔法を使ってくる者や、剣術などを学んだことがあるような盗賊団も数多く居たが、哲治の相手にはならなかった。
どんどん哲治は人を殺していく。
そして一番奥の部屋にたどり着いた。
開けると、そこには盗賊団のボスと思われる人物がそこにいた。
「お前は誰だ!? よくも俺の部下をころ――」
哲治は彼の言葉を最後まで聞く前に剣を喉に差し込んで殺した。
「殺し合いで喋っちゃ駄目だろ!?」
そう言いボスの首を切って、証拠として持ち帰る。
哲治は残党を探し、殺していった。盗賊団のアジトにあった宝や金目のものを全て袋に詰めてアジトを後にした。
そんなに時間がかからずに盗賊団を殲滅した。
街へと戻るとさっそくギルドへ向かった。
大きな袋を抱えた哲治を周りの奴らは睨みをきかせていた。
カウンターに行くとララが出迎えてくれた。
「哲治さん!? もう帰って来たんですか? やっぱり難しかったですか?」
「難しい?? ララさん盗賊団は殲滅し終えましたよ!」
「え!? 本当ですか?」
「ええ! 案外すぐに終わりましたよ! これがボスの首です!
「た……確かにそうですね。では懸賞金の200万ギメルと依頼の達成報酬がコチラになります!」
「ありがとうございます。ララさん」
「それでララさん。また盗賊団とかでも何でも良いんで,対人間の依頼とかってありますか??」
「え!? ああはい! ある事はあるんですがね……」
「どうしたんです??」
「哲治さんはまだランクがブランズですから,受けられない依頼が多くて」
「なるほど……」
「おう! 哲治じゃねえか! 盗賊団はどうだった?」
「ランベルクさん! 終わって報告してた所です」
「ギルドマスターちょうど良かったです。少しお話したい事が……」
「なんだ?」
ララがランベルクに今話した事を伝えた。
「なるほどな〜。今回の依頼はゴールドランクでも達成出来なかった依頼だから,俺の権限でゴールドランクまで哲治をあげてやる」
「ランベルクさん良いんですか??」
「まあいいだろうよ! その代わりと言っちゃあなんだが,俺からの哲治指名の依頼を頼んだときは一度目は絶対に断らないって約束でどうだ??」
「ん〜なるほど! 中々いい提案ですね! わかりました。その条件を受けましょう」
「わかった。じゃあゴールドランクに上げてやる。そうすれば哲治が受けたい依頼もほとんど受けられると思うからな」
「ありがとうございますランベルクさん!」
ランベルクはいいよいいよと言いたげなジェスチャーをしながら立ち去った。
「では哲治さん,いくつか受けれる依頼がありますので,どうしますか?」
哲治はいくつかの依頼書に目を通す。
「じゃあこれにします!!」
「え?? 本当にこれにするんですか??」
「ええ勿論です!」
「わ……かりました。でも気をつけて下さいね」
ララが驚くのも無理はない。ランクはゴールド以上となってるが,廃城を拠点とした,大盗賊団の殲滅の依頼だからだ。よく見るとゴールド以上の三パーティー推薦と書かれている。
相当な人数がいると思われる場所に哲治は一人で挑むというからだ。
「ララさんありがとうございます! 気をつけて行ってきますので安心してください」
哲治は大盗賊団の依頼を請け負った。
「さてと,どうしようかしらねぇ〜」
舞は家族と別れた後,街をフラフラと歩いていた。
彼女のお目にかかる男性がいないのかもしれない。
「この世界の事も分からないし,何がいいのかも分からないから困ったわね」
歩いていて,初めて舞の動きが止まった。
そちらに目を向けると,貧相な服装に腹がぷっくり出ているおじさんだった。
雑貨屋か何かの店の商品を外からガラス越しに眺めていた。
舞は少し胸元を開けて,彼に近寄っていく。
彼がよそ見をしながら歩いているとこへ身体をぶつけにいった。
少し大げさに転ぶ舞。
「大丈夫ですか??」
小太りの男性が手を差し伸べる。
「ええ。ありがとうございます!」
舞は渾身の演技でおじさんに
「ごめんなさい。よそ見をしていて,ぶつかってしまいました」
「いえいえ,こちらこそよそ見をしていましたから,お互い様ですな」
「フフフ。こんな紳士な方に初めてお会いしました。昼間から何をされてたんですか?」
「少し街をフラフラと物色していました。淑女のあなたこそ何をしておいでで?」
「私は舞と言います。こちらの街に最近来たんですが,土地勘がなく,お店がよくわからなくて……食料などを売っている店を探しておりました」
「なるほど……そうだったんですか。よければ私がご案内致しましょうか?」
「そんな。知らない方にそんなご親切な事を頼むわけにもいきません」
「いいんですよ! 私は今日は休日ですし,私はここの生まれでよく街を知っています。それにこんな綺麗な淑女を一人で歩かせる訳にはいきません。紳士として当然です」
