第13話 顔出ししてしまった結果
ソラは顔出ししてしまった。
一体全体如何してこんなミスを犯してしまったのか、ソラは数秒間のフリーズによって自覚させられた。
「お、女の子?」
ソラが一番気にしていることをズバリ言われてしまった。
これが嫌だから絶対に顔出しはしないようにしていた。
出版社の方からサイン会の設営をされた時も、同人誌即売会で公式として出展すると聞いた時も全力で拒否していた。
それほど顔を出したくなかったのはこの見た目のせいだ。
“女の子?”
“可愛い”
“モデルさんですか?”
“これモテるだろ!”
“すっぴん!?”
もの凄く嫌だった。
完全に女の子認定されてしまった。
今なら何とか誤解が解けるかもしれない。
そう思ったソラは顔出ししたことを躊躇わず、訂正することにした。
「ち、違うからね。僕は女の子じゃないからね!」
あわあわした反応が余計にコメント欄を煽った。
嫌な方向に傾き始めた。
“またまた〜”
“こんな可愛い子が男の子な訳……”
“どっちでも良いでしょ?”
「どっちでも良くないよ! 僕は本当に男の子だから」
パニックになっていた。
プチパニックが生じていた。
しかしコメントは面白いのか、本当に勘違いしているのか分からなかった。
何故なら証拠が何もないし、証拠を出すわけにもいかなかった。
おまけに素顔を出すのは今回が初めてだ。
ネットにも顔が出ていないので、完全に初見の反応になってしまった。
「本当に男何だけど……」
ソラは落ち込んでしまった。
大きな溜息を吐きながら、背骨がぐにゃりとなってしまった。
「あっ、そうだ。ほら僕の体付き、普通に筋肉質でしょ?」
ソラは自分の体を映した。
ソラはそこまで外で遊んだりしないが、それなりに筋肉も付いていた。
これの両親のおかげだった。
とは言えその帰ってこない両親の恩恵はさておき、これで証拠になってはずだ。
しかし全くもって無意味だった。
“別に女の人でも筋肉質の人はいるよね?”
“どっちでも良いよ”
“それじゃまとめて男の娘ってことで良くね?”
“それが良いと思います”
「全然良くないんだけど……はぁ。もういいや」
流石のソラも落ち込むことを通り越してしまった。
完全に話を流してしまい、切り替えることにした。
「それじゃあ、えーっと。はい。ダンジョンに行きたいと思います。今回は何だっけ……あっ、陽喰の森ってところに来ました!」
たどたどしかった。
しかし初めてよ顔出しとダンジョン配信と言うことで興奮が収まっていなかった。
“陽喰の森って千葉のダンジョンだっけ?”
“初心者向けだよね。まあ妥当かも”
“ダンジョン配信って最近流行ってるけど危険なんじゃないの?”
“すぐにみんな怖くて辞めちゃうよね。がっかり”
「みんな、他の人の悪口を吐かないでね。えーっと、今回はこの陽喰の森で……何したら良いの?」
そう言えば考えていなかった。
ここは同接500人に尋ねてみることにした。
今更だが、登録者1万人で現在同接500人はかなり上々ではないだろうか? と、ソラはちょっと嬉しくなった。
“陽喰の森には怖いモンスターがいるそうです”
“洞窟もあるんだよね?”
“昔の人の○体が落ちてるとか”
“気を付けてくださいね。慎重に進みましょう。これ鉄則です!”(777円)
投げ銭を貰ってしまった。
いち早く目に付きソラは感謝した。
「慎重に進むつもりだよ。えーっと、それじゃあ、行ってみよう?」
もの凄く自信が無かった。
頑張って自身のある体で喋っていたが、所々にボロが出始めていた。
真後ろには広大な森のダンジョンが広がっていた。
正直構造も分かっていない上に地図なども持ち合わせていなかった。
時間が掛かるだろうなと思いつつ、とりあえず目印を付けながら歩いてみることにした。
その間スマホは内ポケットにしまっておき、カメラだけが回っていた。
「聞いていた通り、まばらに木が生えてる」
潤夏に言われた通り、木々がまばらに生えていた。
陽の光がしっかりと入っていて、木の成長の邪魔になっていなかった。
“この森ってモンスターいるんですか?”(330円)
コメントで気になるものを見つけた。
確かにこの森の裏側は普通にハイキングコースにも使われている比較的安全なエリアだった。
木漏れ日が差し込み、とても気持ちが良かった。
モンスターなんて居ないのではと思えるほどだった。
「モンスターが居なかったら居ない方がいいよ」
せっかくダンジョンに来たのに、つまらないことを言った。
とは言えソラが配信を始め他のは人気が欲しいからでもなかった。
寂しいからダンジョンの配信をしてみたのだ。
“確かに陽喰の森って安全らしいよ”
“最初は緩くやらないと”
“でもモンスターと戦って欲しいです!”
“なんか暇だなー”
“つまらない”
“普通に自然を撮りに来ただけ?”
色んなコメントが流れていた。
しかしこの手のコメントには特に響くことがなく、ソラは平然としていた。
心は傷付かなかった。
それがウェットで自信の無い性格のソラにとっては最大の武器であることを、ソラ自身あまり気が付いてはいなかった。
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