第19話 一瞬のトキメキ

 今日のドレスは、楓からの贈り物。薄い清純感溢れる深いスリットの入ったゆるふわ系ドレス。引き締まったウエストラインと、お尻に可愛い大きなりぼんが付いている。テクテク歩くとまるでお尻をふりふり泳ぐ金魚のようだ。


―――キャラじゃない……

 

 チッと舌打ちして鏡を見るとアラ誰ちゃん? 見た目と中身がずれている。不安な表情がまるで道に迷った子猫ちゃん。オレ可愛くね?


 ピンクのグロスが幼さを背伸びさせ、少しの縦巻きふんわりカールでキツイ印象を消している。メイクさんすげ~な。我ながら認めよう、いやらしい身体付きをした小さなロリ系少女。好きな奴にはハマるだろう。


 ニーハイの白いストッキングは、大きな網目模様で素肌を曝しながら幼い丘を目指し、絶対領域までグングン登る。その後勾配の頂点に達すると、スイッチバックで同じく純白のガーターベルトと連結され、その先の終着点である秘密の花園には、ぱっくり広がる薄ピンクのショーツが故意に男を誘う。


 いけない背徳感がドキドキと鼓動を早め、頬を桜色に火照らせた。歩くたびにお股がスースーして羞恥心が跳ね上がる。楓の所有物と云う証がこの下着なのだと考えると、興奮が収まらない。私Мなのかも……

 

 最近は全て楓の趣味に従っている。最初は心と身体、イヤ、心と服装が合って居なかったが、フリーの場内が増えた事で自分の知らない新たな魅力を知る事となった。お蔭でゴブリン店長のセクハラも激しさを増したけど……

 今日は本指名3本に場内が2本。月平均50本をようやく超えた、もう少し頑張れば中堅クラス。楓のバフ加護のお蔭だけど。中堅クラスと認められるとスタッフからも大事に扱われる。例えば付け回しの時にあの席はイヤだとか我儘が言えるようになったりね。


 指名が1人の女の子に集中すると、付け回しが必要と成る。通常マネージャークラスの黒服が行い、時間を見ては客からクレームが来ない様に女の子を操舵そうだする。指名の女の子が抜けた穴をヘルプの女の子で埋めると言うのが簡単なイメージだ。


 だけどこれはかなり難しい。客の好みのヘルプを付けて留まらせないと、すぐに帰ると言う。当然だ。指名した女が他のテーブルに行ってしまえば楽しく無い。だからヘルプの子の力も必要だし、タイミングも重要となる。何故ならこれが同時多発的に、各テーブルで毎日起こる事だからだ。


「ほいっ! おまたぁ」

顔から眼鏡がはみ出したスライムが眼鏡をぬぐって私をもう一度確認する。

「え⁉ いちかちゃん⁉ 」


「んッ? そだぉ? なんで?」

ふわりとモブの隣に腰を落とし太腿に手を添える……


「ぶっはっ⁉ 」


「んふふッ何々可愛くなったって?」


「ううっうんッ 凄く!! 」


「いちかさん!すみません。お願いします」

付け回しは非情である。


「は~い、ごめん呼ばれちゃったみたいまた後でね? 」


「あぁ…… はひぃ」

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