その四七 夏野菜総括

 ナスとオクラの苗を刈った。

 一一月にもなってナス?

 そう思うだろう。しかし、なにしろ、今年の暑さだ。しつこい残暑にナスもオクラもまだまだ元気いっぱい。花も実もいっぱい、つけていたのだ。

 まあ、オクラは季節が関係しているのかどうか、実に黒いアブラムシがビッシリついて、地の部分が見えないほどだったが。さすがに手狭になりすぎたと見えて、羽の生えた個体もずいぶんいた。人口密度が高くなりすぎるとこうして羽の生えた個体が現れ、よそに向かって飛んでいくというのだからアブラムシはたくましい。人類もこれぐらい気軽に宇宙に飛んで行ければいいのに。はあ……。

 ちなみに、アリたちがこのアブラムシの世話をしていた。大量のアブラムシに誘われたのかアブラムシを食べる、鳥の糞のような虫(おそらく、なにかの羽虫の幼虫)が何匹かいたが、すぐに見なくなった。これもきっと、世話役のアリたちが始末したのだろう。

 まさに護衛アリ、ここに在り。

 閑話休題。

 ナスの方は虫もつかず、本当に元気だった。花も咲いているし、小さな実を幾つもつけていた。数だけで言えば最盛期(のはず)の八月よりも多いぐらい。

 惜しいと言えば惜しかったのだが、冬野菜の予定もあるのでいつまでも夏野菜を植えてはいられない。泣くなく刈りとった。ところが――。

 刈り取った途端、冬の寒さがやってきた。まあ、良いタイミングだったと言えるのだろう。

 でっ、結果だがやはり『まずまず』と言ったところだろう。ナスもオクラも『豊作』とまでは言えないがそれなりに採れたし、料理にも使えた。当初こそ『花咲けど実らず』だったナスの一番苗も後半、まとめて実をつけたから結局、悪い成績ではなかった。

 と言うわけで、夏野菜に関してはそれなりに満足出来る成績だった。

 が、問題がひとつ。

 トマト。

 夏には暑さですっかり実をつけなくなってしまったので、秋冬採りに賭けて夏に種を蒔いたわけだが――。

 やはり、駄目っぽい。

 現状、一応、実はつけているのだが、肝心の苗に元気がない。あまり成長していないし、枯れ込みも目立つ。一気に冷え込んだし、この分だと実が熟すことなく枯れてしまいそうだ。

 やはり、夏作物のトマトを(温室もなしに)秋冬採りを狙うなど無謀だったか。

 そもそも、夏と秋冬のちがいは気温だけではない。日照時間もある。トマトは春から夏にかけて気温があがり、日照時間も長くなるなかで生長していく植物。それを、気温がさがり、日照時間が短くなっていく季節に向かって育てようとしてもなあ。そりゃあ、トマトだって体内時計がおかしくなろうというもの。まともに育たないのも無理はない。とは言え――。

 そもそも、暑すぎる夏のせいで実をつけなくなってしまったから秋冬取りに賭けたわけで……。事実、今年も八月に咲いた花はひとつも実をつけずに散ってしまった。その上、秋冬採りもやはり無理となると――。

 トマトはもうあきらめるしかないのか。

 無念……。

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