第14話 吉と出るか凶と出るか

 あの後部長から引き出した情報により、彼女の素性を知る事となった。彼女の源氏名は『三条 楓』私より5つ年上の25歳。現在店の№3Sランクと云う存在であった。


 何処か落ち着いたふんわりとした物腰は、銀座のクラブ魔王達の社交場出身という経歴を持つ。前出ぜんしゅつの店ではチーママという立場で女の子達を切り盛りしていたとも噂される猛者勇者であった。


 そんな彼女と今は更衣室で二人きり…… しかも下着のみの無防備過ぎる状況下で、更にこれから水着に着替えなければならないと言う緊急クエストが発生中である。


 相手の方が何枚も上手うわてなのは分かっている。少ない脳内の引き出しをフル活用し不甲斐ないトークさばきでこの場をしのごうと画策する。


 ―――怒らせたら終わる……


 力ある厄介な権力者にどう立ち向かう? 相手の弱みはなんだ? 見極めろ! 弱点は? ん?…… 弱点?


「着替えないの? いちかちゃん」

はっと我に返り楓に問いかける。


「かっ、楓さんはその…… えっと…… 」

私が取次筋斗しどろもどろに考察を巡らせていると、またもや腰を抱かれ強く引き寄せられた。


「うん、そうだよ。大体正解」


 ―――読まれてる⁉


「いちかちゃんの火照ったエッチな顔が見てみたいし、あわよくば私の物にしたいと思ってる」


 落ち着け…… 相手は今、自ら弱点を語っている……


―――これが吉と出るか凶と出るか……


「どっどうして私なんですか? 」


「人を好きになるのに理由なんている? そうじゃない? 好きになっちゃったらもうこの気持ちは止められないよ」


「…… 」


「一目惚れだったの…… 何度も私のヘルプにって頼んだけど、あの子は入ったばかりで、イロハも勉強中だからダメだって断られちゃって」


 何かいい話かもと思ったが、語りながらケツの肉をムニムニされている。可愛い顔してゴブリン店長と変わりないな…… まぁいい匂いだけど。


 少しため息を付くと優しく楓の手を解き、熱っぽい瞳で見詰め返した。


「じゃぁ楓さんに、お願いがあります…… 」

 

 ―――覚悟は決まった……

 

 焦らす様にゆっくりと、楓の前で下着を脱いでゆく……


 そしてついに恥ずかしそうに……






 

 楓に全裸を捧げてみせた。

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