第33話 再起編(五)病棟
―入院の許可がおりなかった場合はどうしようか。とりあえずタクシーを拾ってアパートに帰ったとしても、食事はとれないし体が
アパートには食料といえるものは何もなかった。救急車を呼ぶ前の一週間、初めの頃はスーパーの介護用品売場で高カロリーの栄養飲料を、食品売場でカロリーメイトとカップラーメン、絹豆腐を大量に買ってきて食事はそれで
救急外来の出入口に移動してから右胸上部も痙攣しはじめた。体が少しずつ壊れていく気がする。「このままアパートに戻ったら孤独死する」と達也は思うのであった。
一時間くらい待たされただろうか。看護師がやって来て、入院の許可が下りたことを告げられて胸をなでおろした。
入院病棟は、くしくも十年前大腸癌で入院した時と同じA棟九階だった。病室は四人部屋で見晴しのいい窓際のベッドをあてがわれた。窓からは
明治大学の文字が掲げられたドーム型の屋根の建物が際立っているのだが、達也の関心はむしろその手前に見える御茶の水橋にあった。病院の起床は早朝の六時、十二月の街並みはまだ暗い。日が昇り、たなびく雲が朝日に照らされて明るくなっていく頃になると、通勤する人々が駅の改札口からまばらに散らばって行く姿が目につく。お茶の水駅から神田川に
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