第10話 副作用でダウンしました
「うっ、あー……あっ、体が怠い……」
宇宙はしんどい思いをしていた。
ベッドから起き上がることができず、高熱を出してしまった。
体から嫌な汗が流れていた。
全身が重く怠く、目を開けることすら億劫だった。
額に手を当てると熱かった。
とは言え本当に熱いのかも分からないほど、全身が高温だった。
如何してこんな目に遭っているのか。
宇宙には理解ができずに困惑気味。
とは言えこのまま横になっていても仕方なかった。
少しは何か食べないと体が保たない気がした。
「な、何か食べよう……」
宇宙はベッドが這い出た。
しかし足を地面に付けることすらままならず、普通に落っこちてしまった。
「うわぁ!」
ベッドから床に顔がめり込んだ。
息が荒くなり過呼吸になっていた。
(これ、絶対マズイよね。如何してこんな……)
意識が朦朧としてきた。
しんどくて頭が痛かった。
吐き気すらするのだが、声を出さないことにはやってられなかった。
(とりあえず誰かに……ん?)
スマホを手繰り寄せようとした。
しかし耳を澄ますと、扉の方から音が聞こえた。
何も注文していないはずだ。
だから宅配ではないのだが、一体誰からかと思い顔だけは上げた。
正直立ち上がる体力はなかった。
インドアな性格が災いしたのか、体力はそれなりにある方なのに、全く体が言うことを聞かなかった。
コンコン!
扉をノックされた。
インターホンがあるのに構わず叩くのは一人しかいなかった。
「宇宙君、ちょっとお店の方手伝って欲しいんだけど」
この声は間違いなかった。
宇宙は声を出そうとした。しかし喉が焼け焦げそうで、全く発声できなかった。
「宇宙君? 居ないの?」
そんな訳がなかった。
宇宙が住んでいるは、宇宙の従姉妹が営む喫茶店の真上にあるアパートの一室だった。
定期的にお店を手伝う代わりに家賃代無しで住まわせて貰っていた。
今日はちょうどお店が忙しくなる休日で、手伝う約束をしていたのだ。
しかし宇宙が全く降りて来ないので異変を感じたようだ。
そこで従姉妹は宇宙を心配して見に来た。
「宇宙君居るでしょ? 返事して」
「あ、あっ、潤……姉」
「うーん、聞こえない。ちょっと開けるけどごめんね」
そう言うと宇宙の従姉妹はドアノブに手を掛けた。
鍵は掛かっていなかった。
不用心だと思いつつドアノブを捻ると、倒れた宇宙を見つけた。
「ちょっと宇宙君、大丈夫……じゃないわよね。何があったの?」
「潤夏姉。えっと、昨日ダンジョン調査課に行って……」
「調査課! ってことは薬飲んだの? でも死んでないってことは大丈夫だから……発作!」
宇宙の従姉妹で大家の
ホッと胸を撫で下ろすと、ベッドまで運び中にさせた。
相変わらずの力持ちだが、宇宙は怒られるので口にしたかった。
流石は学生自体は全国レベルのバスケ選手だっただけのことはあると尊敬した。
「ごめんなさい、潤夏姉」
「謝らなくてもいいわ。それより調査課で飲んだ薬は次の日高熱を出して動けなくなる副作用的な発作があるのよ。そう言うことは早めに言っておいてくれないと心配しちゃうわよ」
「ごめんなさい……」
宇宙は口には出せなかったが、如何してそのことを知っていたのか気になった。
しかし顔色から察せられたのか、ズバリ言われてしまった。
「私も学生時代は友達と色んなダンジョンに潜ったわ」
「そうなの?」
「うん。だから色々知っているけど、薬の効果が強く出る人は発作的なものも強く出るの。でもね、その分だけ生命力が強いってことだから、多分大丈夫よ」
「そ、そうなんだ……」
納得するしか方法がなかった。
宇宙はグッと言葉を押し殺すと、様々な謎が浮上したことも忘れてしまった。
それくらい強烈な睡魔が全身を襲った。
脳のキャパがオーバーしてしまい考えることを止め、瞼が重たく閉じようとしていた。
「ちなみにこの熱って……」
「朝になったら治ってているわよ」
「良かった。ずっとこのままなら如何しようって思ってた」
「それならもっと問題になっているわよ」
潤夏は笑っていた。
しかしあの薬は本当に強いので、飲んで死んでしまうことだってあるのだ。
宇宙の頭の中にもそのことは常に浮かんでいた。
薬をうくったのが、この世界の科学力を結集したものだとしても、人が作ったものである以上、安全とは限らなかった。
「潤夏姉はダンジョンから出てきた人知ってる?」
「ダンジョンから出てきた人? うーん、今はそんなことは良いから、ゆっくり休むことだけ考えて」
はぐらかされてしまった。
しかし宇宙は潤夏の言うことを素直に聞くことにした。
しかし一瞬だけ宇宙の目がぱっちりした。
忘れていたことがあったが、それを思い出したのだ。
「あっ、お店の手伝い……」
「今日はしなくて良いわ。それより、ゆっくり休むのよ」
潤夏は優しく宇宙に言いつけた。
あたまをかるくなでられると、自然と眠気に感化されて眠ってしまっていた。
優しい寝息をスゥーハァーと吐いていた。
その様子を見ながら、潤夏は口にした。
「まさかダンジョンに行くなんてね。よっぽど自信を付けたいのかしら」
潤夏には理解不要のことだった。
けれど宇宙も悩んでいるんだと思い、励ましてあげることにした。
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