その二六 初夏の日差しにティータイムを
クワの実が熟した。
未熟な赤い実が鈴生りになるなかに、真っ黒に熟した実がついている。それはさながら、ルビーのなかの黒ダイヤのよう。口に入れるといかにも果物らしい甘酸っぱさが口のなかいっぱいに広がる。
いや、本当によかった。
去年の年末、真冬のさなかになぜか新芽を伸ばしはじめたときは驚いたし、その後の寒波で葉が枯れてしまったときは不安だった。
こんな時期に新芽を伸ばし、しかも、枯れてしまって、春になってちゃんと実をつけてくれるのか、と。
しかし、クワの木は春になってから改めて茎葉を伸ばし、実もつけてくれた。しかも、いたるところビッシリと。いまはまだほとんどが未熟な赤い状態だが、すっかり熟した黒い実になるのももうすぐだろう。そうなったら一面が黒く染まり、それはそれは見事な光景となるにちがいない。
かなりの数があるので単につまんで食べるだけは面白みがない。では、どうしてくれよう。
ちょうど『異世界チーズ令嬢紀行』を連載しているところだし、主人公カッテージ・カマンベールにちなんでカッテージチーズと和えて食べてみようか。ハチミツもかけて。ハチミツは百花蜜より、
それとも、お茶はクワの葉茶にしようか。
クワの実と葉を同時に楽しめるし、クワの葉茶は栄養豊富な健康茶だと言うから、試してみるのも一興だろう。
いずれにせよ、クワの実が熟すときが楽しみだ。
完
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