第25話 惜別編(二)胃瘻
救急病院に着いて
「レントゲンとCTを撮ってみましたが、かなりひどいですね。今回はのりきれないかもしれません」
「そうですか」
「一応抗生剤を使って対応してみますが、緊急の場合心臓マッサージは行いますか?」
「いえ、結構です」
「人工呼吸器は装着しますか?」
「しません」
「もう口から食事はできませんが」
「……」
達也はあらかじめ想定していた処置を内科医に告げた。
「
内科医は、達也が答えた内容を
内科医から説明を受けた後、診察室から出て来た達也に看護師が「こちらへ」と、母親の病室を案内してくれた。
病室は四人部屋だった。カーテンが敷かれているため、他の患者の姿を
母親は、酸素マスクを装着されて死んだように目をつむっていたが、達也が隣に座ると口を大きく開けだした。
―お腹がすいているのだろう―
いつものようにとろみ状の食べ物を、口のなかに入れてくれとおねだりしているのかもしれない。達也は母親の耳元にそっと口を近づけて、
「ごめんね、もう何も食べられないんだよ」
と
翌日、病院の相談員から今度お見舞いに来た時に話したいことがあるので、立ち寄るようにという連絡があった。その病院の入院は今回で二回目であったので、話の内容はわかっていた。
―介護療養型病院への転院の話だろう。前回は断ったが、胃瘻にしていることもあり今回は断れそうにない―
見舞いに行った日は、気温が三十七度と酷暑の日であった。病院まで自転車に乗って十五分で行ける距離だったが、太陽の熱に加え、アスファルトから立ちこめる熱気によって病院に着いた時は、服を着ながらサウナに入っていたくらい汗だくになっていた。
母親は、医師が驚くほど回復していて、夜中に突然目覚めたように目はしっかりと見開いていた。看護師がテレビをつけると母親が見ると言うので、売店に行ってテレビ用のカードを買い、母親の顔の真横にテレビを近づけると確かにじっと画面を見つめている。ちょうどオリンピックイヤーで水泳の競技が行われていた。
―画面のどこを見ているのだろうか。内容は理解できているのだろうか―
母親の様子を
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