第17話 初めての洞窟探索やってみた!
本当に洞窟があった。
視聴者はソラの地味だけど便利な才能を評価した。
“凄え!”
“本当にあった!?”
“流石ソラさん!”
“可愛いは正義”
「ぜ、全然嬉しくない」
褒められているベクトルが全く違った。
ソラは微妙な表情を浮かべた。
引き攣った笑みを浮かべていたのだ。
一応喜ばないと悪いと思った大人の対応だった。
しかし今のソラにとっては“可愛い”がやけに突き刺さった。
グサリと深く傷付いた。
「と、とりあえず洞窟に入ってみようと思います!」
とは言え装備が何もなかった。
もしも暗くて道に迷ったら如何しようかと思い、目印を残すことにした。
「入口は最悪分かるとして……うわぁ、奥が真っ暗だよ」
入るのも勇気が必要だった。
ソラは急速に自信を無くし掛けてしまった。
しかしここで帰るわけにはいかなかった。
むしろ今の状態で帰るわけにいかないのだ。
剣の柄をガシッと強く濁り込んだ。
スマホを内ポケットへと仕舞い、早速洞窟探索を始めた。
しかしいきなり困難に差し掛かった。
もの凄く暗くて前が見えたものじゃなかった。
「しまった。もう、暗くて見えないよ」
ソラは絶句した。
まさかこんなに暗いとは思わず、スマホの灯りを頼りにするしかなくなった。
「それでも暗いよ」
洞窟の中は暗すぎて、歩くことすら困難だった。
とりあえず壁伝いに歩いてみることにしたが、足元もかなり悪かった。
凸凹とした道が続いていた。
幸いなのはモンスターが見掛けられないことだった。
しかし何処から飛び出してくるか分からないので注意が必要だった。
自然とスマホが目の前にあり、コメントが流れた。
“懐中電灯が無いの辛すぎぃ”
「そうだよね。何で持ってこなかったのかな?」
昨日の自分を叱ってやりたかった。
そもそもの話、このダンジョンを勧めてくれた潤夏に文句が言いたかった。
とは言え持ってこなかったのは自分だ。
自分の責任だと深く受け止めていた。
その声音には寂しさがあった。
あまりに暗すぎて人の心すら荒み始めた。
「って気にしちゃ駄目か」
しかしソラは強かった。
特に気にする節もなく、ただひたすらに進み続けた。
すると薄らと光が見えた。
とは言っても天井から差してはいなかった。
むしろ側面から光が漏れていた。
ソラは何かと思い眉根を寄せて窄めた。
「もしかして、光苔?」
ちょっとだけ走ってみた。
洞窟の側面の壁に光る苔が生えていた。
ソラは初めて見た。
コレが光苔という自生する光る苔なんだと感嘆とした。
「うわぁ。凄い。僕初めて見たよ」
初めて光苔を見た感想だけではなかった。
光を見つけられただけで心が安らいだ。
人間、精神的に滅入ると終わりだ。
その点で言えばソラはそこまで気にならなかった。
それでも光があるのと無いのでは天と地の差があった。
しかしソラは光苔の形が気になった。
何となく矢印の形をしていたのだ。
「何で矢印の形なのかな?」
もしかしたら誰かが意図的にやったのだろう。
それにしても型などは特に無く、矢印がこの先を指していた。
「この先……一本道。なのに矢印。えーっと、必要なのかな?」
ソラはここまで一本道の洞窟を歩いていた。
しかしこの先もずーっと一本道だ。
一体いつまで続くのか、そもそもこの矢印は必要だったのか、色々とツッコミどころはあった。
“必要は無い”
“経費の無駄”
“誰が作ったん?”
“もしかして偶然……んなわけ無いか”
“とにかく先に行こう”
“考えても仕方ない”
コメントも物議を醸していた。
果たしてこの矢印の先には何があるのか気になった。
何もなければある意味もなく、ただの匂わせでしかないのだが、ソラは何かあると思うことにした。
「何かあった方が面白いよね?」
ここは少しでも気分を変えることを言ってみた。
凸凹道を進み、光苔を頼りにして歩いてみた。
壁に手を付き、何とか滑らないように注意した。
スマホの灯りもばっちり使い暗闇の向こうを目指した。
「ん?」
すると少しだけ空間が広くなった。
おまけに陽の光がやや入っているので明るかった。
「や、やった! みんなやったよ!」
ついに光を手にした。
コレでスマホのライトを使わずに済むと安堵し、バッテリーの消耗を最小限に抑えた。
陽の光が差し込む天井の穴をチラ見した。
如何やら雨風が局所的に降り注ぎ、一部だけに穴を開けたようだ。
おかげで天然の天窓が作られていた。
しかしそれでも部屋を完全に明るくするには不十分で、局所的ではあった。
「とりあえず開いところには出たけど……如何しようかな?」
ソラは広いところに来られたので何をするか考えた。
正直、モンスターに出会うこともなく、こうもあっさりやって来れるとは思ってもみなかったのだ。
「モンスターもいなかったけど……如何しよう」
ソラは盛り上がりに欠けていたので考えた。
ふと腕組みをしていると、奥の方がキラリと光った。
「あれ?」
今のは気のせいだろうかと首を捻った、
一瞬陽光を浴びて光ったように思えたのだ。
「今の何かな?」
ソラは行ってみることにした。
すると落ちていたものを見て、驚愕してしまうのだった。
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