第6話 ダンジョンで 攻略完了! (再改稿済み)
16階層は、純粋に砂漠とオアシスの構成だった。
これでラクダで仁絵とタンデム騎乗だったら、もう少し嬉しい状況だったんだがなぁ。 心の中では、そんな風に思っていたんだよ。
オオトカゲには言えないからさ、折角、乗せてくれてるのに。 悪いだろ?
17階層は、同じように砂漠とオアシスのステージだったが、砂漠ゴブリンにエリートとアサシンが混じった。 「砂漠ゴブリン・アサシンは」、《砂潜り》のスキルを使って不意打ちしてきたが、それを見事に仁絵が看破して事なきを得て反撃、全滅させてやった。
18階層は、砂漠オアシスのシーンだが、満月が浮かぶ夜のシーンだった。
うーん、ロマンティックな夜なんだがなぁ。 寒いし、ダンジョンの中だぜ?
油断なんかできねぇや。 小休止したところで二人で毛布に包まって暖をとった。
少し良いムードになったので、仁絵の頬にキスをした。 あぁ、恥ずかしかった。
「お嬢さん、月がとっても綺麗ですね。」
そんなことを言ったら、アイツはなんかウルウルした目で俺を見つめてきたな。
あぁ、そうだ。ここは、砂漠ゴブリン、砂漠ゴブリンエリート、砂漠ゴブリン・
アサシンの他、ジャイアントスコーピオンが出てきた。
19層は、遺跡のシーンだった。
古代エジプトのルクソールのカルナック神殿遺跡をイメージしてもらえると判りやすいかもしれねぇ。
元々、古代遺跡やらの世界遺産は好きだから何だか得をした気分だ。
貴重な体験ができて得をした気分。
いずれ仁絵と結婚できたら、エジプトに新婚旅行に行けると良いんだがなぁ。
このフロアの敵は、「ゴブリン・ゾンビ」や「スケルトン」、「レイス」などの
アンデッドや「死喰い虫」などの甲殻虫が多かった。
座布団サイズのカナブン(死喰い虫)を見たら、一気にカブトムシが嫌いになって
しまったのは内緒だ。
敵をせん滅し、神殿区画の中央の祭壇の裏側に下り階段を見つけた。
20層に降りるための階段だ。
20層へ降りる前に武器や防具、アイテム類を改めて確認する。
短槍の替えの穂先はもう着いているやつで最後だ。
他のは欠けたり、血脂が回って使い物にならねぇ。
それが駄目になったら石突と鋼線を巻き付けた部分をこん棒代わりに叩きつける
ぐらいしか手がない。
もう少し硬い穂先を買っておくんだったなと反省。
長脇差も使えないことは無いが、俺の力に耐えられるかが心配だ。
本当にこいつは最後の最後だ。
レザーアーマーは、特に大きな攻撃を受けた訳ではないのでまだまだ大丈夫だろう。
「仁絵、そっちはどうだ?」
「大和さん、まだMPは半分ぐらいなら残ってます。さっき、マジックポーションを飲んだから暫くすれば8割ぐらいまで戻るかな?」
魔法師の魔法は、MP(マジックポイント)を一定量使用することで行使ができる。 その際、触媒を使用すると必要なMPのコストを軽減することができる。
減ったMPの回復は一定時間の休養かマジックポーションで行う。
マジックポーションを使用した場合のMPの回復量は、それの品質に比例するらしい。
まぁ、俺は専門家じゃないんでね。 以前、教わった座学で講師がそんなことを
言ってたのさ。
「じゃあ、もう15分ほど休憩な。 ほら、栄養食とスポーツドリンク。 飲みすぎるなよ!」
エナジーバーとスポーツドリンクを仁絵に手渡す。
「ドリンクはもうあまり冷たくないけどな。勘弁してくれ。」
「大和さん、ありがとうございます。(威力を弱めて)《コールド》これで冷たく
なったかな?」 キャップを開けて二口三口飲んで、スポドリを返してきた。
「おっ、サンキュー!」 ゴクゴクと俺も飲む。
「やっぱり、スポドリは冷えてる方が美味いな。」 そんなことを言うと彼女は
