その三二 果物王国の子供たち
ブドウの実がけっこう、大きくなった。
すでに小指の先ぐらい、小粒品種のブドウと同等か、それ以上の大きさになっている。我が家の安芸クイーンは大粒品種なのでいまの三倍は大きくなるはずだ。
ブドウは『花震い』と言って、せっかく咲いた花が実をつけることなく落ちてしまう現象があるのだが、気がついてみれば今年の房はけっこうな数の実がついている。花震いはあまり起きなかったようだ。まあ、実が落ちてスカスカの房もあるにはあるのだが。
それでも、全体に見れば良好で一房あたりの実の数が多い。ここまで成長すれば落ちることもないだろうし、かなりの数が収穫出来るだろう。逆に、実の数が多すぎて一粒ひとつぶが大きくならないかも知れないが、それはそれで『いっこうにかまわん!』。売り物にするわけでなし、小粒のままでも味がかわるわけではない。数が食べられるならむしろラッキー、とも言える。
あと、気になるのはちゃんと色づくかどうか。
安芸クイーンは赤色品種で本来、熟すと実が赤くなる。しかし、昨今は温暖化の影響で秋になっても気温が落ちない。そのため、赤色や黒色の品種はうまく色づかないことが多いとか。このことにはプロ農家も悩んでいるらしい。
実際、昨年もなかなか赤くならなかったしなあ。赤く色づくのをまっていたら冬近くになってしまったし。それでも結局、赤く染まることはなかったのでそれ以上、まつわけにもいかず、ほぼ緑色のまま収穫したのだが。
まあ、赤くならないならいでかまわないのだが。色が緑のままでも味はちゃんとブドウしていたし。食べられればいいのだ、うん。
イチジクも秋果がふくらみはじめた。
まだまだ豆粒ぐらいの大きさだが、結構な数がついている。イチジクは一つひとつが大きいので、すべてちゃんと育てばなかなか食べでがあることだろう。
ちなみに、
多分、あれは熟した種が外に落ちやすいように尻を割って先端部分が飛び出したのだろう。なんにしても、イチジクのかわった姿が見られてよかった。これぞ家庭菜園の醍醐味。
とは言え、せっかくの夏果を味わいそこねたのはたしか。秋果はちゃんと食べ頃を見過ごさないようにしなければ。
クワの実は収穫が終わった。
しかし、クワの実は以外と日持ちしないようで、黒く熟したあと何日か気についたままにしておいたら粒の一つひとつが潰れて粘土のように固まってしまった。
味も落ちていた。
どうやら、クワの実は黒く熟したらすぐに収穫しないといけないようだ。まあ、例の台風二号の影響による大雨と強風を受けた後だからその影響もあるのかも知れないが。
それでも、市販品を買っているだけでは決してみられない果物の姿が見られたのはやはり、よかった。効率だけを求めるなら買えばいいのだ。買っているだけでは得られない体験が出来てこそ、自分で育てる甲斐がある。
ちなみに、我が家のクワの木は四季咲き性とのことなので夏から秋にかけて新しい花が咲くかも知れない。そうなればまた楽しめる。もっとも、環境のせいか、いままで春以外に花が咲いたことはないのだが。
あと、心配なのはスイカの苗。
根っ子食いを取り出したあと、一事はは回復して元気にしていたのだがその後、またしおれてしまった。改めて土のなかを調べてみると新たに二匹、根っ子食いを発見。
複数の根っ子食いがいるところを見るとやはり、親が飛んできてうちのプランターに卵を産みつけていったのか。しかし、その場合、ひとつのプランターに二~三〇匹はいるはずだしなあ。う~む。
不可解なのは同じプランターに寄せ植えしているナスタチュームがまったく被害を受けている様子がないこと。元気いっぱいで、毎日のように花を咲かせてくれている。おかげで、毎日のサラダに彩りを添えられている。根っ子食いとはいえ、ある程度育った根っ子は固くて食べられないのかも知れない。
それはともかく、スイカの苗。すっかりしおれて元気がない。まだ完全に死んでいるわけではないからこれ以上の被害さえなければ回復する見込みはまだあると思うのだが、実をつけるだけの体力があるかというと……う~む。
しかし、いまさら新しい苗を買ってくるのもなんだし、このままこの苗で行く。
この際、実をつけなくてもいいからなんとか回復して元気に育ってほしい。茎葉を延ばしてくれるだけでも強烈な西日を
ともあれ、収穫を終えた木に、育ちはじめた実もあって、我が家のベランダ菜園、今年も果物王国は健在である。
完
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