「フフ。でしたら頼もうかしら! よろしくおねがいします。え〜と……」
「ドリアンです。ドリアンとお呼び下さい舞さん」
「ドリアンさんよろしくおねがいします!」
舞とドリアンは二人でお店を回った。食料が売っているお店や,日用雑貨がある店,屋台などを回って二人で昼食などをとった。
ドリアンに自分の身の上話を舞はしていた。いい年齢なのに,夫もいなくて田舎では馬鹿にされて,田舎を出てきた事。初めての都会で大変な事。仕事も見つからずに大変だという事。
今後も一人で生きていくのかと思うと寂しい気持ちがあるという事。この街には知り合いも友達もいなくてずっと一人だった事。久しぶりに人と喋って沢山話してしまった事をドリアンに話した。
「ごめんなさいドリアンさん。初対面の方に私の愚痴のような事を話してしまって。せっかくの休日を私みたいな人に使わせてしまって……」
「そんな。舞さんはそんなに自分を卑下する必要はありませんよ! そうだ舞さん。良かったら今日は私の家で一緒に食事しませんか?」
「いえそんな! ドリアンさんのお宅にお邪魔になるわけにはいきません。それにご家族もいらっしゃると思いますから……」
「大丈夫なんですよ。私は時々一人になりたい時がありまして,その時に使う家がありまして,今日家には家族はいないんです」
「それでも今さっき会ったばっかりの人を……」
「私も一人で夕食を食べるのは寂しいですから良かったらご一緒にいかがですか?
「ドリアンさんありがとうございます。でしたらお邪魔します」
「では私の屋敷に向かいましょう」
連れて行かれて着いた先はとてつもなく大きい屋敷だった。
驚いた顔を見せる舞。
「ドリアンさんあなたは一体……」
「申し遅れました。私はドリアン・ルーズベルト侯爵と申します」
舞は跪く。
「貴族様とは知らずに申し訳ありません」
「いえいえ舞さんいいんです! お顔を上げてください」
「寛大な心に感謝致します」
「かしこまらないで下さい。是非普通のドリアンとして接してください」
「いえいえそんな」
「いいんですよ! まあとにかく中に入りましょう」
案内された屋敷の中に入ると,絵に書いたような大豪邸で,メイドや執事が出迎えてくれた。
「ドリアン侯爵様おかえりなさいませ。こちらの方は??」
「私の客人の舞さんだ。無礼がないようによろしく頼む」
「かしこまりました」
「では舞さんこちらにどうぞ」
舞はメイドに案内された場所に行くと,なんと大浴場,大きなお風呂に案内された。
「お風呂でまずは存分に癒やしてください」
「はぁ……わかりました」
驚いた顔を見せる舞。
服を脱ぎ大浴場に入り,身体にお湯を流し湯船に浸かる。
「思ったより大物釣っちゃったかなぁ〜」
と舞が満足げな顔で独り言を言っていた。
少しすると,メイドが沢山入ってきて,身体と髪の毛を洗ってくれた。
そして身体を拭いてもらい,素敵なドレスを用意されて袖を通した。
メイドに案内された場所に行くと,素敵なテーブルに座る先ほどの姿とは全く違ったドリアンが座っていた。
「舞さん,どうぞ座ってください」
「ええ……」
舞は少し戸惑っている様子で座る。
「いきなりこんな事なるなんて思わなかったので,驚き戸惑っています」
「舞さんドレスがとても似合っています」
「ありがとうございます」
「では食事を楽しみましょう」
コース料理のように順番に,そして様々な種類の料理が運ばれてくる。
舞は完璧なテーブルマナーで周りの皆を驚かせていた。
食事でドリアンは饒舌になり,舞はその話を楽しそうに聞いていた。
あっという間に食事の時間は過ぎていった。
「ドリアンさん今日は素敵な時間をありがとうございました。私には勿体ない時間でした。そろそろ外も暗くなりますから,私はこの辺で帰られせてもらいます」
「舞さん。良かったら泊まっていきませんか? 部屋も沢山空いてますし,メイドもたくさん居ますから,一人くらいどうってことありません。よければ,ここの家に居座ってもらってもかまいませんよ??」
「舞さんが好きなように使って頂いてもかまいませんよ?」
「いえいえ! そんな事は出来ません。私は今日はこれで帰ります」
「それでは侯爵としての名が廃ります。今日はもう夜も遅いですから泊まって下さい」
「侯爵様にそこまで言われたら断る事は出来ません。わかりました」
舞はドリアン侯爵の家に泊まることにした。昨日泊まった宿屋とは比べるべくもなく豪華だった。広い部屋にふかふかのベットにふかふかのソファ。
一人の専属のメイドまで付いた。
「皆はどうしてるかしら?? 私だけこんな豪勢な生活で悪いかしらね」
舞は一日でとんでもない男をひっかける事に成功したようだった。
ふかふかのベットに横になり,舞は深い眠りへとついた。
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