第13話 熱っぽいのは誰のせい?

 ―――見ていた?……


 不穏な空気が漂う中、ひょっこりと店の部長が現れた。一見可憐で美しい少女はその姿からは想像も出来ない口調で部長に詰め寄る。


「ねぇ⁉ ちゃんとあんた説明してくれてたんでしょうね? この日をどんなに楽しみにしてたか分かってんの? ねぇ? 」


 見た目30過ぎの部長が、20代半ばの少女に頭をひっぱたかれる。その光景に衝撃を受け、口をあんぐりとあけてしまっていた……


「あぁ、ごめんごめん言って無かったかもなぁ。最近色々と忙しくてね、ごめん」部長はニヤニヤと反省の色も無く、面倒臭そうに続けた。


「いちかちゃん悪かったね、俺が伝えきれて無かったみたいで。今日はね、このかえでちゃんと一緒に撮影してもらいたいんだよ」


「一緒に? あの私…… 撮り直しでは? 」


「いや、特別に二人でキャバ雑誌の表紙を飾って貰う事になってね、それで今日お願いしたんだよ」


「そうだったんですか…… でもなんで私みたいな…… 」


「それはね、私がいちかちゃんとじゃないと撮らないってゴネたからなの」


「―――え⁉ 」


「よろしくね! いちかちゃん! 」

いきなり腰に手を回し抱きしめてきた……


「―――ふぁっ⁉ 」


「ねぇ、いちかちゃんって彼氏とかいるの? 」


「いっ、いえ、いませんけど…… 」


「そっかぁ~ ふぅ~ん」


 楓が熱っぽく顔を覗き込んで来る……


 ―――ちっ!近い!!


 こっ、これはまさかの…… アレなのか⁉

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る