新千歳
ようやくついた。かたかたと細かく揺れ、ターミナルへと近づいてゆく飛行機の中でそんなことを思った。
飛行機はじわじわと焦らすように少しずつ、ターミナルへと近づいてゆく。
やがて音が消え、動きが止まり、再び乗務員の声が鳴り響いた。
「只今、搭乗口が開きました。プレミアムクラスの方から、ご案内させていただきます。」
周りの乗客たちも次々に準備をしだす。
私も周りに散らかってしまっていた荷物を小さいバッグに押し込み、きれいに整頓した。
やがて、周辺の乗客たちも降りはじめた。私もタイミングを見計らい、列に紛れて前へと向かう。そして搭乗口から外へ出た。
少し寒いな....
3年ぶりの北海道の空気は肌をこわばらせるのに十分であった。
春とはいえこんなにも寒いのかと思いながら手荷物を受け取るべく歩みを進めた。
階段を降り、止まったベルトコンベアへと向かう。
ピクリとも動かず、少し苛立ちを覚えたが、すぐに落ち着いた。
やがてアナウンスが響いた。
「まもなくベルトコンベアが動きます。荷物を受け取る方はX番までお越しください。」
機械音が響くと同時にベルトコンベアがスルスルと動き出した。そして荷物を空港の裏側から表側へと届け始めた。
赤いキャリーバッグ、青いビニールに包まれたベビーカー、がっしりとしたボストンバッグ。それらは目の前をすぐに通り過ぎ、持ち主の元へと運ばれてゆく。
1分ほどたつと、私のキャリーバッグも運ばれてきた。少し力を入れ、持ち上げるとすぐに床につけ、転がし始めた。ゲートへと向かうと、親戚が手をふっていた。
旅はもう終わり。あとは北海道を堪能するだけだ。そう思うと自然に体が軽やかになった。
北海道中膝栗毛 緋月慶也 @hizukikeiya
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