第3話 意味わからんしどうでもいい
「............嘘つき......。私のワガママ聞いてくれるって言ってたのに......。私のこと、愛してるって言ってたのに......っ!」
「知らんけど、浮気はワガママの範疇ちゃうやろ。百年の恋も冷めるってやつやって」
俺の足にしがみついてた
「待って。待ってって!!!!」
追いかけてくるけど、知らん。
ワンルームマンションの居間から玄関までのほんの数歩やのに、その区間が永遠みたいに長く感じた。
なんとかかんとか玄関にたどり着いた俺に、背後からさらにカスみたいな言葉が聞こえてくる。
「もうっ! なんでそんな反応なん!?」
いや、それは俺の台詞ね。
無視する俺の服の裾を再度掴んできて、さらに言葉を続ける咲水。
「さっきのは嘘。私は浮気とかしてない。
........................?
さらに理解できん台詞が聞こえた気がする。嘘?
意味わからなすぎて一瞬足を止めてしまったのがよくなかった。
俺の気が変わったとでも思ったんか、咲水はちょっと落ち着いた感じ出して話しだした。
「ほんまは浮気なんかしてないねん。さっき言った理由はほとんどそのままやけどな? 刃銀がバイトばっかりやから、こういう話したら嫉妬して構ってくれるかもって思って。だから、ほんまは浮気なんかしてないから!」
足元にしがみついて謎の言い訳を始める
にしても、ここまで来るともはや哀れみさえ覚えてしまう。
仮に浮気したってのが嘘やとして。
その話のどこまでがホンマでどっからが嘘か、俺には確かめる術ないわけやし、そんな嘘吐かれたら信じられるもんも信じられんやん。
そんな簡単なこともわからんの? え、咲水ってそんなアホやっけ?
なんかコイツのことバケモンに見えてきた。
こんな化け物屋敷からは一刻も早くでていかんと。
「いやいや、怖っ。嘘でもホンマでも、信じると思ってんの? その精神性が怖いわ。どうでもいいけど、とりあえずもう一生顔みせんといてくれる?」
「ちょっ!?!? だから浮気したってのは嘘なんやって! 信じてよ! 私のこと好きちゃうの!?」
いや、信じるのは無理やろ。
それにもう好きな気持ちは冷めたから。
けどわざわざそういうこと言うのもめんどくさいから無視して帰る。
「何で無視するん! そんなに怒らんでもいいやんか!」
はははっ。いや、怒るやろ普通に。
「待ってってば! もうっ! わかったから! これからは刃銀の言うこと何でも聞くから! 尽くすから! 刃銀がしてほしいことなんでもするから! だから許してってば! けど刃銀も私を寂しくさせたの悪いんやし! なっ? お相子ってことにしよっ?」
ははっ。もういっそオモロいな。
なんでそんな強気に喋れるんやろ。
寂しかったんかなんかしらんけど、単に浮気した言い訳を俺に押し付けてるだけやんけ。
前までやったらなんだかんだで丸め込まれた言葉かもしれへんけど、今となっては異星人の言葉。
いや、俺の感性とか関係なくこれは普通に異常やよな。今までの俺がおかしかっただけか。
聞くだけ気分悪くなってくから、もう黙ってくれへんかなぁ。殴りたくなってくるし。
「ほんじゃあ帰るわ」
「..................」
なんも言わんなった。
やっともう終わりやって理解したんかな?
「......後悔しても遅いからね? 後でめっちゃ謝ってきても、遅いからな!?」
えっと?
何を言ってる? 後悔? 俺が? 謝る?
どういうこと?
「ちょっと嘘つかれたからって、そんなに拗ねるとか男らしくない!」
........................。まぁいいや。
「ちょっ、ちょっと! ほんまに帰るつもりなん!? いつもやったらもうケンカ終わりになるところやんか! な? 刃銀が謝ってくれたら終わりやから! 後悔しても遅いって言ったのも嘘やから! 許すから!」
「ぶははははは。許すって何をだよwwwwwwwwwwwwww」
「刃銀が私を寂しくさせたこと!」
「あっはははははははははwwwwwwwwwwww」
はーあ。笑ったわ。
てか、こんな夜中にうるさいよな。近所迷惑。すみませんねぇみなさん。
まぁ俺はもうこのご近所さんは関係ないから知らんけど。
「じゃあな」
「っ......! ......もうっ、知らん! 勝手にどっか行きよ!」
バタンッ!
そんな勢いよくドア閉めて。またご近所迷惑やん。いいけど。
ま、遠慮なくどっか行かせてもらいます。
鍵かいだ音せんし、もしかしたらまだ俺が泣きついて帰ってくるとでも思ってる? ないない。
はーぁ。なんで今までこんなアホのこと大事にしてきたんやろ。人生の時間無駄にしたなぁ。
この涙は時間を無駄にしたことの涙やろうなぁ。
そう言えば、居間から玄関まで、短い距離やったけど、咲水が俺を追いかけてくるって構図、珍しかったな。
今までは俺が咲水の背中を追いかけることはあっても、こうやって追いかけられる側はやったことなかったもんなぁ。
ま、今更どうでもいいけど。
思えば、今日は午前中からいつも以上に、異常にだるかったもんな。今日はそういう日ぃか。
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