クスクスと笑っていた。
「20階層のフロアボスは?」
「義父様からは、蟹だと聞いてますよ。」
「蟹?食べられるの??」
「みたいですね。運が良ければ、丸ごとらしいですよ。」
「家族全員の分、獲れるかな?」
「それはどうでしょう?でも、カニ鍋ができたら嬉しいですよね?」
「あぁ、しまったな。事前に聞いておけばマヨネーズとポン酢も持ってきたのに。」
俺がさも残念そうに言うと仁絵はアハハと声をあげて笑った。
やがて、二人とも疲れも取れたみたいだし、リフレッシュもできたようだ。
「よし、休憩終了だ。お楽しみの時間だぞ!?」
「はい、大和さん。頑張りましょうね♪」
「蟹漁と行こうか。」
リュックを背負いなおし、短槍を再び左手に持ち階段を二人で意気揚々と降りて
ゆく。
20階層に降り立つと、大きな鍾乳洞のフロアでありかなり暗い。所々が夜光苔で光っているぐらいで全体が明るいというわけではない。
「仁絵、止まれ。ランタンでは、位置がばれるかもしれないから、上に幾つか
コンティニアル・ライト(永続的な光)を頼む。」と小声で頼む。
《コンティニアル・ライト》は直径10mを永続的に明るくする呪文だ。
一回行使すると永続的に光り続ける。
「《コンティニアル・ライト》」
仁絵は杖をさっと振り、魔法を行使する。
6個ほど明かりが灯されると奥の方に甲羅の幅が15mほどの暗緑色の大きな蟹が、左右の大きなハサミを振り上げこちらに真っ直ぐ向かって来ようとしてた。
「おいおいおい、蟹って横歩きじゃねえのかよ!?」
「えぇぇぇ!!!」
珍しくびっくりしている仁絵。珍しい!
俺は、短槍を構え、10mほど前に出る。
「大和さん、《シールド(見えざる盾)》《ヘイスト(速度アップ)》」
仁絵が呪文を行使してくれた。
《シールド》は物理障壁の無属性呪文で、ある程度までの物理攻撃を防いでくれる。ただ、このクラスの化け蟹だと何発もつかな?まぁ、その前にヤツを倒しきれば良いだけの話だ。
《ヘイスト》は攻撃回数や移動、跳躍の倍加をしてくれるありがたい呪文だ。
「うらぁ、掛かってきやがれ!」
化け蟹が突っ込んでくるところを飛び上がって、短槍の石突で思いっきり甲羅を殴りつけてみる。
ガーンと大きな音が響くが殆ど効果がないようだ。
ステップバックをし、間をとる。
「《ファイヤーボール(火の玉)》」仁絵の攻撃魔法だ。
《ファイヤーボール》は火系の呪文で下から三段階目のものだ。 爆発力を伴い起点を中心に直径3mにダメージを与える。
効き目が悪いな。 表面が焦げたくらいか?
「仁絵、残りMPは?」
「あと三分の二ぐらい。」
「分かった。」
化け蟹が大きな鋏を振り回して攻撃してきた。
ヘイストの掛かっている俺は難なくそれを避ける。
「ほらほら、こっちだ!」 俺は奴の後ろに回り込む際に足の関節を狙って突きを放つ。 手ごたえありだ! ものの見事に一番下の脚を切断してやった。
「仁絵、攻撃呪文幾つか当ててみてくれ!」
「了解!《ファイヤーアロー(火の矢)》、《アイスアロー(氷の矢)》」
属性攻撃魔法としては、下から二番目だが弾幕にはなるか。
それぞれ十発ずつが化け蟹目掛けて飛んでゆく。
効果は薄いが更に細い脚が二本折れた。
これで、少しは化け蟹も移動がし難いだろう。
「おぉっと!」俺を掴みにきたハサミを竿の胴巻きで受け流そうとしたら、先に仁絵のくれたシールドが効果を表してくれたようだ。
それでも、ビシビシっと嫌な音がする。 シールドは次はもたないかもな。
再度、俺は大きく飛び上がり奴の右目を短槍の穂先で潰してやろうと試みるが、両方のハサミでガードしやがった。
ちぃ、穂先が折れやがった!!!
