その五一 2024春の芽吹き

 ……ニンジン、ナスタチューム、オレガノ。

 今年は三月に入ってから冷え込んだせいか、なかなか春の芽吹きが見られなかった。

 しかし、ようやく、小さな新芽が見えはじめた。それに、イチゴもつぼみをつけはじめた。

 これで、一安心。

 いや、もちろん、芽が出たからと言って元気に育つとは限らない。すくすく育っていたはずがいきなり枯れてしまう……なんて言うことはよくあるし、虫やら鳥やらに食べられてしまうこともある。イチゴはうまく受粉してやらないと、花は咲いても実は大きくならないし……。

 それでも、芽が出さえすれば世話をやける。元気に育つよう手をかけることができる。虫や鳥だって対処できないことはない。とにかく、芽が出さえすればできることはあるのだから日々、ひたすら芽が出てくれることをまつしかない時期に比べればずっと安心できる。

 これからどんどん暖かく――暑く?――なっていくから新しい芽もどんどん出てくる。ハコベは今年も元気いっぱいにプランターを占拠していて、たっぷり採れる。ハコベオムレツはすでに味わったし、今年も春の味覚が楽しみだ。


 そして、ポポー。

 気がついたら、ポポーの木もつぼみをつけていた。いまのところ八つのつぼみがついている。葉はまだ伸びていない。ポポーは葉よりも先につぼみをつける。

 雄しべが成熟して花粉を出すようになる頃には、雌しべは老化していて受粉能力を失っている……という不可解な特性のせいで、いままで花は咲けども実をつけることはなかったポポー。果たして、今年は実がつくのか……って、そこはまあ、ポポー自身よりも、私がうまく人工授粉できるかどうかにかかっているわけなのだが……。

 ……下手なんですよ、人工授粉。

 なかなかうまく行かない。

 「この下手くそ!」

 果樹たちから怒られていそうで怖い……。

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