第19話
一方、雄介たちは──。
「これ以上、先に進んでも同じ屋台しか無さそうだな」
「そうですね」
「ちょっと休もうか?」
「休むってどこで?」
「そうだな……あっちにある公園に行こうか?」
雄介はそう言って、土手とは反対の方を指さす。
「──ちょっと遠くないですか? 時間までに戻って来られます?」
「大丈夫、大丈夫。ちょっと休むだけなんだから」
「じゃあ……行きますか」
「うん」
雄介は嬉しそうな表情で、絵美は浮かない顔で歩き始める──人気のない通りに来ると雄介は歩きながら「絵美ちゃんってさぁ……好きな人とかいるの?」と話し出す。
「え……な、なんですか行き成り……」と、絵美は突然の質問に驚いた様で立ち止まる。雄介は「いや……」と言いながら、ゆっくりと足を止め、絵美の方に体を向けた。
「俺、君の事が気になるからさ」
雄介が告白すると、絵美は俯き加減で黙り込む。
「──それって、恋愛的にですか?」
「もちろん。だから俺と付き合って欲しい」
雄介がそう言い切っても、絵美は俯き加減の姿勢を崩さない。困ったように眉を顰めると、スゥー……と息を吸い込み「──ごめんなさい。私、好きな人がいるの」とキッパリ断った。
雄介は断られた事に腹が立ったようで、顔を強張らせた。だが平静を装う様に淡々と「へぇー……相手は誰?」
「──えっと……名前はちょっと……」
「じゃあ当ててやろうか? 二年A組、原 大輔だろ?」
絵美は顔に出てしまうタイプなのか、目を見開きハッキリと驚いた表情を見せる。雄介はそれを見逃さなかった様で「やっぱりそうか」
「──さっき桜井さんと仲良くしているのを見たばかりだろ? あいつはもう駄目だよ。だったら俺と付き合おうぜ」
雄介はそう言いながら、絵美に一歩近づく。絵美は拒絶するかのように、嫌そうな表情を浮かべながら後ろに下がった。
「──ダメかどうかなんて、告白しなきゃ分からないじゃないですか」
反抗するかのように絵美が強めにそう言うと、雄介は「ガタガタ言ってねぇで、俺と付き合えよ! どうせ俺のものになるんだからよぉ!!」と、怒りを露わにし、絵美の肩をガシッと掴む。
「ちょっと、なに意味の分からない事を言ってるんですか! 離してくださいッ!!」
絵美は暴れるが、雄介はガシッと掴んだ手を離さない──絵美は怒りが頂点に達したのか、思いっきり雄介の腹に蹴りをぶち込んだ。
雄介はさすがにそこまでされるとは思っていなかったのか、態勢を崩し──電柱に足を取られて、尻もちをつく。
絵美は、すかさず水ヨーヨーを雄介に投げつけると「最低ッ!!」と吐き捨て、来た道を走り出した。
水ヨーヨーは雄介の顔に当たり地面へと落ちる。痛くは無さそうだったが、雄介は「あの女……舐めやがって!!」と、怒鳴り鬼の様な形相を浮かべて立ち上がり、絵美を追いかける。
──絵美はそれに気付いたのか更にスピードをあげ、屋台がある場所へと戻ってくると、上手に人の間をすり抜けていった。
それを見ていた雄介は、さすがに人が多い所は分が悪いと思ったのか、息を切らしながら足を止める。
「はぁ……はぁ……あ~、クソッ!! 上手くいくと思っていたが、哲也が怖くて様子を見過ぎたか? せっかく高い金を払って、あの腕時計を買ったのに、これじゃ台無しじゃないか!」
雄介はその場で考え事を始めたのか動かない──。
「かといって今、追いかけて騒がれても厄介だ。あいつの家は知っているが警察でも呼ばれれば、その後の人生にも響いてしまう……仕方ない、ここは引くか」
雄介はそう呟くと、絵美を追いかけずに反対に向かって歩き出した。
どうせ俺のものになる……哲也が怖くて様子をみていた……そしてあの腕時計……雄介は未来を知っているかのような事を次々と口にしていた。
雄介が未来を変えようとしている犯人なのだろうか? だとすると、何故そんな事をする必要があるというのだろうか? そんな事をせずとも雄介は将来、絵美と結婚をして、結翔の父となる。
考えられるとすると、結翔が過去に飛ばされる前、結翔は父である雄介に反抗していた。雄介はそれが気に食わなくて、結翔が産まれるタイミングをズラして亡き者にしようとしているのかもしれない。
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