仕方ねぇ、甲羅を乱打だ。
ドンドンドーン!!! と石突きの三連撃を放つ。
石突きの当たった箇所が丸く摺鉢状に凹んだ。
「仁絵、アイスストーム!」
「凍てつけ、《アイスストーム》」と即応してくれるのは嬉しいね。
《アイスストーム》は、氷属性の呪文で上から三番目の強さになる。
次は俺だな!
デバフの解除を50%まで開放する。
途端に俺のハーフドラゴンの因子が更に活性化して、部分龍化と言うことができるようになる。
例えば、ドラゴンの羽の顕現もその一つだ。
ただなぁ、無茶苦茶燃費が悪いんだわ!
半龍化を解除する(再度のデバフをする)と、腹がかなり減る。
それにな、人相も悪くなる。目の瞳なんて、爬虫類の形になるんだぜ?
本当は、仁絵の前ではあまりやりたく無いんだな、俺にしたら。
まぁ、そうも言ってらんねぇか!
仁絵の魔法が着弾する前にドラゴンの羽を顕現させ、宙へ舞い上がる俺。
ついでに両腕も半龍化させる。
レザーアーマーの下に着込んでいるシャツは、ダンジョン由来の繊維でかなり伸びるやつだからそうそう破れることはない。
青い鱗が生え揃い、棘のような突起物が生えてくる。
更に爪が伸びて黒く硬化する。
俺の半龍化が終了すると、たちまち凹んだ窪みを基点に凍れる竜巻が巻き起こる。さすが氷系の上位魔法だ。
窪みの直径3m程が白く凍りつく。
俺は喉の奥にエネルギーを集中させ溜める、溜める、溜める。
臨界に近づき暴走し始めるエネルギー。
それに魔力の五元素の火を纏わせることによって、ドラゴンブレスが放たれる。
GWOoooooooo!!!
今まで白く凍結した部分が、舜転、真っ赤に灼けつく。
これには化け蟹も吃驚したようだ。
両手のハサミを器用に使い、俺を撃ち落とそうと大暴れだ。
「ふふん、当たらねばどうと言うことも無いのだよ!」 昔のアニメ番組で高校生が乗る白いロボットのライバル機体の赤い人が、同じようなことを言っていたっけ?
すかさず、仁絵が威力を上げて再度アイスストームを撃つ。
窪みを中心に蜘蛛の巣のように幾重にも走る。
うし、とどめだ!!
両腕を龍化し左右で握り合い、それを奴の窪みに叩きつけてやる。
「喰らぇ、《ダブルハンマーーっ》!!」
完全にその部位の甲羅が割れて吹き飛んだ。追撃!と俺は右手を奴の胎内に突き
刺し、無理矢理に心臓を掴み出す。
暫くは、ヤツも大暴れをしていたが、次第に動きは鈍ってゆきやがては両目の光も消え、振り上げたハサミも地に落ちた。
うっしゃー、勝ったぞ!!仁絵に拳を挙げて喜びを示すと、彼女は大きく手を振り満面の笑みを浮かべて駆けてきた。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
いつも「亜人冒険者奇譚(仮題)」をご高覧頂きありがとうございます。作者の天狼星です。こうしたライト小説を書くのは、初めてですのでお目汚しを致しております。
文中、幾つか括弧を使い分けて文章を書き進めております。公開後、必要に応じて細かい修正などを行なっております。以前と書いてあることがあると思われるかもしれませんが、最新のものがモアベターだと捉えて頂けると助かります。
「」 一般会話
〈〉 念輪やテレパシーなど、呪文やスキル、特別な環境下での会話
《》 呪文名や武技名、スキル名
こんな感じですね。宜しくお願いします。
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