第8話 ただいま (再改稿済み)

「それで、一宮ダンジョンはどうだった?」

ハンドルを握りながら義父が聞いてくる。


「初めて16階層から侵入したけど、砂漠とはね。 なるべく前情報を聞かない

ようにしていたけど。」

 俺はダンジョンクリアができた満足感から、まだその興奮を引き摺っているみたいだ。


「義父様、20階層のボスですが甲羅の幅が15mの一パイでした。兄さん、大活躍でしたよ!」

「そうかそうか。」


「でもさぁ、短槍をダメにしてしまった。」

「ですね。」

 二人でしゅんとしょげる。


「まぁ、良い勉強になっただろう。前情報は出来るだけ調べておけ。

蟹なら、槍系や刀剣系統よりもメイスやハンマー系の方が有効なのは明白だから

なぁ。」

「本当、情報の大切さがよく分かったよ。」

こんなことを話している内に我が家にたどり着いた。


 仁絵と二人で車から荷物を下ろし玄関を潜ると、奥の方からドタバタと走ってくる音が幾つも聞こえる。


「大兄、仁姉、お帰り!」

「「「兄ちゃん、仁絵ちゃん、おかえりー!」」」

「にぃ、ねね、おか^_^」


「大和ーっ、仁絵ーっ、帰ったのー!?お帰りー!荷物を置いて、手を洗って早く

なさい。直ぐご飯にするわよー!」と厨房の方からは義母の声が聞こえる。


「「義母さん(様)、ただいま!!」」

 ようやく無事に我が家に帰れたんだと思った瞬間だった。


 その日の夕食は、より一層普段よりも賑やかになる。

まぁ、メニューが少ないのはいつも通りなんだが量はあるからなぁ。

この家で育って、空腹になった覚えと言うものが俺にはない。


 食事中の会話も、専ら、今日の一宮ダンジョンの話で持ちきりだ。

特に義隆が興味を示している。


「大兄、それでそのオオトカゲはどうやって攻略したの?」

「あぁ、それはな、砂漠に適応しているモンスターや動物は砂地を移動するのが最適に進化してる訳だからな。それを利用させてもらったんだ。」

「義ちゃん、砂地が急に泥沼に地形変化したら、どうなると思う?」

「えぇっと…」


「「「義ちゃん!!!」」」と香三姉妹が義隆を揶揄ってる。

「仁義姉、チビたちが直ぐ真似するから!」

「ごめんね。」

 まぁ、こんな感じだ。


 食事を終え、義隆、夢香、華香、静香ら四人は食べ終えた食器を厨房の流しに

下げ、談話室(リビング)へ。

 これからテレビ番組のチャンネル争奪戦という仁義なき戦いが始まるんだろう。

頑張れ、お兄ちゃん!


 ダイニングに残った義両親、俺たち二人と優は、ドロップアイテムの見聞に入る。

「仁絵、お土産出してくれるか?」

「はい。取り出し《トレジャーボックス》。」


 空間に渦巻き状の歪みが生じ、渦の中心が白く光っている。

相変わらず、不思議なもんだぜ。

全ての食器が片付けられたテーブル、これなら今日のお土産が全部乗るんじゃ

ないか?


「まずは甲羅のプレートです。端の方が兄さんの攻撃でダメージを受けてますので、トリミングが必要です。厚みが2cmくらいあります。」

「おぉ、こいつぁ立派だな!大和、お前が使うのか?」

「いや、俺は要らねぇ。義父さんが使ってくれれば嬉しい。」

「あら、あなた。良かったじゃない。これで胸当てを使って虎獣人に変身したら、

素敵よ!」

「おぉっ?そ、そうか?」


 義父は、基本脳筋だから単純である。

義母の言葉の裏の意味を考えようともしない。

多分、義母は一宮ダンジョンで俺が仁絵に言った「悪役怪人」のことを思い浮かべたんだと思う。 義母が言おうとしていた怪人に心当たりがあった。 確か父、母、妹が殺された仮面の改造人間が主人公の第1回に出てきたアレだろう。


 義母さんは、こちらの世界に来てから昭和の特撮にハマった時期があるらしい

からなぁ。


「義母様、それは…」仁絵が義母にツッコミを入れようとすると、

「仁絵ちゃん、シっ !」人差し指を口に当て何も言うなとジェスチャー。

 それを優が面白かったのか同じように指を口に当て、「シーっ」とやっている。

可愛いな、全く!


 それを誤魔化すかのように、仁絵が蟹爪と脚の束をテーブルに置く。


「それから、これですね。カニ爪が二つ、カニ脚が20本です。」

「うぉ、マジか!酒の肴にしたい!!」

 義父の頭がカニ料理で汚染されてゆくのが手に取るかのようだ。

 あんた、さっき晩飯をたらふく食べてたんじゃ。


「ねぇ、チョッキン?」 優がカニ爪を突きながらはしゃぐ。

「そうだねぇ、チョッキンチョッキンだぁ♪」

 仁絵が両手でピースを作り頭の横で指を広げたり狭めたり。

それを真似ようと優もピースを作ろうとするが上手くいかないみたいだな。


「それでね、義母様。明晩はカニ鍋で良いですか?」

「もちろんよぉ!」 義母も嬉しそうに言う。


「それから、裕也さんのところと凉香義姉、繭さんにも持って行きたいんだけど、

何本か良いかな?」

「い、いかんぞ、大和!俺の取り分が減る!!」 と義父が大声を上げる。


 途端に義母が義父の頭をパカーンと平手打ち。

「なに子供じみたこと言ってるの。あなたの分、無しにするわよ。」

 まぁ、側から見たらコントだよな。みんなで大笑いだ。


 そんなこんなで、その晩は義父、義隆と3人で風呂に入って就寝。

義隆は、明日部活の試合らしい。頑張れ!

 その内、義隆が高校に入ったぐらいに一度ダンジョンに連れて行くのも良い

かもな。 まぁ、義父に一度相談しよう。


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

先程、間の開け方、段落文頭の空白についてアドバイスを頂いたので、テストしてみようと少し弄ってみました。

かぷせちノさん、ありがとうございました。



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