第47話 息の合った戦闘
ソラとホロウは一緒にダンジョンの奥へと向かった。
今回やって来た泥窟の森は当たり前のように周囲一帯をも木々に囲まれていた。
おまけに地面はかなり柔らかめで、靴の裏が泥だらけではないにしろ少しだけ沈み込んだ。
「聞いていた通り、本当に地面が柔らかいよね」
「そうね。とは言え何も支障は無いわ」
ホロウは淡々と答えた。ソラもそこまで支障はなく、地面が柔らかくて踏み込みが甘くなるだけだ。
けれどわざわざ踏み込む必要性は何処にもなかった。
ソラ達はダンジョンの中を歩き回り、とりあえずモンスターに遭遇はしなかったけれどホロウは不服そうで、カメラ越しじゃなくてもソラの目にはそう映った。
「ホロウ、つまんない?」
「何がつまらないのよ?」
「モンスターが全然出て来ないから。さっき倒したスライム以降、何にも出て来ないでしょ? だからつまんないのかなって」
ソラはホロウに尋ねた。しかし何も答えてくれなくて、スッとホロウは前を向き直った。
顔色が窺えなくなるものの、何となく当たっていると思う。
ソラはホロウの機嫌取りをするわけじゃないけれど、如何したら良いのか分からなかった。けれどホロウの口から先に答えが投げかけられた。
「モンスターと全力で戦い訳じゃないわ」
「そうなの?」
「後、機嫌取りなんてしなくていいわよ。いちいち気を遣われる方が面倒なの」
ホロウはソラの気持ちを汲み取った。
心が軽くなったソラは「ありがとう」と答えると、ホロウがピタリと立ち止まった。
何か現れたのかと思い、ソラもピタッと立ち止まって剣を構えた。
「ホロウ、何か居るの? ……えっ」
「またスライムよ」
現れたのはスライムだった。
内心では「また?」と思いつつ、ホロウの態度が少し違った。
さっきまでは剣を構え、即座に討伐していたはずなのに、今回は剣を構えようともしなかった。
「ホロウ、またスライムが出て来たけど倒さなくてもいいの?」
「倒さないわよ」
「ど、如何して?」
「如何してって……私を戦闘狂か何かと勘違いしているの? 別にスライムばっかり倒す悪趣味な性格はしていないわよ」
ホロウはそう答えるとスライムを無視して先へと向かおうとした。
しかし即座に立ち止まり剣を振るった。
シュン!
細身で剣身の長い刃が空気を切り裂いた。
かと思えば地面に魔石が転がって、カメラではホロウの背中しか映っていなかったので何かは分からなかったけれど、ソラの目ではしっかりと確認することができた。
“何が起きたん?”
“突然如何したんですか!?”
“怖っ”
“スライムを無視してなに切ったん?”
コメントにはてなが溢れていた。
だからソラはホロウに尋ねた。
「ホロウ、今なにか飛んできたよね?」
「そうね。季節外れのトンボだったわ」
「やっぱりアレはトンボだったんだ……速かったね」
ソラとホロウの目にはトンボが映り込んでいた。
赤い胴体に透明な羽。かなり速い速度で飛んできたけれど、噛みつかれる前にホロウが剣で叩いて倒した。まさか飛んでいるトンボを切ることができる何て、ソラには真似できないと感じ、ホロウに実力の高さを思い知った。
「良く切れたね。もしかして最初から分かってたの?」
「別に切ったわけじゃないわ。それに……伏せて」
「えっ!?」
ホロウは振り返ると、突然ソラへと歩み寄った。
「伏せて」と言われて驚くソラだったけれど、背後からは音が聞こえてきたので急いでしゃがんだ。
すると剣を振り下ろして、背後で何かがグシャグシャに散った。
「うっ……魔石?」
「危なかったわね。デッドビーがすぐ後ろにいたわ。刺されたら最悪死に至るわよ。例えダンジョンの中だとしても外に出て強い後遺症が残る可能性もあったわ。だから私に感謝しなさいよ」
そんなことになっていたとはソラは思わなかった。
今度はちゃんとカメラに映っていたので、みんな称賛のコメントを送った。
「あ、ありがとう」
「別に感謝される必要は無いわ」
ホロウはツンツンしていた。
ソラは頬掻きながら「うーん」歯切れ悪かった。
「それよりこれから如何しようかしら。泥窟の森……何処かに洞窟があるはずだけど」
ホロウは悩んでいた。この森には洞窟があるらしくて、とりあえずそこを目指すことにした。
「それじゃあ早速行ってみる?」
「そうね。とは言っても……はっ!?」
「ホロウ!」
二人は声を張り上げた。
カメラドローンは捉えていて、ソラとホロウの二人はお互いに剣を振り上げた。
背後に蛾のようなモンスターが居て、同時に襲い掛かって来た。
スパッ!
だけど同時に二人は蛾を退治した。
羽が砕け、トゲトゲが次々に落ちていった。
コロンと音を立て水色っぽい魔石に変わると、二人は突然の攻撃を躱し切って安堵した。
「助かったね。ホロウもありがと」
「何が起きるかは分からなかったけどね。……私もありがと」
「えっ!? ……あっ、うん」
ホロウは顔を赤らめていた。
プイッと背けてしまって顔色は窺えなかったけれど、とりあえず息ピッタリだった。
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