4/6 メインプロットとサブプロットの違い

 一方、サブプロットはメインプロットとなんらかの形で連結するストーリーです。


 映画だと、だいたいラブストーリーになることが多いと言われますから、例示した物語で言うなら主人公である村人と、ヒロインの恋愛譚をサブプロットにするのが定番なのでしょう。


 ただ、安直に恋愛譚をサブプロットに据えるのはいかがなものかと私は考えてしまいます。というのも、前述のとおり、サブプロットはメインプロットとなんらかの形でつながっていなくてはなりません。


 ところが、恋愛要素というのは独立性が高く、この二つを結ぶのは意外と難儀であるように思えるからです。


 たとえば主人公とヒロインが恋愛するとして、メインが冒険やバトルだったらどう結びつければよいのでしょう?


 例示した「勇者と魔王の物語」に恋愛要素を入れるとして、ではその恋物語が「主人公は世界を救えるか?」というメインプロットと密接にからみ合うかといったら……それは難しいでしょう。


 主人公とヒロインの恋愛は恋愛で、メインとは別のお話という印象を観客(または読者)に与えかねません。


 そういう意味で、取り扱いは慎重にしなくてはなりません。


 恋愛以外なら、登場人物との友情であったり、なにかしら抱えていた問題の解決であったり、そういったものがサブプロットになります。


 が、くどいようですが、それらは基本的にメインプロットと関係の深いものでなければなりません。関連性のないエピソードであってはならないわけです。


 サブプロットは通常、メインプロットの第二幕、早くても第一幕の後半から始めるべきだとされています。


 理由は単純で、メインプロットのセットアップよりも早い位置にサブプロットを置いてしまうと、観客がサブプロットをメインプロットだと誤認してしまうからです。


 また、サブプロットもメインプロットと同じように第一幕で設定、第二幕で展開(対立、葛藤)、第三幕で解決という構成を取ります。


 優れたサブプロットはメインプロット同様、明確なセットアップやターニングポイント、クライマックスなどを有するといいます。


 二時間映画の場合、サブプロットの数は一つか二つが最適で、三つ以上になると構成がかなり難しくなると言われますから、欲張ってあれこれ詰め込みすぎてはならないわけです。分量に応じて変えなくてはなりません。


 三幕構成におけるプロットは、このようにメインとサブに分割され、ストーリーを形作るまとまった構成を指すものとして使用されます。


 なお、三幕構成は物語論ナラトロジーで言えば、物語言説の一部を取り扱っていると言えます。


 しかしながら小説の文章は、物語論では錯時法と呼ばれ、時系列順に語られることは通常ありません。


 例示した「勇者が魔王を倒す物語」をそのまま小説化すれば、一見すると時系列順に物語が語られていくことになりますが、実際は過去の出来事――たとえば主人公の子供時代のエピソードが登場したり、ヒロインの昔の出来事が語られたりするはずです。


 つまり、本当の意味で時系列順に語られることはまずないわけです。


 三幕構成は、エピソードの提示順を最適化しようとする試みであり、その作業は物語言説の一部にかぶっています。


 といっても小説の場合、物語言説や物語行為によって読み手に与える印象がかなり変わってしまうため、上述の提示順が最善であるかどうかはよくよく考えてみなくてはなりません。


 一例として、語り手を誰にするかという点だけでも読み手の印象は大きく変動します。


 主人公自身を語り手にするのと、ヒロインを語り手にするのと、脇役の誰かを語り手にするのとではだいぶ違います。


 あるいは意表を突いて、魔王や魔王軍の誰かに語りを担わせる手法もありえます。


 作者と誤認されることの多い無名の語り手を使う場合であっても、焦点化の扱い方によって(これは作中人物が語り手となる場合も同様ですが)読後感は変わりますし、もちろん文体やレトリックとか時間処理とか、その他もろもろ多くの選択肢があり、何がベストかは作品ごとに変わります。


 むろん三幕構成を採用する場合においても、ターニングポイントをどこにいくつ配置するのが適切かを考えねばなりません。


 第一幕と第二幕の終わりに置くのは規定事項としても、ほかはどうするのか? サブプロットの数や内容はどうすべきかといった問題があり、一概にこれが正解とも言い切れません。

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