その五〇 クワよ。お前はサイヤ人か

 雪が降った。

 雪が降ること自体は天気予報で聞いていたがなにしろ、このご時世である。雪が降ること自体すっかりめずらしくなったし、『どうせ、大したことはないんだろ』と、高をくくっていた。ところが――。

 朝、起きてみてみると隣の家の屋根にけっこうな雪が積もっていたので驚いた。

 余談ではあるが、この家の屋根は雪が積もりやすいらしい。雪が降るたび思うのだが、他の家の屋根に比べて、明らかに多く積もっている。以前、この家の屋根の雪がうちの庭にまとめて落ちたことがある。おかげで、玄関口がすっかり埋まってしまった。

 スコップでかき出し、通路を作ったが、左右にそびえる雪の壁は腰よりも高いほどで……ちょっとした雪国気分を味合わせてもらった。ちなみにこの家、うちの庭に雪が落ちるのを気にして屋根に雪止めをつけている。

 閑話休題。

 今回の雪は我が家のベランダ菜園にも吹き込んでいた。少しばかりだが確かに、鉢植えの木々に雪が降り積もっていた。そこで気になるのは――。

 そう。

 クワである。

 いくら、四季咲き性だからと言って一月早々に新芽を伸ばしはじめた気の早いクワ。そのくせ、四季咲き性のくせに春にしか花を咲かせない無精なクワ。

 去年も年明け前に新芽を伸ばし、一月の最強寒波で枯らしていたが、さて、今回は……。

 結論から言う。

 生きている。

 今年のクワの新芽はしっかり生きている。雪を乗り越え、徐々にだが緑の葉と黒い実(花の固まり?)を伸ばしている。去年は寒波に負けたというのに、今年はしっかり生きのこったのだ。

 これはあれか?

 去年、寒さに負けたせいで、より強くなったのか? より寒さに耐えられる体質にかわったのか?

 だとするとまるで、サイヤ人だな。

 もういっそ『ベジータ』と名付けてやろうか(もし、今年も寒波で枯れたら、同じことを繰り返す間抜けとして『クワの、のび太』と呼んでやるつもりだった)。

 いや、しかし、ベジータと名付けてしまうと嫁さんを連れてきてやらないといけないのか……。

 悩む。

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