第48話 洞窟に入ってみよう
ソラとホロウの二人は闇雲に森の中を歩いていた。
だけど目的ははっきりしていて、洞窟を探していた。
けれど二人は何処に洞窟があるか分からないので困っていた。
「如何しよう。このまま闇雲に探してても……」
「日が暮れるだけね」
ホロウは淡々としていた。全く焦る兆しも見えず、ソラは心に余裕があるなと思った。
けれどホロウも視線をキョロキョロさせていた。
如何やら相当焦っているようで、ソラは前言撤回。下唇に指を当て、深く記憶を呼び起こす。
「えっと、確か掲示板は……見てなかったね」
ソラは頭の中に掲示板を思い浮かべようとした。
けれど何も出て来ないので、大人しく諦めることにする。
「何やっているのよ。立ち止まる暇があるなら、貴方も探しなさい」
「探しなさいって言われても……うーん、洞窟ってことはこんな真ん中の道にある訳ないよね?」
「確かにそれはそうね。少しそれてみる?」
「それが良いと思うよ。どんな洞窟を探しているのかは分からないけど……」
ソラは何を探したら良いのか分からなかった。
けれどホロウが先へと行ってしまうので、その背中を追いかける。
「待ってよホロウ! 何でそんなに早く行こうとするの?」
「特に理由は無いわ。私は私のしたい様にするだけよ」
「きょ、協調性は?」
「時と場合」
「あっ、そういうことですか……はい」
ソラは完全に諦めた。
ホロウの言葉に気圧されたというよりもその信念に気圧されてしまった。
「何で黙るのよ」
「だってホロウの信念が強すぎるから……」
「それはつまり、ソラには信念が無いってこと? 現代人ね」
「ホロウだって現代人でしょ?」
「うるさいわね。そういうことじゃ……ここ何処?」
「えっ!?」
二人は完全に迷ってしまった。
道の無い道の中を歩き回ってしまったせいで周囲を木々に囲まれてしまう。
何処から来て、どれだけ歩いたのか、それすらあやふやになってしまい、振り返ってみると足跡だけは薄っすらと重なって残っていた。
「戻っても良いけど……如何するの?」
「決まっているでしょ? 深追いはしないわ」
「……凄い。ちゃんと冷静だ」
「私は基本的にいつでも冷静よ。一旦戻って体勢を立て直す、それでいいわよね?」
「うん!」
ソラは大きく頷き返した。
表情を訝しんだホロウだったけれど、スタスタと歩いて行ってしまう。
妙に掴みづらい性格だなと思いつつ、ソラはホロウの背中をもう一回追った。
とは言え一応周囲を見回して、何か無いか確認した。するとソラの目が何かを捉えた。
「ホロウ、ちょっと止まって」
「なに?」
「アレ見てよ。底が見えないよ?」
ホロウはソラの視線を追って、先にあるものを凝視した。
何故か底が抜けていた。如何やら地盤が下がっているらしい。
「ねえ、行ってみようよ!」
「はっ? あっ、ちょっと!」
ソラは珍しく駆け出していた。
するとホロウは眉根を寄せたのだが、ソラが駆けだしたのを見て追いかけてくれた。
しかしソラは音で気が付いていた。
ホロウがソラのすぐ後ろを走ってくれていたので、迷わず地盤が下がっている辺りにやって来た。
早速下を覗き込むと、「あっ!」と声を上げた。
「如何したのよ?」
「ホロウ見てよ。もしかしてアレが探している洞窟じゃないの?」
「……確かに洞窟ね。まさかこんな所にあるなんて……如何して分かったの?」
「如何してって言われても……正攻法で探しても見つからないって思ったんだ。それより如何するの?」
もしも洞窟に入ってみるんだったら、この下に降りないといけない。
流石にここから滑り落ちたら上に這い上がるのは大変そうなので、一旦引き返すと思った。
けれどホロウは何か取り出す動作をして、近くにあった太い木の幹に縛り付けた。
「ロ、ロープ?」
「そうよ。最悪に備えて用意していたものがここで役に立つなんてね……これで良し」
ホロウはきつくロープを巻きつけると、下へと滑り落ちた。
すり鉢状になっている地面を駆け下りると、スッと手を地面に付いた。
「ロープ使わないんだ」
「当たり前よ。それよりソラも降りてきて」
「う、うん……うわぁ!」
ソラはホロウみたいにカッコよくは降りれなかった。
だけど怪我をすることはなく、ちゃんと受け身を取った。
おかげで痛みを覚えることはなく、ソラはホッと胸を撫で下ろした。
「受け身、上手いわね」
「えへへ、ありがとう」
「別に褒めただけなんだけど……」
そこは「別に褒めてないんだけど」かと思った。
だけど真逆の一言にソラは驚いてしまい、直後には嬉しくて赤面した。
「ありがとうホロウ。それで洞窟に入ってみるの? ちょっと不気味だね」
「洞窟何て不気味なものでしょ? それと入ってみる? 当然でしょ」
ホロウは腕を組んだ後、真っ直ぐ洞窟の中に入っていく。
脚が震えるわけでもなくむしろ警戒はしているが楽しんでいるようだ。
ソラはホロウの後姿を頼もしいと思い、今度は背中ではなく隣に立った。
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